Winger



Winger

意外とあちこちで繋がってしまうんだよね。Alice Cooper BandにいたKip WingerとPaul Taylorが出会い、デモ作りを行い、Paul TaylorがAlice Cooperとの仕事を残している間、Kip WingerはReb Beachを発掘。そして、最後にDixie DregsのRod Morgenstein(ds)を起用を決めバンドが出来上がる。ホント、人を見つけるのが上手い人だと思う。

Winger ('88)正しくMTVの活用法を熟知したバンドだったかもしれない。歌って踊れるフロント・マンKip Wingerはバレエを習っていたことから、ベースを持ってクルクル回るシンガーというイメージが定着。パーティー・メタルに相応しいビジュアル・イメージを獲得。それ以上にキャッチーな楽曲にちょっとしたアレンジが当時の凡百なバンド陣とは一味違うところを見せた。オープニング・トラックの"Madalaine"のアコースティック・ギターからの入りや、曲の一部のようなメロディアスなギター・ソロといったReb Beachの活躍は聴き逃せない。Jimi Hendrixのカヴァー"Purple Haze"ではDweezil Zappaがゲスト参加、左チャンネルからソロを弾いており、Reb Beachとギターバトルを繰り広げている。メロディアスなハードロックが好きなら、要チェックな作品。日本盤には"Higher and Higher"がボーナス・トラックとして収められていた。
In the Heart of the Young ('90)メカニカルなイラストが何かを期待させた2ndはその通り、前作よりも更に音楽的な挑戦が見え隠れする意欲作となった。前作を踏襲したオープニング・ナンバー"Can't Get Enough"、"Little Dirty Blonde"、"You are the Saint、I am the Sinner"といったナンバーがあるのに対して、凝ったアレンジで聴かせる"Rainbow in the Dark"、Reb Beachのギターソロから入るラップを取り入れたグルーヴ感のある"Baptized by Fire"(最後を聴くとやはり本当にJimi Hendrixが好きなのかもしれない…)、そして表題曲である大仰な"In the Heart of the Young"で締め括られている。バラードは歌詞の秀逸さから圧倒的に"Under One Condition"に軍配があがる。疾走感のある"In the Day We'll never See"も素晴らしい。前作を上回る佳作。
Pull ('93)グランジ旋風をモロに喰らった時代柄、音像が生々しく骨太な印象を受けるが、メロディー、特にヴォーカル・コーラスやテクニカルな部分はWinger印がしっかりと刻まれている。ザクザクと斬り込む"Blind Revolution Mad"からブルース・ハープ(Frank Lattore; Frank Lattore and the King Beesを率いる)が鳴るアコギをメインに置きながらヘヴィな作りに仕上げた"Down Incognito"と冒頭から畳み込むような勢いを持つ。Reb Beachのギターは"In My Veins"のイントロやソロなどでも長さは以前ほどの長さはなくとも印象的なフレーズを弾いている。終盤"Like a Ritual"ではWeather Reportにも参加したAlex Acuna(perc.)とRod Morgensteinのトライバル・ドラムとの共演も一つの聴き物。これはRod Morgensteinのキャリアを考えると夢が叶った、とも言える共演だろう。最後に反戦歌とも言えるバラード"Who's the One"の出来は秀逸。Mike Shipreyをプロデューサーに迎え、前2作とは袂を分かったサウンド・プロダクションに踏み込むだけの前向きな姿勢を持った故に出来た名盤。
IV ('06)13年ぶりとなる再結成盤。Kip Winger(vo、b、acoustics、key)、Reb Beach(g、vo)、Rod Morgenstein(ds)のオリジナル・メンバーにBlack Oak Arkansasなどで活動し、PullツアーからWingerに加入したJohn Roth(g、vo)とイスラエル出身のマルチ・プレイヤーCenk Eroglu(key、g、fx)が参加。ミッド・テンポのPullアルバムの延長線にある"Right Up Ahead"から始まる。stickのような変わったサウンドが鳴る"Blue Suede Shoes"は非常によく練られたサウンドに80年代風のビックなコーラスが絡むバラード。ヴォーカル・メロディーが印象的な"Four Leaf Clover"は本作のハイライトの一つだろう。"Your Great Escape"は初期Wingerを思わせるキャッチーなハードロック。続く"Disappear"はKip Wingerがソロを重ねたからこそ出来た"Like a Ritual"系統の曲。"Livin' Just to Die"はビックなコーラスが印象的なハードロック佳曲。エフェクトをたっぷりとかけた"Generica"はその歌詞から読み取れるようにジャケットアートと連動しているのだろう。Wingerの名に恥じない細部にまで拘った音作りやKip Wingerがソロで試してきた事をWingerでも発揮していることに好感が持てる。


Kip Winger

Thisconversationseemslikeadream ('96)Wingerとしての活動に終止符を打ち、ソロ活動に入ったKip Wingerの1stソロ・アルバム。ギターにAndy Timmons、ピアノにAlan Pasqua、Noble Kime、ドラムに盟友Rod Morgensteinにゲストといった布陣で製作される。ある意味Wingerの"Pull"路線を軸に推し進めたソロ作と見ていいだろう。"Monster"や"Angel of the Underground"は"Outside"や"Earthling"時代のDavid Bowie作品などのサウンドを思い起こさせる、ちょっと捻くれたモダンなポップ・ロックの佳曲。Led Zeppelin的なギトギトしたアコギの質感を持つ"Steam"のパワーも圧巻。ソウルフィーリングをたっぷりと吸い込んだ"I'll be Down"の冒頭で聞けるアナウンスの声はJordan Rudess(現Dream Theater)によるもの。"Naked Son"や"How Far will We Go"といったバラードはWingerとなんら遜色のない質(ストリングスを取り入れている分ソロっぽいか?)。コーラスが美しい、しっとりとKip Wingerが歌い上げるバラード"Don't Let Go"も白眉。広がりのあるサウンドスケープをバックにする"Here"のトランペットはChris Botti。"Pull"を軸にソロならではの装飾と逆にストリップ・ダウンさせた楽曲とのコントラストとダイナミクスを併せ持つ名盤。
Songs from the Ocean Floor ('01)前作同様、Andy Timmons(g)、Rod Morgenstein(ds)を軸にJohn Roth(g 元Black Oak Arkansas)などが参加。全体的にストリングスをたっぷりと使った楽曲が目立つが、そういったアレンジでも決して飽きさせない緻密な計算があるのがKip Wingerらしい。Wingerの"Baptized by Fire"("In the Heart of the Young"収録)でもラップを導入したりしていたが、"Sure was a Wildflower"ではアーバン・ソウル風なオープニングから始まる都会的なナンバー。この曲ではKen Maryがドラムを叩いている。またMoon Zappa(Frank Zappaの長女)がヴォーカルで参加。続く"Two Lovers Stand"はKip Wingerらしい喉を披露する叙情的なバラード。本作の目玉の一つは間違いなく"Landslide"だろう。情感的でピアノのフレーズが印象的。ストリングスを使った"Song of Midnight"はダークなイメージを持たせた佳曲。そしてストリングスを使ったアコースティックのインスト曲"Free"へと雪崩れ込む。室内楽と呼んでも差し支えないだろう。こういった曲が後々バレエ団などへの曲提供へと繋がっていったのだろう。Andy Timmonsのギターソロが光る"Only One World"、コーラスがWingerを思い起こさせる"Resurrection"はReb Beachがギターソロで参加、とソロ・アルバムらしい成熟したポップ・ソングを集めた名盤。日本盤には"Headed for a Heartbreak"のライブ・バージョンが収録。
From the Moon to the Sun ('08)Wingerの"IV"に参加したCenk Eroglu(g、keys)を5曲で作曲パートナー、共同プロデューサーに起用。全体的にミッドテンポの楽曲で纏められているが、聴き込めば聴き込むほど発見のある作品。まず驚くのは"Ghost"と呼ばれる5分44秒のオーケストラ・ピース。バレエ音楽そのもので後にサンフランシスコ・バレエがこの曲を使用している。Kip Winger本人もWingerデビュー時にPVでバレエを披露していたが、こういうところに結実したのは意外であるとともにKip Wingerというミュージシャンの認識を改めさせられる。Cenk Erogluが関わった曲では例えば"Nothing"ではChar Rothschild(Round Mountain)が弾くsaz(トルコの弦楽器)を使用したり、詠唱のような女性ヴォーカルを導入したりアレンジに工夫がされている。個人的には本作の目玉はKip Wingerの繊細なヴォーカルとAlan Pasquaのガラス細工のようなピアノを聴かせる"Pages and Pages"とちょっとSteve Hogarth(Marillion)を思わせる"California"。前者は特に後半のAlan Pasquaのプレイが白眉。後者は若手ソングライターKen Roseとの共作。欧州盤ではCenk Erogluがリミックスを施した"Monster"が収録。丁寧に紡ぎ上げられたアレンジやサウンドは何度聴いても飽きさせない。傑作と呼ぶに相応しい作品。


King's X

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