Neal Morse



Neal Morse

Neal Morse ('99)Neal Morseの1stソロ。殆どの楽曲の演奏、プロデュース、作曲を一人で行っている。冒頭曲以外のドラムにNick D'Virgilioのヘルプを仰ぎ、その他にも最後の組曲"A Whole Nother Trip"のパーカッションにGlenn Caruba、ストリングスにChris Carmichaelを呼んだだけである。共にナッシュビル周辺でセッションを重ねているミュージシャンである。特に演奏を殆ど自分でやってしまった、という以外、Spock'sとの差別化も見られない。この曲がSpock's Beardで出てきたところで、何の違和感もないように感じられるから。ドラム以外は自身のホームスタジオを使ったみたいで、少しだけプロダクションに甘さがあるように思えるが、それでも、正規盤として何の問題もない。Spock's Beardにあって、ここにないのは、それこそGentle Giant風味のコーラスが入った曲ぐらいのものだ。最後の大作も圧巻。ジャケットに惑わされてはいけない。
Testimony ('03)Spock's Beardを離れてから初めてのソロ作。まず、タイトルの"Testimony"は「信仰宣言」とでも訳せるもの。Spock's Beardにいたら、この歌詞は歌えないだろう。Neal Morseの信仰から離脱を決めた、というのも十分頷ける。Neal Morse流賛美歌とでも言えそうな歌詞だ。そして、ツアーも教会を回るツアーを行ったりと、そういった方面での活動が目立つ。今作は2枚組5つのパートからなっており、ストリング・セクション、ホーン・セクションをふんだんに取り入れ、大仰なアレンジを施すも、シンプルなNeal Morse特有のメロディーの美しい曲も用意されている。TransAtlanticで活動を共にしたMike Portnoy(ds)や元KansasのKerry Livgren(g "Long Story"のギターソロ)の参加が目を引いたが、Johnny Cox(pedal steel)やByron House(b)といったナッシュヴィル人脈、本来はクラシックギタリストとしての方が有名なEric Brenton(violin、viola、flute等)の活躍も見逃せない。特にEric Brentonのその後のライブでも大きかったようだ。膨大な音楽的アイディアがテンコ盛り。因みに欧州限定盤にはボーナスディスクが付いており"Tuesday Afternoon"(The Moody Blue)と"Find My Way Back Home"(Blind Faith)のカバーが収録されている。
One ('04)前作から引続きMike Portony(ds)を迎え、リズムセクションの相方にRandy George(b)を起用。ストリングやホーンといったオーケストレーションを再びふんだんに使ったNeal Morseらしい素晴らしいメロディーを配した作品。オープニングの壮大なオーケストレーションから、18分に及ぶ組曲"The Creation"へと進む。インタールード的な小曲"The Man's Gone"(何気にこういうアコースティック曲のセンスが良い)を挟んで、ヘヴィーなインスト・パートからGentle Giant的ヴォーカル・コーラスが出てくる"Author of Confusion"、そして中間部の"The Man's Gone (Reprise)"では超が付くベテラン・ギタリストPhil Keagyの素晴らしいアコースティック・ギター・パートを持つ組曲"The Separated Man"へと続く。Phil Keaggyは他にも"The Creation"でソロを、そして続く"Cradle to the Grave"ではリードヴォーカルも披露している。そして、スパニッシュ・ギターが活躍する"Help Me / The Spirit and the Flesh"から"Father of Forgiveness"を挟み"Reunion"でストーリーの完結を見る、という構成。歌詞内容は前作同様、宗教色が濃く、さながら聖書を読んでいる錯覚を覚えるのが唯一の難点といえば、難点。但し、だからNeal Morseはソロになったのであって、そこに難癖をつけてはいけない。音楽的内容は非の打ち所のないほど完成度が高い傑作。本作は、Neal Morseのカタログの中で今のところ最もTransAtlanticに近い所にある作品かもしれない。特別盤に付いているボーナスディスクでは、未発表曲の他、George Harrisonの"What is Life?"、U2の"Where the Streets Have No Name"、Badfingerの"Day after Day"、The Whoの"I'm Free / Sparks"を収録。
Question ('05)出エジプト記に出てくる幕屋をテーマに置いた歌詞を中心とした作品。トラックリストを見ると12曲あるが、実際には1つの楽曲という。参加メンバーにMike Portnoy(ds)、Randy George(b)といういつものリズム隊にJordan Rudess(key)、Alan Morse(g)、Steve Hackett(g)、Mark Leniger(sax)にRoine Stolt(g)がゲスト参加。見事にアルバムの軸となる要所に使っているのがNeal Morseの人柄か。"12"というタイトルから重要なセクション(12という数字が霊的な数字とされている事から)か判るパートでは一聴してSteve Hackettと判るギターソロが聴ける。また、"In the Fire"ではAlan MorseとRoine Stoltのソロが挿入されている。が、Roine Stoltによると、Neal Morseから依頼があった時、好きに何でも入れてくれ、と言われたそうで、ギターのみならず、キーボード、パーカッションを「ふんだん」に入れたらしい。完成した作品を聴いても、本人でさえも「どこに何を入れて何が残っているのかさっぱり判らない」と言っていた。殆どは省かれていたようだが…。前作と比べると明快なメロディーが減退し、複雑なセクションが増え、そういった意味ではNeal Morseのソロ作の中ではプログレッシブ・ロックに最も近い位置にある作品かもしれない。歌詞もNeal Morseの宗教観が入っているとは言え、基本的には聖書の中の物語(というか謎の一つ?)をモチーフにしただけ、とも言える。
Morse Portnoy George "Cover to Cover" ('06)"Question"セッションで行われたカヴァー7曲に"One"と"Testimony"のボーナス・ディスクに収められていたカヴァー計6曲を1枚のディスクに纏めたもの。Randy George(b)は最後の"Testimony"セッションの2曲には不参加。Mike PortnoyによるとKevin Gilbertのアコースティック・ヴァージョンをラジオで聴いてからずっとカヴァーをしたいと思っていたThe Monkeesの"Pleasant Valley Sunday"から始まる。Randy George推薦の"Badge"(Cream)からPaul McCartneyの"I'm Amazed"、そしてMike Portnoyがやりたいと言ったCat Stevensの"Where Do the Childrean Play"、Neal Morseが選んだ"I'm the Man"(Joe Jackson)、そしてブラスも入っているChicagoの"Feeling Stronger Everyday"(Mike Portnoyの選曲)、Mike Portnoyがいつかカヴァーをしてみたいと思っていたDavid Bowieの"Rock and Roll Suicide"(しっかりとストリングも入っている)が納められている。Cat StevensやDavid Bowieのような低音ヴォーカルのアコースティック曲になるとどことなくNeal Morseの声がJon Bon Joviあたりに近くなるように聴こえる。特にMike PortnoyはDream Theater等では演りたくても出来なかったカヴァー曲を選曲して楽しそうな雰囲気がよく伝わる。ファンはここからオリジナルをチェックしてみるのも良いだろう。
Sola Scriptura ('07)ジャケットの最後にNeal Morse自身のライナーにあるように、本作は聖アウグスティノ修道会の修道士マルティン・ルター(ルーテル教会の始祖と言えばピンと来るかもしれません)を主人公にしたコンセプト・アルバム。ジャケットに描かれている修道士は正にその人であろう。ジャケットの裏に書かれている6つの文は後に宗教論争をヨーロッパ中に巻き起こすルターの書いた「95ヶ条の論題」の冒頭部からの抜粋。本作は、29分にも及ぶ"The Door"、25分の"The Conflict"、ピアノ・バラードの"Heaven in My Heart"、そして16分のThe Conclusion"という構成。長尺曲は全て6つのセクションに分かれている。Neal Morseのアルバムにはお馴染みのRandy George(b)とMike Portnoy(ds)のリズム隊にPaul Gilbert(Racer X)が"The Door"の最後のセクション"Upon the Door"、"The Conflict"の最初のセクション"Do You Know My Name?"のリード・ギター、そして"Two Down, One to Go"のフラメンコ・ギターで参加。非常に硬質なサウンドを提供している。随所でストリングスが使用されている他、Chris Carmichaelによるエレクトリック・ヴィオリンも印象的。題材のためか、Neal Morseのアルバム中、最もヘヴィーな内容に仕上がったアルバム。
Lifeline ('08)Neal Morse(key、g、vo)らしいドラマティックなピアノのオープニングから始まる本作は"One"のような明快なメロディーが目白押しな作品。冒頭曲の"Lifeline"はイントロに半分ぐらい費やしている。Jonathan Willisによるストリングスが美しい"The Way Home"、Jim Hookeによるサックスをフィーチャーしたダークな"Leviathan"、6つのセクションから構成されている24分に及ぶ"So Many Roads"とNeal Morseらしい曲が並ぶ。久しぶりにMike Portnoy(ds)とRandy George(b)のトリオを中心として製作されている。聴き込めば聴き込むほど、様々なサウンドに彩られていることに気がつく。"Fly High"の2ndギターソロはツアーメンバーでもあるPaul Bielatowicz(Carl Palmer Band)によるもの。歌詞は今まで以上にクリスチャン色が強くなっている。本作にもボーナス・ディスクが付いている限定盤がある。The Osmondsのヘヴィーロック"Crazy Horses"("Crazy Horses"収録、リード・ヴォーカルはMike Portnoy)。ギターはThe Osmonds好きで有名なPaul Gilbert。The Bee Geesの"Lemons never Forget"("Horzontal"収録)、"The Letter"はJoe Cockerバージョン(編曲は勿論Leon Russell。Neal MorseのLeon Russell好きも有名)。Brinsley Schwarzがオリジナルの"(What's So Funny bout) Peace Love and Understanding"はElvis Costelloヴァージョン。"Sometimes He Waits"と"Set the Kingdom"はNeal Morseのオリジナル。後者ではCollin Leijenaarがドラムを担当。
Testimony Two ('11)タイトルを見て判るように03年に発表されたTestimonyの続編。いつものようにRandy George(b)とMike Portnoy(ds)を起用。スタジオ入りする1週間前にデモを受け取り、準備期間は全くと言って良いほどなかったそう。Spock's Beardを離れた後に出された初のソロ作"Testimony"はNeal Morseのキリスト教への帰依(Born Again Christian)を中心に描かれていたが、本作はNeal Morseのキャリアなどを俯瞰した自伝的な内容になっている。コンセプト作でもロック・オペラの部類に入る作品。オープニングの"Mercy Street"はポップなNeal Morseらしい曲。歌詞にAnimalsで有名な"House of the Rising Sun"というラインが出てくるのは偶然ではない。そして"Overture No.4"は前作から音楽的レファレンスが必要だというMike Portnoyからの提案によってレコーディング中に作られている。この辺りの流れも"Testimony"を意識した流れになっている(1曲目の後にOvertureが来る)。ギターソロはNeal Morseの欧州ツアーメンバーのPaul Bielatowicz。ドラマティックな構成はTransAtlantic等にも当然ながら通じるプロギーな曲。殆ど切れ目なく続く本作は前奏部や後奏部も同様にスタジオにて"Testimony"のOvertureを下敷きにレコーディングされている("Jayda"、"The Truth will Set You Free"など)。こういったパートでは特にストリングス(Chris Carmichael)が曲の雰囲気を上手く作り上げている。そしてSpock's Beardを始動させたばかりの時を歌った"Time Changer"では当然Nick D'Virgilio、Dave Meros、Alan Morseという旧友を迎えてお得意のGentle Giantばりのコーラスを聴かせる。妖しい雰囲気を持つヴィオリン・ソロはEric Brenton。この頃、Eric Burdon(Animalsのヴォーカル)のバンドでツアーに明け暮れていて('99年まで)Spock's Beardとの両立の困難が見て取れる。また「家にいるならば、カミサンを教会に送っていくけど、そんな余裕はないんだ、行かなくちゃ」という歌詞も、自身への揶揄だろう。そして愛娘Jaydaの事を歌ったドラマティックなバラード"Jayda"へと進む。生まれつき心臓に穴があり何とか治して欲しい、と切に歌う。そしてロック・チューン"Nighttime Collectors"では欧州ツアー中にJaydaが完全に治癒していたという報告を受けるシーンが描かれている。ツアー中の喧騒などが上手く表現されているロック・ナンバー。こういうフィーリング重視のギターを聴くとNeal Morseのマルチ・タレントぶりが窺える。"Time has Come Today"、"Jesus' Blood"、"The Truth will Set You Free"で自身のキャリアや生き方を見つめ直す様子が歌われている。"Chance of a Lifetime"から物事が動き出す様子が読み取れる。"Jesus Bring Me Home"でツアーに疲れ、家にいたいと願うNeal Morseの様子から"Road Dog Blues"で「Metal Bladeが無視出来ないくらい魅力的なオファーをくれた」という歌詞からツアー生活(Eric Burdon Band)から抜け出せることを示唆している。Metal Bladeから出された最初のSpock's Beardのスタジオ作は"Day for Night"(98年に旧譜のリリース)だった。パワフルな強靭さを見せる"It's for You"はPart8の総括のような内容で、全てが一つの完結へと向かう。ギターソロは再びPaul Bielatowicz。"Crossing Over"でSpock's Beardを離れる様子が歌われアルバムは完結する。ボーナス・ディスクには"Absolute Beginners"と"Supernatural"(タイトルからてっきりカヴァーかと思ってました)、更にSteve Morse(g)が参加した25分以上もの大作"Seeds of Gold"を収録。特に"Supernatural"は本アルバム中随一のメロディーセンスが炸裂する名曲中の名曲。Neal Morse自身もJaydaを歌う際、苦悩があったようだが、ここまで自身を曝け出したアルバムも珍しいだろう。彼のキャリアを見てきた者にはグッとくる内容だと思う。名作です。
Momentum ('12)本来ならば12年初頭はTransatlanticのレコーディングの予定だったらしいが、メンバーのスケジュールが合わずに流れてしまった。完全にTransatlanticモードだったNeal Morseは、さて、どうしよう?となったと言う。その時点でタイトルトラック1曲と断片的なアイディアしかない状態でMike Portnoy(ds)が「1月に数日空くよ」という連絡に取り敢えずMike Portnoyを押さえると、曲がドンドンと出来上がっていったという。その勢い("Momentum")を表すように今作は生々しくドライヴ感に溢れた作品のように聴こえる。"Momentum"のギターソロはPaul Gilbert(g)が提供。全部の曲でギターソロを頼みたかったらしいが、Paul Gilbertのスケジュールが立て込んでいて1曲しかプレイする時間がなかったらしい。Randy George(b)と書いた"Thoughts Part 5"はNeal MorseがSpock's Beard時代から書いてきたカノンが印象的なGentle Giantタイプの曲("Beware of Darkness"と"V"に収録)。Part 3はAlan Morseと書いて、どうやらSpock's Beardの次の作品に収録されるようだ(Part 4はどこだろう?)。個人的なハイライトは"Freak"で、本作でMike Portnoyは初めてNeal Morseのアルバムで違うドラムセットを組み上げ、違うサウンドを提供している(今まではアルバムを通して同じキットで通していた)。Chris Carmichaelのストリングスが印象的。そして最後に30分を超える大作"World Without End"。"Losing Your Soul"でのソロは12年秋に行われるツアー・バンドの公開オーディションによって選ばれたAdson Sodré(g)が弾いている。"The Mystery"では同様に公開オーディションによって選ばれたBill Hubauer(clarinet、flute、g、key)が参加。Neal Morseの作品の多くは細部にわたって違うサウンドがあれこれと入っているものが多いが、本作はグっとストレートな作品。そのため、最後の長尺曲が冗長に感じてしまうきらいがあるが、セクションの所々に挿入されたインタープレイで緩急を付けている。勢いでこれだけの作品を仕上げてしまうのだから流石の一言。特別盤にはメイキングDVDが同梱されている。



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