Dream Theater



Dream Theater

When Dream and Day Unite ('89)Charlie Dominici(vo)、John Petrucci(g)、Kevin Moore(key)、Mike Portnoy(ds)、John Myung(b)によるデビュー作。John Petrucci、John MyungとMike Portnoyはバークリー音楽院で出会いRush + Metallicaというコンセプトでバンドを結成したと記憶する。当時スラッシュ・メタル勢の中にもテクニカルな演奏を標榜するグループも多く、テクニカル・メタル(当時プログレッシブ・メタルなるジャンル名に知名度があったとは思えない)のうちの一つ、と目されていた。その中でも、一際目立ったのはKevin Mooreのキーボード・ワーク。ギターと同等の戦闘能力を持ったキーボーディストというのは珍しかった。殆どのキーボーディストがバッキング主体だったのに対して、非クラシック(ジャズ・フュージョン)な影響が強いソロイストという点だろうか。勿論ギター/ベースからの弦楽隊からの要請もあっただろう。ここに80年代、テクニカル・メタルの一つの雛形が完成した。それは、スポーツで言えば「珍プレイ好プレイ集」の「好プレイ」だけを集めた番組を見ているような、爽快感から来る感動さえ受ける。Charlie Dominiciの声質がGeddy Lee似だったのは矢張り狙っていたんだろう。
Images and Words ('92)ヴォーカルにカナダのWinter Roseに在籍していたJames LaBrieを迎えて製作された2nd。James LaBrieを迎えて製作されたAtco Demoと称される3曲のデモで契約を勝ち取る。ハイトーンのみならず、メロディーをしっかりと歌いこなすJames LaBrieのヴォーカルと複雑な曲構成に説得力のあるサウンドが加わっている。その為長尺な曲でも全く飽きさせない。前作を発展させたかのようなテクニカルなソロの応酬や幻想的な歌詞(特にKevin Mooreの書く"Surrounded"や"Wait for Sleep"は素晴らしい)と、ヘヴィーメタル・ミュージックが本来持っていたプログレッシブという要素がこのアルバムでシーンに戻ってきた、と言っても過言ではないだろう。飽くまでもバンド・アンサンブルの産物とヴォーカルの力量による賜物。Spyro Gyraのサックス奏者Jay Beckensteinが"Another Day"に参加。
Awake ('94)当時、Kevin Mooreのサウンドがエレクトリック・ピアノ中心でなく歪んだオルガン・サウンドを多用した事で違った印象を持ってしまい、バッシングを受けた記憶がある。それでも、James LaBrieのヴォーカル・ラインは十分メロディアスだし、バンドが持つポテンシャルは十分に発揮している作品。確かに音像は前作よりもグッとヘヴィーになってはいる。本作は会話のようなSEを曲の冒頭などに多用しているのも特徴だろうか。"Erotomania"、"Voices"、"The Silent Man"で一つの曲"A Mind Beside Itself"となる構成。圧巻はKevin Moore作の最後の曲"Space-Dye Vest"のような世界観だろうか?"The Mirror"で使われたメロディーが再び出てくるのも興味深い(本当は逆かもしれない)。ここで使われるサンプルはOJ Simpsonのカーチェイスの模様やTV番組や映画「眺めのいい部屋」などが挿入されているよう。"Images and Words"とは違う名盤がここにある。因みにオープニングの"6:00"に使われている会話はJohn Houston監督の遺作「ザ・デッド/ダブリン市民より」から。
A Change of Seasons ('95)前作を製作中に既にバンド脱退の旨を話していたKevin Mooreの後任には紆余曲折を経てDerek Sherinianが着くことになる。ツアーを終えたバンドはレーベルの要望もあり"Images and Words"時のプロデューサーDavid Praterを再度起用し、"Images and Words"に収められなかった"A Change of Seasons"のレコーディングを行う。この曲は93年にもライブで披露され、更にリ・シェイプされ、ここにレコーディングされた。叙情的なオープニングは曲の最後にも再び出てくる構成を持つ。23分にも及ぶこのエピックは7つの"The Crimson Sunrise"、"Innocence"、"Carpe Diem"、"The Darkest of Winters"、"Another World"、"The Inevitable Summer"、"The Crimson Sunset"からなる。テクニカルで複雑なセグエが様々な表情を見せながら進行していく様は正に圧巻。アルバム後半は英ファンクラブ向けの企画としてRonnie Scott's Clubで行われたUncoveredからの抜粋。いきなりElton Johnの"Funeral for a Friend"という今までありそうでなかった選曲にセンスの良さを垣間見る。
Falling into Infinity ('97)4thアルバムはDerek Sherinian(key)加入後の初めてのフル・スタジオ盤。最初は地味なアルバムかなぁ、と思っていたけど、こうして10年の時を経て改めて聴いてみると、中々どうして。面白いアルバムに仕上がっている。John MyungはこのアルバムではStickも持ち、冒頭の"New Millennium"のユニゾンなんかもきっとそうだろう。そして、ここにある以上、目玉は何と言ってもDoug Pinnickが参加している"Lines in the Sand"。どちらかというとスクウェアーな歌唱のJames LaBrieに対してゴスペル、R&Bで育まれたDoug Pinnickとの相性が良いとは言えないが、掛け合いをさせることで、面白いグルーヴを醸し出している。その掛け合いに触発されるように曲全体にも、今までのDream Theaterにはなかったグルーヴを感じる。特にここでのDoug Pinnickの歌い方もトップギア物のシャウトの連続。一気に渦巻くようなグルーヴが発生する。また"You Not Me"ではDesmond Childを共作者に起用するなど、面白い試みをしているアルバムである。アルバムカバーはHipgnosisのStorm Thorgerson。大物の風格を纏い始めた。
Metropolis PT 2: Scenes from a Memory ('99)"Awake"リリース前に脱退を望んだKevin Mooreの後任の一人として名前が挙がっていたJordan Rudessが紆余曲折を経てDerek Sherinianの後任として本作からDream Theaterに参加。本作はある意味ファンが作ったアルバム。"Images and Words"に収められていた"Metropolis Pt.1"の続編を望むファンの声に応えて明確な物語を持つコンセプト・アルバムとして製作された。9つのシーンをAct IとAct IIに分けられている。歌詞やフレーズなどPt.1からの引用が多い。副題の「scenes from a memory」もPt.1の歌詞からの引用。主人公Nicholasが退行催眠療法を受けているギターの弾き語りのような"Regression"(退行療法)の様子からシーンは始まる。Overture 1928"の出だしのシンセ音でPt.1の続編が始まることを強く意識させられる。前半は退行療法を受ける主人公Nicholasが自身の前世であったVictoriaと出会い、彼女の死に纏わる謎解きを退行療法による追体験と現実社会で解き明かそうとしている様が描かれている。"Beyond This Life"における後半のキーボード・ソロのホーン系のサウンドは今までなかったJordan Rudessならではのサウンドだろう。"Through Her Eyes"の冒頭のスキャットはやはりPink Floydの"The Great Gig in the Sky"あたりを思い起こさせる。そして、この曲はDream Theaterの曲の中でも最もアメリカン・ロックの王道的な薫りを持ち、James LaBrieのヴォーカル・プレゼンテーションが心地良い。"Home"からAct IIが始まり、The SleeperとThe Miracle兄弟が登場する。この曲の歌詞が最もPt.1との関連が多いようだ。ドラッグ渦に悩まされるThe Sleeperの様子やThe Miracleの心理描写などがシタールっぽいサウンドを使ったサイケデリックな高揚感を持った曲に仕上げている。そして最後の1秒ぐらいでPt.1の印象的なシンセ音がふっと出てくる。そしてPt.1の歌詞の最後に使われた"The Dance of Eternity"というタイトルを持つインスト曲が始まる。オープニングにはPt.1からの断片が早送りで使われている。本作のテーマの一つである"The Spirit Carries On"の後、"Finally Free"では最後の退行療法が終わり、全てを理解したNicholasを催眠療法士が起こし、The Miracle、The Sleeper、Victoriaの最後を様子が描かれている。そして、Nicholasのパートが終わりインスト・パートが終わるものの、SEは止まず、物語がまだ進行している事を示唆し、最後の最後まで息をつかせない。まず、車を下りて家に戻りTVのニュースを消しグラスに氷を落とす音が聞こえる。レコードに針を落とし、曲が流れたところで、催眠療法士の「Nicholas、目を覚ましなさい」と言った場面でレコードの針が飛んだまま、物語は終わる。このラストに様々な憶測が飛ぶが後に"Metropolis 2000"(ライブDVD)でそのラストが描かれている。単体としてもその魅力は半減こそしないものの、やはり"Images and Words"を経験していないと100%楽しめないのも致し方なしだろう。
Six Degrees of Inner Turbulence ('02)Dream Theater初の2枚組。Disc2には8つのパートからなる42分に及ぶ組曲である表題曲が収められている。3つのパートからなるヘヴィーな"The Glass Prison"で始まるDisc1ではいたるところでサウンド・エフェクトが施されており、ある種、サイケデリックでスペース・ロック的なスタジオ・ギミックがSEを含めて聴ける。"Blind Faith"のイントロや"Misunderstood"のテープの逆回転サウンドやエフェクトを施したドラム音、ギター・ソロはテープをストレッチさせたものだろうか?ニュースの断片をイントロに置いた"The Great Debate"のサイケデリックなサウンドを置き、ヴォーカルの入りのエフェクトがかかったヴォーカル、といった所に顕著だろう。Disc2の表題曲ではまるで、ディズニーのエレクトリック・パレードでも見てるかのような様々な表情を持つファンタジックなオーケストレーションから始まる。イントロに相応しく、この後に続く曲のテーマ部を上手く繋ぎ、「紹介」という役割を果たしている。歌詞は病を持つ6人を軸に進む。"War Inside My Head"はホルストの「惑星」から「火星」を思い起こさせる。"Goodnight Kiss"からどこかで聴いた事のあるようなメロディーを持つギター・ソロから激しいソロへと移行する場面での病院のSEが更に緊張感を生む。そして、確かにPeter Gabrielの"Solsbury Hill"にそっくりな"Solitary Shell"はJames LaBrieのヴォーカル・パフォーマンスとJordan Rudessのセンスで乗り切った感がある。プログレッシブ・ロック的な技法に拘った、という意味ではDream Theaterのカタログの中でこのアルバムほど拘ったアルバムはないだろう。
Train of Thought ('03)まるで振り子が振れたかのように前作の反動を感じさせるヘヴィーな音像を持つオープニングを持つ。Metallicaのようなヘヴィネスを思わせる。サビの部分のJames LaBrieの歌い方もJames Hatfieldのよう。バスドラムの連打から入る"The Dying Soul"は歌詞は前作のアルコホリズムを扱った"The Glass Prison"と連動しているらしい。この曲では"Home"のような東洋的なパートを感じる。"Endless Sacrifice"の後半のように仕掛けは当然あるにはあるのだが、そういった部分は装飾に過ぎず、こういったヘヴィネスを前面に押しながらも"Vacant"以外は10分を超える大作曲で占めているというのは、それだけサウンドそのものに説得力を持っている、という自信の表れであろう。プログレッシブ・メタル筆頭バンドがこの作品を提示した事で、プログレッシブ・メタルというジャンルがヘヴィ・メタルのサブ・ジャンルであるという事を明確にした意義は大きいかもしれない。Metallica等を代表するスラッシーなサウンド、Iron Maidenが持つ構築美、Black Sabbath等から受け継がれてきたヘヴィネス。そういった要素が見事にDream Theater流に昇華された作品。
Octavarium ('05)8曲入りの8枚目のアルバム、という意味合いを持つアルバム・タイトルらしい。歌詞カードの頭にそれぞれ音階が書いてあり、その通りに曲が始まるようになっている。緊張感のあるイントロから始まる"The Root of All Evil"はDream Theaterらしい佳曲。James LaBrieの声の伸びや曲の後半に始まるインスト隊のバトルも聴き物だろう。ストリングスをふんだんに取り入れたバラード"The Answer Lies Within"と続く。"I Walk beside You"はU2を思い起こさせる。SEやアナウンスから中東あたりの状況を放送しているようなオープニングを持つ"Sacrificed Sons"の静の部分は"Metropolis Pt.2"あたりで確立したオペラティックなストーリーを感じさせるサウンド。Jordan Rudessのキーボードも曲を演奏している、というよりはストーリーに色づけをしているよう。"Sacrificed Sons"と表題曲"Octavarium"ではオーケストラが使われている。続く"Octavarium"は5つのパートからなる24分もの大作。オープニングのJordan Rudessによるコンティニウム(エレクトリック・ウォッシュボードって言ったら怒られるか?)とラップ・スティールがPink Floyd(というかDavid Gilmour)を思わせる。そしてアコースティック・ギターとフルートのサウンドからJames LaBrieのヴォーカルの入りは70年代Genesis的に展開していく。"Medicate"から"Full Circle"へ移行するJordan RudessのソロはKeith Emersonあたりだろうか?そして"Full Circle"の歌詞の言葉遊びは正しく先達へのオマージュ、だろう。そして、勿体無いぐらいに様々なアイディアが投げ込まれているインスト・バトルから"Intervals"のヘヴィー・メタリックなセクションへと雪崩れ込む。最後はオーケストラをフィーチャーした大団円で終わる。最終的にここ2作の融合に成功した感を受ける。
Systematic Chaos ('07) アルバムの導入部でMike Portnoyのドラムの流れが一瞬Rushを思わせたので、を?!となってしまった。全体的に今までのアルバムよりもベース・サウンドを含む低音が効いているように聴こえる。アルバムは6つのパートからなる"In the Presence of Enemies"を冒頭に2つのパート、最後に4つのパートと分けて挟む構成となっている。後半はオペラティックでさえある。"Constant Motion"や"The Dark Eternal Night"のように吐き捨て型ヴォーカルを多用しているのも見受けられる。"Repentance"は"Six Degrees of Inner Turbulence"の"The Glass Prison"から続く連作で、同じく連作の"Train of Thought"の"This Dying Soul"と同じ歌詞で始まるのが印象的。また同曲から同じ東洋風フレーズが使われている。後半の台詞はMikael Åkefeldt(Opeth)、Jon Anderson(Yes)、David Ellefson(元Megadeth)、Daniel Gildenlow(Pain of Salvation)、Steve Hogarth(Marillion)、Chris Jericho(プロレスラー?)、Neal Morse(元Spock's Beard)、Joe Satriani、Corey Taylor(Slipknot)、Steve Vai、Steve Wilson(Porcupine Tree)を迎えている。James LaBrieが歌詞を書いた"Prophets of War"はどこかAyreonを思わせるスペース・ロック風なナンバー。"The Ministry of Lost Souls"はDream Theaterらしいミドル・テンポのドラマティックなナンバー。
Black Clouds & Silver Linings ('09)全体的にJames LaBrieの歌メロがメロディアスになったため、メロディーが前面に押し出されている印象を受ける。写実的な詞を持つ"A Nightmare to Remember"のヘヴィーなセクションからメローなセクションへと音像が移り変わる様は、Dream Theaterというグループの成長を感じさせる。"The Shattered Fortress"は前作"Repentance"から続く連作の最終章。今までのシリーズ曲全てを振り返る役目を持つようにリフやメロディー、歌詞が全てが過去作と繋がっている。そしてエンディングが"The Glass Prison"へと続く意味は依存症と戦う人でなくとも多分判るだろう。"Wither"やMike Portnoyが父への思いを綴った"The Best of Times"(ヴァイオリンは元Mahavishnu Orchestra、Dixie DregsのJerry Goodman)、様々な表情を持つ"The Count of Tuscany"と多彩な表情を持つ。アイディア一つに性急さがなくなり、ある程度じっくりと聴かせる作風は好感が持てる。本作は3枚組だとカヴァー6曲(Rainbowの"Stargazer"、Queenの"Tenement Funster / Flick of the Wrist / Lily of the Valley"、Dixie Dregsの"Odyssey"、Zebraの"Take Your Fingers from My Hair"、King Crimsonの"Larks Tongues in Aspic Pt.2"、Iron Maidenの"To Tame a Land")を収めたDisc2、そして本編のインスト・ミックスを収めたDisc3というもの。


King's X

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