Doane Perry

Doane Perry

Storming Heaven "Life in Paradise" ('96)映画音楽などで活躍しているVince DiCola(key、keyboard g、b、vo)、70年代から活躍するカナダ出身のシンガーRick Livingston(lead vo)、Jethro TullのドラマーDoane Perry、様々なセッションに参加してきたCurtis Taylor(g)、90125Yesのツアーに同行したCasey Young(key)からなるシンフォニックなサウンドを得意とするAORベースのハードロック。レーベルがMTM Musicというとどういうサウンドかピンと来る方もいるだろう。オープニング"Razor Farm"はブルージーなRick Livingstonのヴォーカルを前面に押し出したハードロック。ビックなコーラスでゴージャスに仕上げてあるバラード"Crossing My Heart"はパワーバラードのお手本のような曲。18分にも及ぶ4つのセクションからなる"Jessie's Journey - the Suite"ではグルーヴのあるソウルフルなセクション("Red Knight")を持たせつつ水音のようなS.E.("The Passage")を経てエンディング"Dream House"を迎える構成。キャッチーなコーラスを持つ"Time Machine"のダイナミックな構成が素晴らしい。ブルージーなオープニングを持つスリージーなロックンロール"Don't Find It Amusin'"と佳曲が続く。Mike + the Mechanicsのようにゴージャスなプロダクションにポップでキャッチー、時にハードなサウンドを聴かせる良質なロック・アルバム。ちなみに本作のマテリアルは91年頃に書かれたものが多いらしい。
Thread ('95)発表年は前後するがStorming Heavenの後、Vince DiCola(key)がDoane Perry(ds)とTower of Powerなどで活躍したトップ・ヴォーカリストEllis Hallと組んだのが本グループ。ある意味Storming Heavenのアップデート版と考えても良いだろう。楽曲も更に洗練されトリオ編成+ゲストという形ながらサウンドもプロダクション面では幾分劣るものの、その分楽曲の良さとソウルフルで伸びやかな喉を聴かせるEllis Hallのヴォーカル・プレゼンテーションで補っている。全曲にシンフォニック/プログレッシブ・ロック的な捻りを加えている。80年代後期Steppen WolfやDavid Lee Rothバンドなどで活動したRocket Ritchotte(g)がヴィヴィッドな"Live at the Scene"と"Another Mean Day"で参加。Mark Boals(g;メタル系ヴォーカリストとは多分別人)が"Hands of Kindness"、"Rage"と14分に及ぶ"Rainbow Suite"に参加。映画音楽なども手がけるJohn De Faria(g)が"Just Out of Reach"と"Secrets of the Game"に参加している。全編に渡りEllis Hallのソウルフルなヴォーカルにダイナミックなシンフォニック・ロックを掛け合わせた、という感じ。個人的にこのR&B、ソウル系ヴォーカルとシンフォニック・ロックの融合はアメリカン・シンフォニック・ロックのあるべき姿を捉えた重要作だと思う。2nd製作の予定もあったらしく、その時ThreadはThe Flower KingsのRoine Stoltにギターのレコーディングを依頼している。いつかその2ndが製作される事を期待したい。
DPI "Found Objects" ('06)元々はVince DiCola(key)、Doane Perry(ds)、Paul Ill(b Reeves Gabrelsとの活動などがある)によるキーボード・トリオを中心にReeves Gabrels(g David Bowieなど)とVincent Kendall(vo)を迎えた"Pity the Rich"(ダウンロード販売のみ)を製作したところから端を発している。その時に出来た曲を本作ではトリオ編成のみでヴォーカル無しのインスト作品とするのを主眼に製作された。"Found Objects"(19:46)、"Ephemeral Possessions"(18:16)、"The Object of Opprobrium"(12:40)の3曲から成る。時に流麗なキーボードを操るVince DiColaのプレイが当然中心となる。やはり師匠はKeith Emersonだろうか?サウンドは全く違うもののそのダイナミズムのセンスは共通するものがある。長尺曲3曲という構成ながら、全く飽きさせないのは楽曲に拠るところが多いだろうが、本作はスタジオでジャムをしながら製作されている点も興味深い。場面場面でジャジーなパートが出てくるが、本作はシンフォニック作と言い切って良いだろう。起伏に富んだ"Found Objects"、しっとりとメローな路線の"Ephemeral Possessions"、再び勢いのある"The Object of Opprobrium"。Paul Illのプレイが何気に鬼気迫るものがある。どの曲でもVince DiColaのメロディーやサウンドのセンスが良い。Vince DiColaと共に共同プロデュースにBucketheadなどのアルバムで有名なTravis Dickersonを迎えている。


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