Martin Barre



Martin Barre

A Trick of Memory ('94)Martin Barreはギタリストである(当然なんだけど)。そして、このソロ1作目では自身がギタリストであることを明確に打ち出したアルバムを持ってきた。オープニング・ナンバーはギターが吼える"Bug"で幕を開ける。Jethro Tullの同僚Andy Giddings(key)やMatt Pegg(b)の好サポートが全編に渡って冴えまくる。ドラムにはMarc Parnell(後にTheo Travis等と活動する)以外にもTom Glendinningが2曲、Graham Wardが1曲で叩く。管も幾つか揃えるがメインとなるのはサックスのMel Collins。続く女性ヴォーカルを従えた"Way before Your Time"は洒落っ気のあるハードなナンバーで畳み掛ける。そして、ジャジーなアコースティックギターでしっとりと聴かせる"Empty Cafe"からIan Andersonを思わせるMartin Barreの喉を披露するファンキーなブラスロック"Suspicion"。アコースティックギターとフルートを絡ませた美しい小曲"I Be Thank You"はJethro Tullに入っていてもおかしくないお得意なパターン。Maggie Reedayをリードヴォーカルに迎えた"A Blues for All Reasons"ではAndy Giddingsのハモンドが吼えるソウルフルなナンバー。続くタイトルトラックはオープニングの"Bug"と同系統の疾走感溢れるギターのオープニングからキャッチーでポップなヴォーカルが乗る佳曲など、Jethro Tullでは聴くことが出来ない「ギタリスト」Martin Barreがぎっしりと詰まったアルバムに仕上がっている。
The Meeting ('96)Jethro TullからJonathan Noyce(b)、後にIan Andersonのソロなどに参加するDarren Mooney(ds)、Andrew Murray(key)を軸にMel Collins(sax)の他、Jethro Tullの同僚Doane Perry(ds)、Gerry Conway(ds)、Dave Mattacks(ds)等が参加。前作同様、基本はギター・パートを中心としたロック作品。アルバムの半数はヴォーカル入りのナンバー。殆どがソウルフルな声を披露するMaggie Reedayによるもの。"The Dreamer"だけJoy Russellがヴォーカルを担当。だが、基本はギター・インスト・パートを聴かせるための味付け、という感じにも聴こえる。"I Know Your Face"のようにJethro Tull風のフルートを聴かせるナンバーも用意している。"Misère"はクラシカルなアコースティック・ギターを中心とした前半からハードなギターへと移行する秀逸なインスト・ナンバー。どの曲もメロディーがしっかりしており、非常にキャッチーで聴きやすく、作曲家としてのセンスがよく表れているアルバム。作詞作曲全てMartin Barreによるもの。
Stage Left ('03)インターに使用ギター一覧があるギターをメインに据えた作品。冒頭の"Count the Chickens"がハードロック佳曲なため、今までと似たような作風のアルバムになると思いきや、バロック風("Favourite Things"、"D.I.Y."、"Winter Snowscape"等)やフォーク風("I Raise My Glass to You!")の曲を散りばめ随所でアコースティック・ギターが活躍しているのが特徴。"Stage Fright"はそのままJethro Tullに使えそうなフルートをフィーチャーした曲。最後のハードロック路線の"Don't Say a Word"のみヴォーカル曲でThe Blue BishopのSimon Burrettが参加。その他にJonathan Noyce(b)、Darrin Mooney(ds)、Andrew Giddings(key)といったいつものメンバーが参加。Martin Barreというミュージシャンを端的に表した作品といえるかもしれない。名盤。


Other Works

John Wetton "Caught in the Crossfire" ('80)John Wettonというミュージシャンはどの時代から聴き始めたかで結構印象が変わるような気がする。ベース・プレイヤーとしての剛のイメージやKing Crimson時代のヴォーカルとAsiaでのメロディーの本質は同じでも、そのプレゼンテーションには明確な線引きがあったように思える。そしてU.K.の崩壊後、自身の音楽性を明確に打ち出したのがこのソロ名義による1stアルバムである。ドラムには元Free、Bad CompanyのSimon Kirkeをパートナーに、Jethro TullのMartin Barreを4曲でリードを任せ、サックスプレイヤーにはMogul Thrash時代の盟友、この当時ブリティッシュ・ファンク・バンドAverage White Bandで飛ぶ鳥を落とす勢いのMalcolm Duncanが2曲で担当。その他のギター(リードを含む)、キーボード等の全てのパートは自身で行っている。作曲も"Get What You Want"の歌詞にPete Sinfieldを迎えただけで、残りは全て一人で書き上げている。プロデュースにはJohn Punterを共同に迎えている。例えば、オープニング・トラックの"Turn on the Radio"でも剛のベースプレイは聴けはするが、今作でのJohn Wettonの聴き所はその多彩なヴォーカル・プレゼンテーション。力強いコーラスを持つ"Baby Come Back"、潰れることなく通す裏声を披露する"Cold is the Night"や"Paper Talk"。演歌調の表題曲、昭和ニューミュージックを思い起こさせる"I'll be There"と懐かしさも感じる。個人的にはやはりMartin Barreの硬質なソロが聴ける"When Will You Realize"でしょうか。名作。


Top



inserted by FC2 system