P@ Mastelotto

Pat Mastelotto

07年、"The Sum of No Evil"を出した後、The Flower Kingsは欧州ツアーのドラマーに何とPat Mastelottoを指名。11月6日から16回に及ぶ公演をこなす。この選択には多くのファンが驚いた。Pat Mastelottoが単なる1ドラマーというよりも既にサウンド・クリエイターとしての側面を持ったミュージシャンという認識が出来上がっているから。ライブを見た人間によれば、やはりThe Flower Kingsもその影響を受けた、という。それは後に出るであろうオランダ公演のDVDでチェックしてみたい。



Mastica "'99" ('99)Pat Mastelottoが地元テキサス、オースティンでリクルートしたGumB(b、cello、mandocello、vo)、MunKey(reeds、g、Bontempi、vo)という2名と結成したプロジェクト。まず、面白いのがPat Mastelottoのクレジット。トラップス、ボタン、ノブにmembranesとある。トラップス、ボタン、ノブというのはエレクトロニクス・デヴァイスという事だろう。そしてmembranes?膜や羊皮紙などと訳されるのだが、果てさて、どういう意味だろう?MunKeyのBontempiというのもメーカー名。キーボードのことだろうか?今作の音楽性はリクルートした2名のヴォーカルや演奏を好きにやらせるだけやらせた所をPat Mastelottoが上手くマテリアルとして纏め上げた、という印象を持つ。それでいて、本作の質感は"Munecos de Palo"に代表されるようにプリミティブな側面も持つ。MunKeyが朗読しているのは"Popol Vuh of the Quiche Maya"からの抜粋(羊皮紙ってまさかこれじゃないよね?!)。管の奏でるメロディーも非西洋的なメロディーが多いようにも聴こえる。打ち込み等もあるのだろうが、意外に肉体的な質感を持つ。最後の"Idiot"の後、8分ぐらい経ってからボーナス・トラックが始まる(タイトルは?)。The Scabs等にいたDave Boyleが"Day Older"でハモンド、クラヴィネットで参加している。
Mastica "MasTicAttacK" ('02)本作は前作のトリオに更にサウンド・デザイナーとして盟友Bill Munyon、Brad Houser(baritone sax、sentir、perc. 元Edie Brickell & New Bohemians)、Branden Harper(ds Oosik)、Bruce Salmon(key)、Miabel Williams(voice)がクレジットされている。その為か、バンドというよりはフリー度が高い即興性を感じ場面も多いし、ドラムンベースなどのリズムトラックを下地にサウンドを重ねているような曲もある。クレジットを見ると判るが01年の3月と10月にライブ・レコーディングを行っている。経済的な理由でスタジオで「曲」として完成しきれなかったナンバーを基にライブでの即興を被せて製作されているのが本作の実情のようだ。テキサス州オースティン発のケオティック・ミュージック。場所柄か、時折うねる様なグルーヴが飛び出すのも興味深い。所々クラリネットがチャルメラ風に聞こえるのは日本人だからでしょうか?
M・P・TU ('08)Malford Milligan(vo 元Storyville)、Phil Brown(g、vo 作曲家として多くのミュージシャンに曲を提供していた)、Mark Andes(b、vo 元Spirit)にPat Mastelotto(ds)というアメリカン・ブルーズ・ロック・バンド(!)。ねちっこいスライドを多用したPhil Brownのギター、伸びやかながらも塩辛いヴォーカルを聴かせるMalford Milligan。ここにPat Mastelottoという異色のドラマーが座ることでちょっと変わったグルーヴが生み出されている。"Call Me"などはレゲエっぽいグルーヴを出したいのだろうが、Pat Mastelottoのスクウェアなドラミングによって、一筋縄でいかないナンバーとなっている。そんな中、続く"Maybe"は女性コーラスも絡めヴォーカル・メロディーも秀逸なアメリカンでマッチョなブルーズロック。自然と体が揺れる。4曲のカヴァーもまた興味深い。"(Pouring) Gasoline"はThe Boneshaker(Was (Not Was)のSweet Pea Atkinsonがヴォーカルだったグループ)に"Green Manalishi / Fred"は当然Fleetwood MacにThe Tony Williams Lifetimeのナンバーを挿入した曲。"I Got a Line on You"はSpirit、そしたアルバム最後を飾る"A Change is gonna Come"はSam Cookeの名曲(MLKに捧ぐとあるのはMartin Luther King牧師だろう。有名な演説も入っている)。Pat Mastelottoの意外な活動の一面が見れるアルバム。
KTU "Quiver" ('09)Pat Mastelotto(rhthmic devices, beats, noises)、Trey Gunn(Warr guitar)というKing Crimson-TU組がフィンランド出身のSamuli Kosminen(add. beats、noises、Kosminization;本作でもゲスト参加している)とのユニットKlusterのKimmo Pohjonen(accordion、voice)と合体した2nd(1st"8 Armed Monkey"はライブ盤)。Trey Gunnによる幻想的な"Fragile Sun"はタイトルを思わせるようなイメージを膨らませてくれるナンバー。"Kataklasm"はまるでAlan Parsons Projectのような壮大な世界観を持ち聴く者を圧倒する。"Nano"はKimmo Pohjonenの持つ攻撃的な面が出たナンバー。タイトル・トラック"Quiver"はトラディショナルな舞踊曲あたりを下敷きにしたかのようなナンバー。切り裂くようなノイズを入れるTrey Gunnのサウンドとのコントラストが聴き物だろうか。"Purga"は教会の鐘の音のSEから始まるせいか、どこか静謐な感じを受けるナンバー。煉獄を意味するPurgatoryから取られたのでは?というライナーがあるが納得。"Womb"はタイトル通りKimmo Pohjonenの優しくも温かい感じのアコーディオンが鳴る。"Wasabi Field"もどこかで聞いたことのあるようなメロディーを持つ。後半の盛り上がり方が尋常じゃない秀逸さ。Trey GunnのWarr guitar独特のサウンドから始まる"Jacaranda"は人懐こさを感じさせる前半から崩していく様が圧巻。"Aorta"はこの3人でしか奏でることの出来ない文句なしに格好良いハードロック・ナンバー。"Miasmaa"は本作の最大の聴きどころの一つだろう。混沌と秩序、ノイズとメロディーの交わりが白眉。最後に"Snow Reader"でしっとりと終わらせる。日本盤にはボーナス・トラック2曲収められており1曲はThe Edgar Winter Groupの"Frankenstein"。名盤。因みに追加ミックスに3曲でSteven Wilson(Porcupine Tree)が参加。
Pamelia Kurstin & Pat Mastelotto "Tunisia" ('09)Pamelia Kurstin(thremin、bass、keys)とPat Mastelotto(traps&buttons、vox、perc.)のデュオ・アルバム。ヘヴィーなPat Mastelottoのドラム、ノイズにPamelia Kurstinのテルミンが響く静と動の対比が面白い作品。Pamelia Kurstinが奏でるメロディーがひっそりとした佇まいを持ち、アルバム全編に渡ってサウンドの背景を特徴付けている。対してPat Mastelottoのヘヴィなサウンドの方が時にサウンドのアクセントとして威力があり、ソロプレイヤー的な位置にいるのかもしれない。インダストリアルっぽい硬質なサウンドに民族音楽的な柔和さが綯い交ぜになった作品、とでも言えようか。


King Crimson

VROOOM ('94)91年頃から、Robert Fripp本人の口からKing Crimson構想が出るようになる。そして、紆余曲折を経て、ダブル・トリオ構想をぶち上げ、90年代新生King Crimsonが姿を現した。ダブル・トリオという編成ばかり注目されたが、それもKing Crimsonというバンドにおいてどのように機能するのか、という期待の表れだろう。Discipline Crimsonに新たにTrey Gunn(stick)、Pat Mastelotto(ds)を加えたことからも判るように、その音楽性も80年代King Crimsonが追及したdiscipline(修練、鍛錬)という精神性を70年代、特に"Red"期のKing Crimsonの音楽性を掛け合わせたようなサウンドが狙いだったようだ。ダブル・トリオが持つ複雑に絡み合うリズムを聴かせる。そして、Adrian Belewの音を邪魔させないようにシンプルな言葉を紡ぐような歌もの"Sex Sleep Eat Drink Dream"や"One Time"なども用意された。圧巻なのは"Cage"。まるでPrimusへのアンサーソングである。そして、サウンドスケープの導入部からメタリックに響くパーカッションが轟くインスト・ナンバー"Thrak"とそれに続く"When I Say Stop、Continue"はジャム・セッション風のもの、とこの時点でのKing Crimsonの見せれる所は全て出し切ったがの如くの多彩な内容のミニ・アルバムとなった。そして、この後に続くであろうフル・アルバムへの期待を弥が上にも高めることに成功した、と言えるだろう。
THRAK ('95)本作に先駆けて発表されたミニアルバム"VROOOM"に続いて発表されたフル・アルバムには"VROOOM"と"THRAK"、そして歌物"One Time"と"Sex Sleep Eat Drink Dream"が再び収録されるが、当然バージョン違い。歌物の方は幾分テンポを落として、重厚な雰囲気を纏ったように聴こえる。本作も前ミニ・アルバムと同様に"VROOOM"から始まるが、このアルバムではアルバム最後にも変奏曲"VROOOM VROOOM"、"VROOOM VROOOM: Coda"で締め括られる構成。また本作の特徴であるダブル・ドラムの特性を活かしたのが"B’Boom"。サウンドスケープをバックに複雑な非西洋的なトライバルなリズムから複雑に絡み合っていく様が堪能出来る。そして、凶暴な表題曲へと雪崩れ込む。その他、歌物では強烈な皮肉にしか聴こえない"Dinosaur"は非常にらしい。また"Inner Garden I"から"Inner Garden II"までは本作では一つのまとまったメロディーを主体としたセクションと捉えても良いだろう。ダブル・トリオの特性をきっちりと出しながらも意外とそこに強い拘りを持った作りにはなっていない。
Projekct X "Heaven and Earth" ('00)"The ConstruKction of Light"と同時進行で製作されたProjekctシリーズ最終作はPat MastelottoとBill Munyonプロデュースによるもの。メンバーはAdrian Belew(g、v-drum)、Robert Fripp(g)、Trey Gunn(b、touch guitar、baritone g)、Pat Mastelotto(traps、buttons)。オープニングの"The Business of Pleasure"こそクラブ対応型の無機質で性急なヘヴィーな音像を持つリズムを主体としたものでこの頃のメンバーの方向性が見える。そういった中で"Side Window"で聴ける丸で管のような音が印象的。"Maximizer"ではAdrian Belewらしい咆哮やメタリックなパーカッションがサウンド・スケープの上を駆け巡る。"Six O'Clock"はまるでこのメンバーによる"Red"を聴いているよう。そして、Robert Frippによる心地良いサウンドスケープから始まり、ヘヴィな音が被さる"Superbottomfeeder"や会話の上に珍妙なサウンドを被せた"Conversation Pit"は正にタイトル通りの曲。サウンドスケープを土台にメロディーが活きている"Heaven and Earth"はまるでPorcupine Tree辺りに通じるものがある。聴けば聴くほど色々な発見があるアルバム。
The ConstruKction of Light ('00)WトリオからRobert Fripp(g)、Adrian Belew(g、vo)、Trey Gunn(bass touch g、bartione g)、Pat Mastelotto(ds)というカルテットに縮小した編成で録音された作品。冒頭の"ProzaKc Blues"はファンサイトを揶揄したインターネット時代を題材にした歌詞。上物のヴォーカルはエフェクトをかけたヘヴィなナンバーとなっているが変則的なリズムはそのまま90年代King Crimsonという変わったナンバー。表題曲は2つのパートに分かれており、後半はAdrian Belewらしいキャッチーなヴォーカルをフィーチャーした曲。"Frakctured"と"Larks' Tongues in Aspic Part IV"は所謂Red期からの深化を示唆する狙いだろう。全編に渡って重く人工的なサウンドと僅かながら出てくる有機的なサウンドを組合わせるPat Mastelottoの存在がやはり大きい。そして近年の悲劇を羅列した"Coda: I Have a Dream"はRobert Frippのサウンド・スケープにエフェクトをかけたAdrian Belewの声が乗る。最後にProjeKct Xの"Heaven and Earth"が収録されているが、これを単なるオマケで済ませてはいけない気がする。21世紀を目前に控えた重要作のように思える。
Shoganai ('02)前作と同じ布陣で製作された10曲入り33分のミニ・アルバム。本作のタイトルトラックとも言える"Happy with what You have to be Happy With"はWhite Zombieなどを手掛けたMachineをプロデューサーに迎えて製作された力強いAdrian Belewのヴォーカルを配した曲。King Crimsonにしては何も考えていないユーモアのある歌詞が逆に新鮮。"Eyes Wide Open"は"One Time"を思い起こさせるメローなナンバー。"Potato Pie"はKing Crimson流ブルーズ・ナンバー。"Larks' Tongues in Aspic (Part IV)"はライブ録音された物。この4曲を軸に残りの6曲はRobert Frippのチャーチオルガンっぽいサウンドを聴かせるサウンドスケープ曲"Mie Gakure"やメロディアスなメタリック・パーカッション(ガムラン?)で演奏される"Shoganai"など。
The Power to Believe ('03)ミニ・アルバム"Shoganai"で"Happy with what You have to be Happy With"でプロデューサーを務めたMachineが本作でもプロデュースを担当。Adrian Belewのエフェクト掛かったアカペラから"Larks' Tongues in Aspic Part V"とも呼べる"Level Five"へと雪崩れ込み一気にKing Crimsonワールドへと引き込む。Pat Mastelottoのトリガーを多用したドラミングが印象的。ミニ・アルバムにも収められていた"Eyes Wide Open"はアコースティック・ギターからエレクトリック・ギターに差し替えられている。"ElektriK"の反復リフも"The Power to Believe II"もガムラン的な(前者はリフ、後者はサウンド)要素が用いられており幻想的なサウンドを構築している。"Dangerous Curves"は「惑星」の「火星」的な雰囲気を思い起こさせる勇壮さがある。静と動というより重さの対比を持つ"The Power to Believe III"と最終章であるRobert Frippのサウンドスケープによる"The Power to Believe IV: Coda"の流れが素晴らしくアルバムの終わりに相応しい。


Other Works

Mr. Mister "Welcome to the Real World" ('85)Quincy Jonesの元でセッション・ミュージシャンとして活動していたRichard Page(vo)が幼馴染のSteve George(key)とPagesを70年代終わりにスタートさせ3枚のレコードを製作。そこにPat Mastelotto(ds)、Steve Farris(g)が加わってMr.Misterを結成。今作はMr.Misterの2ndで1stシングル"Broken Wings"でいきなり全米1位を獲得。続く"Kyrie"でも同様に全米1位を獲得し、その名を時代に刻んだ。その音は80年代によくあった、耳に馴染みやすいメロディーやコーラスを駆使したハードポップなバンド。あの時代の音ではあるんだけど、不思議とそんなに古臭くも感じない。それだけプロダクションがしっかりしていた、という事でしょう。作曲は全てバンドとJohn Lang(歌詞?)というRichard Pageの従兄弟によるもの。やはり"Kyrie"は名曲ですね。
Prometheus ('94)Robert Frippが主催していたギタークラフト出身のSteve Ball(g、vo、key、perc.)が同僚のNigel Gavin(b、vo)とPat Mastelotto(ds)、元BotanicaのSanford Ponder(g、perc.)にJean Luc PontyやBotanicaにも参加していたChris Rhyne(solo synth、organ)、Steuart Liebig(b)を迎えて製作した作品。非常に雑多な内容で、メタリックなギター・クラフトといった趣の曲もあれば、ちょっとニューウェーブがかったプログレッシブ・ロックな歌物や、"The Policeman's Ball"の中間のオルガンソロはまんまJean Luc Pontyの作品とでも言えそうなジャジーなパートも出てくる。2曲目の"Sardukar"のみSanford Ponder作曲のBotanicaの"Strange Attractor"に収められていた曲。その他の曲は全てSteve BallとSanford Ponderによるもの。プロデュースはSanford Ponderとなっている。最後に"Redemption"という20分以上に及ぶサウンドスケープ曲が収録されているが、全く必然性を感じないのが残念。その他の各曲は粒も揃っていて秀作ではある。因にこのSteve Ball、DGMのロゴをデザインした人でもあるらしい。



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