Jack Bruce Pt.2

Jack Bruce Part 2

さて、ここではJack Bruceの課外活動を見てみたい…けど、さっきから言っているように、半端な量じゃないですぅぅぅ。シャレになりません…これ。で、まぁ、私が持ってる物だけね…(ごめん:またアップデートしていくから…)。


Trios
Mike Tylor Trio
"Trio" ('67)
クレジットを見ると、Mike Taylor(p)、Jack Bruce and/or Ron Rubin(b)、John Hiseman(ds)とある。どういう事かというと、どうやら、Jack Bruceは収録日を間違えたらしく、スタジオに行くと既にRon Rubinがいて、二人で演奏をしていたら、それを聴いたMike TaylorがW・ダブル・ベース(ややこしいな…)という編成を思いついたらしい。という事で、曲によっては、Jack Bruceだったり、Ron Rubinだったり、両者がダブル・ベースを弾いている、という事なのだが、実際聴いてみても、あまり違いが感じられない(私の耳があんぽんたんってのもあるだろうけど)。Johnny HisemanというのはColosseumのJon Hisemanと同一人物っぽいですね。楽曲は当然ピアノ主体のモダン・ジャズ。Jon Hisemanも目立っておりますね。
West Bruce Laing
"Why Dontcha" ('72)
山男Leslie Westと山の屋台骨Corky Laingとのトリオ。Felix Pappalardiが繋いだ縁でしょうね。ボーカルはJack Bruceが2、5、6、8、10、山男が1、3、6、7、9、Corky Laingが4となっている。山との合体だけあってCreamをよりストレートなHRに仕立てた秀作。1曲カバーを除いて全てWBLの作曲。Pete Brownが3曲で詞を提供。山男のストレートで強力なボーカルとどこか捻たJack Bruceのボーカルの対比が面白い。Jack Bruceの新作"Shadows in the Air"に再録された2曲目"Out into the Fields"はやっぱり名曲。山男Leslie Westとボーカルを分け合う6曲目"Shake Ma Thing (Rollin Jack)"ではJack Bruceも力強いシャウトを聴かせる。カントリー調バラードの7は良い息抜きとなっている(それでもガナってしまう山男…)。
West Bruce Laing
"Whatever Turns You On" ('72)
ライナーによると、West Bruce Laingが解体し、Leslie WestとCorky Laingが米国へ帰国した後にJack Bruceがギターやドラムのオーヴァーダブを施して完成した、という2nd。Leslie Westのドブロが炸裂するオープニング・トラック"Backfire"に大陸的な大らかさを感じる。続く"Token"は引き摺るような重いリフが少しばかりBlack Sabbath的。ヴォーカル・ハーモニーの絡み具合がCreamを思わせる。Jack Bruceはヴォーカル、ベースのみならず、キーボード、ハープと大活躍。特に"Shifting Sands"や"Nobember Song"でのプレイは白眉。Mountainナンバーのような勢い一発な"Rock & Roll Machine"からJack Bruceらしいナンバー"Scotch Krotch"、タイトル通りの世界観を有する"Slow Blues"ではLeslie Westのギターがブルース・ハープのように響く。最後の"Like a Plate"もJack Bruceの声が堪能したい向きには良いナンバーだろう。R&Bコーラス・グループのような女性バック・ヴォーカルとのマッチングも良い。混沌としたエンディングはCarla Bleyあたりの影響だろうか?
John McLaughlin "Electric Guitarist" ('78)この盤では"Are You the One? Are You the One?"1曲のみだがJack BruceがTony Williams(ds)と共に参加。どうやらスタジオ・ライブっぽい。正にLifetimeの再演。3人の"Are you the one?"という掛け声を交えながらスマートな楽曲の裏に潜む3様の激しさが見え隠れするトラック。その他にも義兄弟Santana(g)やNarada Michael Walden(ds)、Tom Coster(organ)等と収録した"Friendship"やJohn Coltraneに捧げられた"Do You Hear the Voices that You Left Behind?"をChick Corea(p、mini-moog)、Stanley Clarke(b)、Jack DeJohnette(ds)とで録音している。圧巻はBilly Cobham(ds)とのデュオ、"Phenomenon:Complusion"だろう。必聴盤。
Jack Bruce・Bill Lordan・Robin Trower
"B.L.T."('81)+
Jack Bruce&Robin Trower
"Truce"('81)
Jack BruceとRobin Trowerとのコラボレーション2in1のディスク。Bill Lordanは"For Earth Below"('75)からRobin Trower Bandの一員。"Truce"でもBill Lordanの前任者Reg Isidoreがドラム担当。結局の所Jack BruceはRobin Trower Bandを抜けたJames Dewerの後釜という事だろう。"B.L.T."ではJack Bruceは"Life on Earth"を提供するに止まっている。その他の楽曲は殆どがKeith Reid(Procol Harumでもお馴染みの詩人さん)/R.Trowerの供作。次作"Truce"ではPete Brown/Jack Bruce組が3曲、Keith Reid/Robin Trower組が5曲、Jack Bruce、Pete BrownとRobin Trowerの供作が1曲となる。全曲ボーカルはJack Bruce。Robin TrowerのBBBBなんだけど、洗練されたギターとJack Bruceの相性は悪くない。
Leslie West
"Theme" ('88)
一応Leslie Westのソロ作となっているが、アーティスト名の所にLeslie, Jack & Joeともなっている事から、このトリオによるユニット作と見て良いだろう。ドラムには元The Good Rats、Twisted SisterのJoe Franco。タイトル、そしてジャケットのアートワークからも判るように、当然"Theme for an Imaginary Western"があり、Creamでお馴染みの"Spoonful"の2曲でJack BruceはVoを取っている。更にJimi Hendrixの"Red Houseのカバーも用意してある(こちらはLeslie WestのVo)。"Spoonful"からそのまま続くように"Love Me Tender"(インスト)で締めくくっている。そして、このカバー4曲、何と、ライブ(…)みたいだ。"Spoonful"の前にはJack BruceのMCもある。クレジットがないので不明なんだが、歓声はある。わざわざ、被せたりするのは、逆に手間のような気がするんだよね、この人たちの場合。単に楽器を持って、そのままステージに上がって演奏したものを録音しただけって感じがする。キーボードはAlan St.Jon(Billy Squire等との仕事が多い)が担当。"I'm Crying"はLeslie Westのギターが堪能出来るインスト曲。"Love is Forever"は80年代型アリーナロックチューン。それぞれのキャラを活かしたディスクになっている。プロデュースはLeslie WestとPaul Orfino(最近はOrofinoというクレジットの仕方もあるようで。まず、間違いなく同一人物)。この辺りもNY人脈ということだろう。このVoiceprintから出た再発盤のライナーはお騒がせDJとして有名なMike Starn氏(Leslie Westのファンらしい)。
Dick Heckstall-Smith/Jack Bruce/John Stevens
"This That"('94)
Jack Bruceの"Things We Like"の続編とでも呼べるディスク。1曲目の"Within"(Jack Bruceのボーカル入り)のみJohn Stevens作曲、残りは全て3人の供作となっている。相変わらず過激なブローを吹き捲くるDick Heckstall-Smith、そしてJohn Stevensの変幻自在なドラム。結果"Things We Like"よりも奔放なジャズ・ロック・アルバムに仕上がっている。ゲストにGlen Nightingale(g)が参加。Jack Bruceのジャズサイドを強く認識させられるアルバム。
BBM
"Around the Next Dream"('94)
Jack Bruce、Ginger BakerとGary Mooreという最強の布陣。これが"This That"と同時進行に準備が進められていたかと思うと驚くものがあります。プロデュースにIan Taylor、キーボードにTommy Eyreとブルース熱狂時代のGary Mooreサイドによって製作が進められた模様。"Where in the World"のみボーカルはGary MooreとJack Bruceが分け合う形を取っている。Gary MooreとJack Bruceの供作が3曲、Gary Mooreの曲が2曲、Jack Bruce、Gary Moore、Kip Hanrahanの曲が2曲、BBMのトリオで書かれた物が1曲、そしてAlbert King等でお馴染みの"High Cost of Loving"やB.B.King等がよく演奏する"I Wonder Why"とシカゴ・ブルース・カバー2曲も収められている。Gary Mooreのぶっといギター、シャッフルが効いたGinger Bakerのドラムと良い雰囲気の中で楽曲が進むのは快感である。パワー・バラード"Where in the World"でのボーカルの掛け合いは鳥肌物(こういう時のGary Mooreのギターは光る)。
Gary Moore
"Ballads & Blues 1982-1994" ('94)
タイトル通りGary Mooreのバラード、ブルーズ曲を収録したベスト。未発表曲の"One Day"はBBMでの演奏とされているようだが、オーヴァー・プロデュース気味のため、あまりメンバー特有の特徴は出ていない。その他の"With Love (Remember)"、と"Blues for Narada"はJack Bruce(b)とGary Husband(ds)が参加している模様。両曲ともストリングを配したアレンジが施されており、Gary Mooreらしいドラマティックな曲に仕上がっている。"Still Got the Blues"と"Empty Rooms"、"Falling in Love with You"はシングル・ヴァージョン。"Parisienne Walkways"はライブ盤"Blues Alive"からのライブ・テイク。"Jumpin' at the Shadows"は"After Hours"に収めれていたDuster Bennettのカヴァー。"Crying in the Shadows"は故本田美奈子に提供された曲(「The Cross - 愛の十字架」)。名作"Wild Frontier"からの"Johnny Boy"はアイリッシュ・テイストをたっぷりと含んだ曲。本作収録曲は曲が曲だけにGary Mooreのメロディー・センスが前面に出た作品。
Various Artists
"Guitar's Practicing Musicians Volume III" ('94)
タイトルが示すように主にギタリストによる、ギタリストのための、ギタリストのコンピ。クレジット上はJack Bruce(b、vo)がSimon Phillips(ds)とBruce Saraceno(g)を率いてのライブ。曲は"Politician"。録音は日本とあることから、多分…Bruce Saracenoを呼んだショーケースギグ(ヤマハのためのじゃないかな?)での録音だと思う。相棒が誰であろうと、全く動じませんね…。我らがJack Bruceは。その他にもDream Theaterがマーキーのライブ盤から"Bombay Vindaloo"を提供したり、Shawn LaneによるBob Dylanカバー"All Along the Watchtower"やZakk WyldeがPride & Glory時代にやった"The Wizard"などが収められている。



Others
The Graham Bond Organisation
"The Sound of '65"('65)+"There's a Bond between Us"('65)
Alex KornerのBlues Inc.をJack Bruce、Ginger Bakerを引き連れて飛び出したGraham Bond、The Graham Bond Organisationを結成しDuffy Powerのバックバンド等を務めた後のデビュー作と2ndの2in1のディスク。Graham Bond(vo、hammond、alto sax)、Dick Heckstall-Smith(tenor sax)、Ginger Baker(ds)とJack Bruceという布陣。Jack Bruceは"Train Time"、"Baby Make Love to Me"、"Baby Be Good to Me"、"Hear Me Calling Your Name"、"Last Night"の5曲でリード・ボーカルを取る。魔人の雄叫びボーカルが全編に渡る中、Jack Bruceの特徴的なボーカルは既にその個性の片鱗を見せている。
Neil Ardley, Ian Carr and Don Rendell
"Greek Variations & Other Aegean Exercises" ('70)
レコードで言う所のA面を使ったNeil Ardley作曲、指揮の"The Greek Variations"にJack Bruceがbass、bass guitaristとして参加。Ian Carr(flute、flugelhorn)、Don Rendell(sax、flute)、Barbara Thompson(sax、flute)、Kirl Jenkins(oboe、sax)、Michael Gibbs(trombone)、Frank Ricotti(vibes)、Jeff Clyne(b)、John Marshall(ds)にチェンバーオーケストラが参加。Variationsと名付けられている通り、ギリシャのフォーク音楽を土台にしたジャズ変奏曲、といった趣だろうか。B面はIan CarrとDon Rendellの楽曲が収められている。
The Tony Williams Lifetime
"Turn It Over"('70)
70年に発表されたアルバムだが、97年にJack Bruceがボーカルを取るアウトテイク・ナンバーを入れたボーナス付きで再発。John McLaughlin(g,vo)、Khalid Yasin(Larry Young:organ)にJack Bruceのベースというメンバー。非常に怒れる演奏の連続である。Tony Williamsによるとやはり時代背景やジャズコミュニティの中のロックに対する不理解によるフラストレーションが強く、この様なアルバムに仕上がったようである。結果ジャズロックの名盤と仕上がった。Jack Bruceが歌う"One Word"(John McLaughlin作)はJack Bruceにしては低い声から始まり徐々に高音へと持って行くナンバー。
Carla Bley / Paul Haines
"Escalator Over the Hill"('71)
68年から71年の間という3年の歳月をかけて製作された貪欲なまでにありとあらゆる音を詰め込んだ意欲作。ジャズ・オペラ、という風に捉えられているようだが…明らかに違う。ストーリーがあり、台詞があるという点ではオペラに近いのだろう。されど音のほうは前衛、としか形容出来ない内容である。ジャズ・オーケストラ有り、ジャーマン・サイケちっくなシンセ音楽有り、オペラ調な作品もあれば、まるでキャバレーでかかるような音楽も出て来る。そして、我らがJack BruceはまんまJack役で参加、John McLaughling(g)、Carla Bley(org)、Paul Motian(ds)によるJack's Traveling Bandという超絶ハードロックバンドを率いて物語に貢献している。ブックレットに収録風景を収めた写真が何点か収められているのだが…どこか狂気じみた異様な雰囲気が漂っているのが感じられる。
Charlie Mariano
"Helen 12 Trees" ('76)
日本でも馴染み深い米国出身サックスプレイヤーCharlie Marianoの本作は、まずJack Bruce(b)が呼ばれ、Jack BruceがJohn Marshall(ds)を紹介したところから始まったようだ。そして、Jan Hammer(p、syn)が合流。その他にポーランド出身でHans Koller等と共演があるZbigniew Seifert(violin)とインドネシア出身のNippy Noya(perc.)が参加。"Sleep, My Love"ではZbigniew SeifertとCharlie Marianoのフルートとのデュエットで"Charlotte"ではJan Hammerのピアノとのデュエットとなっている。ソロイストが充実しており、それぞれが変幻自在なプレイで楽しませてくれるジャズロックの佳作。特筆すべきは2曲目の"Parvati's Dance"でのCharlie Marianoのプレイ。南インドの管楽器nagaswaramを使って単なる東洋嗜好以上のサウンドを展開している。Jack Bruceのベース音のボリュームは低めだが、それでも、あの特徴的なプレイは健在。聴きなれたフレーズも飛び出す。相変わらずなのはJohn Marshallのずっしりと重いプレイ。"Thorn of a White Rose"のみJan Hammer作曲。それ以外はCharlie Mariano作となっている。
Cozy Powell
"Over the Top" ('79)
実はシングルでヒット曲を持つCozy Powell(当時は虹に在籍)の1stソロ。このアルバムでJBは全曲ベースを担当、相当暴れている。基本的にはCozy Powell、Jack BruceとDon Airey(key)という構成にゲストギタリスト(Gary Moore、Dave Clempson、Bernie Marsden)を迎えるという形を取っている。2曲、Max Middletonが参加。楽曲のアレンジを担当したのがDon Aireyで、彼のキーボードが全面的にフィーチャーされておりシンフォ・ファンにも受け入れ易い作品ではないだろうか。冒頭のGeorge Martin作のBBCラジオのテーマ曲"Theme 1"ではCreamの「白い部屋」のフレーズを導入したりしてるのはJack Bruceに対する敬意と受け止めても良いだろう(少しやり過ぎって感じもするけど)。Jeff Beckに捧げられたMax Middleton作の"The Loner"(後にGary Mooreもこの曲をカバーするが、ここではDave Clempsonがギター)やCozy Powellのドラムソロではお馴染みのセクションを導入したラストの"Over the Top"と聴き所満載である。全インストだが、それでも非常に歌っているアルバムでもある。
Bernie Marsden
"And About Time Too" ('79)
白蛇のギタリストとして名を上げたBernie Marsdenの1stソロ。全9曲中、Jack Bruceは7曲に参加。CD化に際してボーナストラックが3曲追加(内2曲がThe Friday Rock Sessionから)されている。こちらにはJack Bruceは不参加。Cozy Powellを通しての要請に応えた形で参加となったようだ。歌物4曲、インスト3曲という内容だが、どちらにしてもJack Bruce印が刻印された骨太なプレイを収めている好盤。ここではIan Paice、Simon Phillipsを相方にしているのも興味深い(C.PowellはNeil Murrayと組んでいる)。インストでの存在感は言わずもがなであるが、歌物でさえもメロディアスなプレイを随所に聞かせてくれるのは流石である。Don Airey、Jon Lordというkey陣のサポートも聴き逃せない。因に供作者としてクレジットされているBobby DazzlerはDavid Coverdaleの変名。
Soft Machine
"Land of Cockayne" ('81)
Soft Machine名義ではあるが…Karl Jenkins(synth)主導のもとに作られたプロジェクト程度に捉えるのが妥当でしょう。Allan Holdsworth(g)、John Marshall(ds)、Ray Warleigh(sax)、Dick Morrissey(sax)、Alan Parker(rhythm g:元Strawbs)、John Taylor(fender rhodes)にJack Bruceというラインナップ。裏に"Land of Cockayne"のコンセプトもあるようです(きちんと読んでないのですが、何やら浦島太郎的なストーリーっぽい)。アルバム全体にオーケストラを配しムードを支配する作りになっている。結構ストレートな楽曲もあり聴き易いアルバムではあります。にしてもSoft Machine名義はやっぱり?です。
Ellen McIlwaine
"Everybody Needs It"('82)
ジャケットは"The Real Ellen McIlwaine"('75)との2in1のCD。前半を占めるEllen McIlwaineの5枚目のソロ(ソロ前にFear Itselfというバンドを持っていたらしいです)"Everybody Needs It"でJack Bruceはベース、バックボーカル(あまり聴こえないですけどね。最後の"Keep On"ぐらいでしょうか)で全面参加。Howard Levy(p, hammond org:90年代はBela Fleck & the Flecktones等で有名)、Paul Wertico(ds:Larry Coryellが参加したSimon & Bard Band等に参加)というメンツで製作された。Jack Bruceは"Regretting Blues"という曲も提供している(因に"The Real Ellen McIlwane"ではJack Bruceの1stソロから"He the Richmond"をカバー)。供作者にPowerとあるが、Duffy Powerだろうか?アクの強いEllen McIlwaineのスライドギターとボーカルに対抗するかのようにJack Bruceも一聴して、それと判るプレイを存分弾き捲っております。ボーカルスタイルは、Janis Joplin等と比較されてしまう(ガッツィ−でソウルフルなストロング・スタイルです)のでしょうが、それ以上にガッツィ−なのが彼女のギター。Jack Bruceも負けていない所が流石。格好良いバトルが聴けます。
Kip Hanrahan
"Desire Develops an Edge" ('83)
殆どのトラックでJack Bruceがヴォーカルを取るKip Hanrahanの2nd。Puntilla Orlando Rios、Milton Cardona、Jerry GonalezのコンガとTico Harry Sylvainのトラップ・ドラムで絡み合うラテン・リズムを紡ぐ表題曲からサルサ風の明るいダンス・ナンバー"What is This Dance, Anyway?"へと繋がる。"Early Fall"のような官能的なサックスが響く曲や、Steve Swallowの這うようなベースにAnton FierとIgnacio Berroaのトラップ・ドラム、Arto LindsayのギターがJack Bruceの声に絡む"Velasquez"などが印象的。お蔵入りになったJack Bruceのソロ"Jet Set Jewell"から"Child Song"に再度取り組んでいる。今作を締め括るのはJack BruceのヴォーカルにSteve Swallowのベース、ピアノにJohn Scofieldのギターというトリオによる"Nancy (the Silence Focuses on You...)"のしっとりとしたジャジーなナンバー。
Mark Nauseef
"Wun Wun"('84)
NY出身のパーカッショニストMark Nauseefの3rdソロ。Thin LizzyやIan Gillan Bandでの活動で知られる一方、前衛音楽と呼ばれる類いの音楽にも積極的に参加してきた。今作は数々のドラム、パーカッションを全面に押し出したリズム主体の音楽を演奏している。使われている声も同様で、非常にトライバルで原始的なイメージを増幅させる。ある時は呪術的だったり、伸びやかな叫び声だったり、静かな和声だったりするヴォイス・パフォーマンスは数々のリズムとリンクし、不可思議な音空間を造り上げている。Jack Bruceは5曲中4曲で声を入れ、1曲ベースを弾いているが、あくまでも主体はパーカッション類。Trilok Gurtuも「声」(!)で1曲参加。アルバム最後を飾る"Colotomix II"ではチャント風のJack Bruceのソロ・ヴォイス・パフォーマンスが聴ける貴重なテイク。
Kip Hanrahan
"Vertical's Currency"('85)
Kip Hanrahanのバンド形態のアルバム。Ignacio Berroa(trap ds)、Milton Cardona(congas、bongos)、Kip Hanrahan(perc.)、David Murray(tenor sax)、Puntilla Orlando Rios(quinto、congas)、やArto Lindsay(e.guitar)Peter Scherer(synclavier、org.)というAmbitious Lovers組、Steve Swallow(e.bass)にJack Bruce(vo、piano、e.bass)というのが基本編成。ブルースをメインにラテン・フレーヴァーたっぷりのリズムが乗るという構成。コンパクトに纏められた"Smiles and Grins"("Harmony Row"収録)の再録もある。Peter Schererのサウンド・スケープの上に縦横無尽に走るリズムとホーン隊。"Make Love 2"ではスティックっぽい音も聴こえるんだけど…?"Intimate Distances (Jack's Margrit's Natasha)"とか弦がどこかKing Crimsonを思わせる曲もあるような…。
Michael Mantler
"Many Have No Speech" ('88)
Michael MantlerのトランペットにRick Fennの切り裂くようなギターにThe Danish Concert Orchestraが悲愴感漂うバッキングを担当。Jack Bruceの嘆き悲しむような声とMarianne Faithfullの重く沈んだ声が交互にまるで会話をするように出て来る。そこに3回だけRobert Wyattのほんの少しだけ光明を与えるような声に辛うじて救われる気がする。ここで使われているのはSamuel Beckett、Ernst MeisterにPhilippe Soupaultのテキスト。27曲収録されているが、トータルランニングタイムは35分程。1分にも満たない曲が殆どだ。ここで疑問になるのはボーカルメロディー(という程歌っている訳でもなく、朗読に近い)だが…これもMichael Mantlerがきっちりと作曲したんだろうな…多分。
Links
"Links" ('92)
Wolfgang Mirbach(p)のスタジオ・プロジェク作、ジャズ・ロック・アルバムと呼んで差し支えないかな?楽曲の殆どはWolfgang Mirbachの手による物。Links名義のアルバムは他にもあるようだ(3までは確認出来るんですが…)。お馴染みのDick Heckstall-Smith(sax)、John Marshall(ds)にJack Bruce(b)に加えJoe Sachse(g)、Marc Charig(cornet)、Jorg Drewing(trombone)という独英混合ラインナップ。Joe Sachseのテクニカルなプレイが随所に光る。ホーンセクションは押さえ所は押さえつつ縦横無尽に駆けずり回る(やっぱりJorg Drewingが一番目立っている)。Jack Bruceのプレイは特に派手さはないが、ツボを押さえたプレイの連続で曲の基盤をがっちりと押さえている(所々暴れてはおりますが…)。
Kip Hanrahan
"Exotica" ('92)
基本メンバーはKip Hanrahan、J.B.(vo、b)にDon Pullen(organ)、Robbie Ameen(ds)、Alfredo Triff(violin)、Leo Nocentelli(g、元The Meters)にJT Lewis(ds)、David Sanchez(sax)、Ralph Peterson Jr(ds)、Anthony Carillo(perc.)、Richie Flores(ds)、Milton Cardona(perc.)、Lucy Penabaz(vo)、Andy Gonzalez(b)、Mario Riviera(sax)が参加するという編成。"G-d is Great"はKip HanrahanとJack Bruceによる共作。それ以外は全てKip Hanrahanによる作曲。所謂ラテン・ジャズとかアフロ・キューバンとか言われるタイプの音楽なんだろうけど、Jack Bruceのプレイと声が絡む事で非常にテンションの高い演奏の連続となっている。"G-d is Great"等は涼し気にボーカルを入れてるけど、バックのDon PullenとJack Bruceのプレイは縦横無尽に掛け合い、刺激的な仕上がりになっている。必聴盤。
Michael Mantler
"The School of Understanding - Sort of an Opera" ('97)
タイトルにある通りMichael Mantlerが取り組んだオペラのような作品。The Danish Radio Concert Orchestra Stringsの協力を仰いで作られている。この作品は実際96年にコペンハーゲンにあるArken Museum of Modern Artで"The School of Languages"として上演されている模様。ストーリーは教室に集まった難民の娘(Mona Larsen)、元医者(Don Preston)、学生(Karen Mantler)、ビジネスマン(John Greaves)、ジャーナリスト(Susi Hyldgaard)と観察者(Jack Bruce)が教師(Per Jorgensen)がTVを使って幾つかテーマを提示し、それについて話し合う、という物。前半の最後にゲストオブザーバーとしてRobert Wyattが出て来てテーマである「理解する」、「コミュニケートする」という事とは何かを問いかけ、後半(Disc2)へと流れる。最後にSamuel Beckettの"As the Story was Told"より"What is the Word"が引用され、エンディングを迎える。ストリングスの美しさもさる事ながら、Bjarne Roupe(Miles DaviesのAuraに参加他)のギターの美しさに引き付けられる。万人受けする作品ではないかもしれないが、一度は触れあってみても良い作品。
Blues & Boogie Explosion ('98)Bob Hall、George Green、Ian Stewartというピアニストを軸にJack Bruce(b)、Charly Antolini(ds)、Danny Adler(g、vo)とHal SingerとWillie Garnettというテナーサックス奏者の2管を揃えた編成。レコーディングは81年に行われているものの発表されたのは98年。メンバーから見てもある種Rocket 88のスタジオ盤と見ても良いだろう。本作はカヴァー、オリジナルから成る10曲とオルタネート・バージョン6曲を加えた全16曲。Jimmy Smithの"Back at the Chicken Shack"を除く他の曲では各曲2人づつのピアニストが参加。"I Need You"(Elmore James作)と"Chicken Shack Boogie"(Amos Milburn作)ではDanny Adlerがヴォーカルを取っている。Jack Bruceは冒頭の"KC Jump"ではWベースを使用するも、すでにあのサウンドが聞ける。そのほかのナンバーでも強烈なJack Bruce印を残しており、Jack Bruceグルーヴが満喫出来る。そして本作の目玉は何といってもBob Hall、Jack Bruce、Hal Singer作による"The Rainmaker"だろう。これぞ、というソロを聞かせる。Jack Bruceファンは必聴盤。
Various Artists
Legend of a Mind the Underground Anthology ('02)
Deccaレコードを俯瞰させた3枚組コンピレーション。Disc3にPete Brown with Friends名義で"Nights in Armour"(Graham Bond/Pete Brown作)が収められている。面子はPete Brown(Vo)、Graham Bond(key)、Jeff Beck(g)、Jack Bruce(b)とされているようだ。元々はPete BrownとGraham Bondが映画"Meltamour"のために製作されたサントラの中に入っており、シングルカットもされる予定だったが、何らかの理由で没となったようだ。後にPete Brownの"Before Singing Lessons"に"Spend My Nights in Armour"として残されたものと同じトラックのようだ。但し、"Before Singing Lessons"の方は調べてみると、Tony Fernandez(ds)、Alan Ross(g)、Max Middleton(key)、Bob Jackson(key)が脇を固めているらしい。こちらの"Nights in Armour"の方は74年2月に録音されたオリジナル・マルチトラック・テープをリミックスしたもの。曲はアコギとスライドが鳴り響く中、力強いPete Brownの声が乗る、ノリのグルーヴのある曲。中間部以降でJack Bruceらしいブイブイ跳ねるベースが目立ち始める。それにしても、このトラック、一体誰が正式に参加していたんだろうか?このコンピ自体は、時代を感じるのには良いコンピではないだろうか。
Spectrum Road ('12)事の始まりはVernon Reid(g Living Color)がJack Bruce率いるThe Cuicoland Expressに参加(この時、来日もした)した事からツアーバスでTony Williamsのトリビュート・バンドを作ろうという話からだった。その時点でVernon Reidの頭には既にCindy Blackman-Santana(ds)がすぐに思いついたと言う。そして同じくMedeski, Martin & WoodのJohn Medeski(organ、mellotron)というNYダウンタウン・シーンで活躍するメンバーが顔を揃える。このメンバーで08年12月、日本でお披露目ライブを行う。その後断続的に集まってはライブを行い、12年6月にSpectrum RoadとしてBonaroo Music Festivalでステージに立つ。本作は遡ること11年2月にMatt Balitsaris(レコーディングが行われたMaggie's Farmのスタジオ・オーナーでもある)のプロデュースの元レコーディングが行われる。本作に収められている曲の大半はThe Tony Williams Lifetimeから選曲されている。69年の"Emergency!"から"Where"、"Vashkar"、Jack Bruceが参加した70年の"Turn It Over"から"Vuelta Abajo"、"One Word"、"Allah Be Praised"、71年の"Ego"より"There Comes a Time"、75年の"Believe It"から"Wild Life"(Jack Bruceのこの頃のバンドでは"Spirit"という曲で聴ける)からなる。"An T-Eilan Muileach"は即興演奏の上にJack Bruceがゲーリック民謡のメロディを乗せたもの。"Blues for Tillmon"はオリジナル曲、という構成。オープニングの"Vuelta Abajo"のCindy Blackman-Santanaのドラム、Vernon Reidのノイジーなギター、まるでLarry Youngが乗り移ったかのようなスペーシーなJohn Medeskiのサウンドと共にJack Bruceのベースが全てのサウンドを束ねるように一体化させる、そのパワーの源が既に69年からTony Williamsの手によって世に出されていた、という事実に改めて驚愕するしかない。"Where"ではCindy Blackman-Santanaが漂うようなスピリチュアルなヴォーカルを披露するところから、一転して攻撃的な演奏が続く。個人的にやはり圧巻はLarry Young作の"Allah Be Praised"だろう。ここでのJohn Medeskiの鬼気迫るプレイの迫力が素晴らしい。本作を聴いたら是非ともThe Tony Williams Lifetimeの緒作もチェックするべきだ。


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