Derek Sherinian / Planet X



Derek Sherinian

Planet X ('99)Dream Theaterを抜けた後のDerek Sherinianの初ソロ。Dream Theaterに参加したことで、初めてこういったプログレッシブ・ロック・タイプの音楽を演奏するようになった、というDerek Sherinianが自身のソロにキーボードを中心としたシンフォニックなヘヴィー・フュージョンを選んだのは興味深い。Virgil Donati(ds)を相棒に殆どの曲を仕上げ、Derek Sherinianはメタリックな要素を刻んだテクニカルなシンフォニック・ロックを展開させる。3つのパートからなる冒頭の"Atlantis"はタイトルのせいか、特に中間部などはBjorn J:son Lindhの"Atlantis"さえも思い起こさせる音空間を創っている。時にUKっぽいサウンドが出てきて驚かさせる。"Money Shot"での緊張感は秀逸。特にドラムのVirgil Donatiの貢献度は高いだろう。その他はTony Franklin(b)、Brett Garsed(g)と強者揃いを擁したバンド形態で録音されている。
Inertia ('01)前作はそのままPlanet Xというバンドに発展し、今作はSimon Phillips(ds)を共同プロデューサーに起用し、更にジャズ・フュージョン寄りの音楽性を目指しているように思える。こういった音楽性で非常に力を発揮するSteve Lukather(g)が半数以上で参加。その他はZakk Wylde(g)がヘヴィーなギターを披露している。その中でもアメリカン・キーボード・ロックの代表曲の一つEdgar Winter Bandの"Frankenstein"のアレンジをギター中心にしているのが面白い。スムースな"Mata Hari"が洒落っけのあるソフトなフュージョン・ナンバー。"La Pera Loca"はDerek Sherinianに求められている即興的なイントロからハードなサウンドを持つジャズ・ロック・ナンバーではないだろうか。Charles Mingusの"Goodbye Porkpie Hat"のカヴァーも収録。"Rhapsody Intro"と"Rhapsody in Black"はVirgil Donatiと書いたPlanet X的なナンバー。ベースにTony Franklin(元Blue Murder等)、ジャズ界で数々のセッションをこなすTom KennedyとJimmy Johnsonが参加。ゲストにJerry Goodman(violin)がオープニング・トラックの表題曲と"Astroglide"に参加。
Black Utopia ('03)共同プロデューサーにSimon Phillipsを起き、ミキサーにTony Franklinとプレイヤーを兼ねたプロダクション製作陣を用意したソロ3作目。オープニングの小曲"The Fury"でこれぞというYngwie Malmsteenのサウンドが飛び出す。そのまま3部作となっている"The Sons of Anu"でも同様にYngwie Malmsteenの速弾きにAl MiMeolaのアコースティックギターやリードが絡み、Jerry Gooodmanのヴァイオリンが華を添える。ベースにはBilly SheehanとTony Franklin(フレットレス)にSimon Phillips(ds)という布陣でそれぞれが持つ特徴的なサウンドをしっかりと刻み込んでおり非常に攻撃的で刺激的な仕上がりになっている。Steve Lukatherが参加したフュージョン系のメロディアスなナンバー"Stony Days"に続いてJan Hammer作の"Starcycle"(Jeff Beckの"There and Back"に収録)へと雪崩れ込む。Jeff Beckのアルバムでは叩けなかったSimon Phillipsもこれで溜飲を下げたことだろう。"Gypsy Moth"ではAl DiMeolaのスパニッシュ・ギターにJerry Goodmanのヴァイオリンが絡る。2分にも満たないナンバーなのが勿体無く感じるほど情感豊かな曲。最後の表題曲"Black Utopia"ではギターのメロディーなどどこかやはりDream Theaterを彷彿はさせる。各曲のキャラクターが際立っており、それぞれ聞かせどころをしっかりと押さえた構成やAl DiMeolaなどの意外性などもありソロ作としては良盤。
Mythology ('04)本作はDerek Sherinianが新しく作ったホーム・スタジオで最初に製作された作品で、セルフ・プロデュースとなっている。その為か、全体的にサウンドにまとまりが出来、すっきりした印象を受ける。まず何よりも本作を特別なものにしているのがAllan Holdswroth(g)とJerry Goodman(vln)との共演を収めた"Day of the Dead"と"On Way or the Other"だろう。時にヴァイオリンのようなサウンドを出すAllan HoldsworthにJerry Goodmanを当て、Derek Sherinian本人のキーボードがバックで鳴る、という構成は非常に面白い。前者はそこにZakk Wylde(g)が絡みDerek Sherinian曰くメタル・フュージョン(これがDerek Sherinianが狙うところ、だろう)。そういう意味ではJohn Sykes(John Sykesが他人のアルバムにゲスト参加するって珍しいですよね?)とZakk Wyldeが参加した"God of War"も非常にらしい作りかもしれない。後半のこれぞ、というJohn Sykesらしいソロが良い。Steve Stevens(g)の"El Flmingo Suave"での得意のスパニッシュ・ギターの他に"Alpha Burst"や"A View from the Sky"といったJeff Beckを意識したトーン(特に後者は素晴らしい)で聴かせてくれるのには驚く。Derek Sherinianのソロでこの役どころはどちらかというとSteve Lukatherだと思っていたから。そのSteve Lukatherは"Goin' to Church"で参加。ゴスペル・タイプのオルガンを主体としたブルージーなナンバー。着実に成長を続けるDerek Sherinianが頼もしい。
Blood of the Snake ('06)まずはオープニングにDream Theater時代のバンド・メイトJohn Petrucciを迎えた"Czar of Steel"で幕を開ける。Derek Sherinianらしいダークで変則的な曲は元々はDream Theater時代に培った音楽性で、ある種当然の帰結でもある。続く"Man with No Name"はZakk Wylde(g)がOzzy Osbrouneばりのヴォーカルを聴かせるヴォーカル・ナンバー。更にThe RippingtonsやTower of Power、Earth Wind & Fireなどに参加してきたBrandon Fields(alto sax)を擁した"Phantom Shuffle"(ドラムは当然Simon Phillips)。"Been Here Before"はメロトロンっぽいサウンドを出すノスタルジックでメロディアスなナンバー。ギターはNight RangerのBrad Gillis。表題曲ではYngwie MalmsteenとZakk Wyldeの共演が聴ける。ダークな緊張感を持つこの表題曲はどこかAyreon的な音世界に通じるところがあるように感じる。"On the Moon"は再びBrandon Fieldsのサックスに寄り添うようなTony Franklinのフレットレスの音が素晴らしいバラード調の曲。"The Monsoon"は北アフリカや中東でよく使われるボディの丸っこいギターのようなDimitris Mahlis(Wahid)が奏でるOudの旋律に導かれてYngwie Malmsteenの高速プレイとZakk Wyldeのヘヴィなプレイがぶつかるナンバー。ベースにはPride & Glory時代からの盟友John JD DeservioにドラムがBrian Tichyとなっている。"Prelude to Battle"では幽玄なアルメニア出身のJivan Gasparyanの吹くDuduk(アルメニアの笛)が前章となりYngwie Malmsteen節が炸裂する"Viking Massacre"へと突入する。最後にBilly Idolがヴォーカルを取るMango Jerryの"In the Summertime"(バンジョーが鳴るカントリー・ロック)のカヴァーが収められている。リード・ギターにSlashがゲスト参加。今作でも管の起用やヴォーカルナンバーを用意するなど多彩な作品を心掛ける優良盤。
Molecular Heinosity ('09)Derek Sherinianのライナーによると1stソロに収められていた"Atlantis"の続編とも呼べる曲をVirgil Donati(ds)と書きたかったという"Antarctica"、"Ascension"、"Primal Eleven"の3部作から幕を開ける。Brett Garsed(g)、Jimmy Johnson(b)が参加。フュージョン・テイストがあり時にUKを思わせるナンバー。Zakk Wylde(g)、Brian Tichy(ds)という既に常連の感がある二人が参加した"Wings of Insanity"はBlack SabbathやMesshuggahからの影響だというヘヴィなナンバー。"Frozen by Fire"は元OutworldのRusty Cooley(g)を擁したプログレ・メタルらしいナンバー。本作の中心的ナンバーである"The Lone Spaniard"、"Molecular Intro"、"Molecular Heinosity"は本来Yngwie Malmsteenとの共演を念頭に作られたナンバーらしいがスケジュールの都合で実現せず代わりにTaka Minamono(g)が参加。非常にYngwie Malmsteenそっくりなサウンドに仕上げているが、若々しく弾けたプレイに好感が持てる。最後に収められているZakk WyldeによるOzzy Osbourneそっくりなヴォーカルを聴かせる"So Far Gone"はダークな雰囲気をまとった作品。上海出身のチェリストTina Guo(Off the Deep End)のサウンドが非常によく合っている。最後の中東風のアコースティック・パートを挿入させるところも秀逸。ソロとしてDerek Sherinian印がしっかりと打ち出せた作品。


Planet X

Universe ('00)Derek Sherinianがソロで起用したVirgil Donati(ds)と共に立ち上げたバンド。ギターにTony MacAlpineを迎えトリオ編成となる。ゲスト・ベーシストにTom Kennedyを起用。壁のようなノイズを作り上げるTony MacAlpineとDerek Sherinianに対して変則的なリズムで緩急をつけるVirgil Donatiのプレイがある意味最大の聴き所かもしれない。"Dog Boots"と"Bitch"はそのVirgil Donatiによる曲で、その他はトリオによる作曲となっている。SF的ナレーションから始まる"King of the Universe"は多くの表情を持つナンバー。続く"Inside Black"はメロディアスなナンバー。"Pods of Trance"の中間部で聴ける流れるようなVirgil Donatiのジャジーなプレイが良い。基本、ヘヴィーで壁のようなサウンドを築いたフュージョンといったところだろうか。
MoonBabies ('02)自身のソロ"Inertia"で起用したSimon Phillipsを本作のプロデューサー(兼エンジニア)に起用。本作ではトリオに加えゲスト・ベーシストにジャズでセッションを多数こなしてきたTom Kennedy(Moonbabies、70 Vir、Micronesia、Interlude in Milan、Ignotus Per Ignotium)、Allan Holdsworthの相方Jimmy Johnson(Ataraxia Digital Vertigo、Ground Zero、Midnight Bell、Ignotus Per Ignotium)、そしてBilly Sheehanが1曲(Micronesia)で参加。冒頭の表題曲はスペーシーなイントロからヘヴィなリフを主体としたUKといった趣。ジャジーなセクションからヘヴィなパート、Tony McAlpineのメロディーが活きるパートからDerek Sherinianのキーボードソロへと変化が楽しい"The Noble Savage"など全体的に楽曲が整理された印象を受け、曲としてのまとまりを感じる。そこに各々引き出しの多いテクニックを被せる、といった感じ。適度にシンフォニックなキーボード・パートを残しているのがPlanet Xの売り、という事だろう。
Quantum ('07)本作からDerek Sherinian(key)とVirgil Donati(ds)にゲストという形をとるようになったPlanet X。Brett Garsed(g)とJimmy Johnson(b)が参加。本作は"Space Foam"を除いて全てVirgil Donati作曲によるもの。オープニングの"Alien Hip Hop"のオーケストレーションもVirgil Donatiによるものとなっており、本作のクリエイティブ面を担っているのがVirgil Donatiだというのが伺える。シンフォニックな作風を持ちつつも複雑なリズムが繰り出される。"Desert Girl"と"The Thinking Stone"ではAllan Holdsworthが参加(後者はソロのみ)。さらにRufus Philpot(b)が"Space Foam"と"Quantum Factor"に参加。前者は唯一Derek Sherinian(とFufus Philpot)とVirgil Donatiが共作した曲。リズムは複雑になりつつも曲、サウンドは(テクニック面は別として)意外とすっきりとした印象を受ける。テクニカル・シンフォのジャズロック路線としては非常に貴重な存在。


Black Country Communion

Black Country Communion ('10)バンド名となっているBlack CountryはGlenn Hughes(b、vo)とJason Bonham(ds)の出身地であるWest Midlandの愛称から来ている。Joe Bonamassa(g、vo)とGlenn Hughesのコラボレーションから発展して出来たグループ。パワートリオを嫌ったJoe Bonamassaの意見でキーボードを入れることになりDerek Sherinian(key)が迎えられた(主にハモンドを使用)。全体的にタフでガッツのある70年代ブリティッシュロックの薫りを持つブルーズ・ロックが展開される。Glenn Hughesのヴォーカルは非常に癖が強く素直なヴォーカル・ラインを取らず、エモーションに忠実な即興的な印象を受ける。Glenn Hughesのベースが唸るオープニング・トラック"Black Country"から疾走感のある"One Last Soul"。"Down Again"のラストはThe Whoの"Baba O'Riley"を思い起こさせる。Joe Bonamassaがヴォーカルを取るブルージーな"Song of Yesterday"はPaul Rodgersが"Ain't No Love in the Heart of the City"を歌っているかのよう。Patrick D'Arcyのuilleann pipesとJeff Bovaによるオーケストレーションがフィーチャーされている。"Medusa"は当然Trapezeのカヴァーでこの曲ではJoe BonamassaはGlenn HughesからMel Galleryのレスポールを借り受けて演奏している。まるでBlack Sabbathのようなヘヴィーなグルーヴを持つ"The Revolution in Me"で再びJoe Bonamassaがヴォーカルを取る。聴けば聴くほど引き込まれるアルバム。80年代David Coverdaleがよくプログレッシブ・ブルーズ・ロックという言葉を連呼していたけど、このバンドこそは正にその称号に相応しい。


King's X

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