Kaipa



Kaipa

Kaipa ('75)Ingemar Bergman(ds、vo)、Tomas Eriksson(b、vo)、Hans Lundin(key、lead vo)、Roine Stolt(g、vo)によるKaipaのデビュー盤。最初の6曲がHans Lundin作、残り2曲がRoine Stolt作となっている。Roine StoltがKaipaに加入したのが17才、このデビュー盤の時、19才であった。ジャケットアートワークもRoine Stoltの手によるもの。バンド名はWerner Von Heidenstamの"Svenskarna och deras hoedvingar"に出てくる石器時代の族長Ura Kaipaから取られた物。74年8月にストックホルムで野外コンサートでデビューしMarcus Music Studioでデモを5曲(内1曲は"Skogspromenad")を制作。スタジオオーナーのツテでDeccaと契約、レコードデビューに漕ぎ着ける。レコーディングには20曲近くの楽曲が用意されたようだが、その中でもシンフォニックなタイプの曲を11曲選ぶが、収録時間の関係上、最終的に8曲収められる。Musea盤CD(93年再発)ではこの3曲も収録しようとしたらしいが、マスターテープの劣化が酷く収録出来なかったとある。しかし05年にInsideOutからリマスター仕様で再発されたBoxセットではボーナストラックとして2曲"Fran det ena till det andra"と"Karavan"が収められている。残ったトラックは多分"Pa fard"(InsideOut盤デモ音源CDの方に収録)。Procol Harumを思わせるクラシカルなkeyサウンド。Chris Squireを思わせる硬質なベース音。Camelのような知的でジェントルなイメージが広がる。Pink Floydのようなスペーシーな一面も。ヴォーカルは全てスウェーデン語。
Inget Nytt Under Solen ('76)レコード会社から提示された写真の中から選ばれたNASAの月面車の写真をジャケットに使った2nd。アルバムタイトルは所属レーベルの社長の口癖だったらしい。意味は"Nothing New under the Sun"。5つのパートで構成された21分にも及ぶ大作"Skenet Bedrar"から始まる。Hans Lundin、Ingemar Bergman、Tomas Erikssonとヴォーカルを回していく。まるで新しいシンセ群の音をチェックするかのように様々な音が交叉していくドラマティックに仕立てられた曲。個人的にはインスト"Korstag"の世界観に引込まれる。ボーナストラックとしてMusea盤、InsideOut盤共にこのアルバムから選出された4曲"Awakening / Bitterness"(Uppvaknandet / Bitterheten)、"How Might I Say Out Clearly"(Omson sken)、"Gate of Day"(Dagens Port)、"Blow Hard All Tradewinds"(Inget nytt under solen)の英語バージョンを収録。ヴォーカルはTomas Ledinのバックバンドでベースを弾いていたLars Hoflundを起用するも、結局は所属レーベルから発売を断られ、お蔵入りとなってしまっていた。Musea盤には更に78年コペンハーゲンで収録された"Skenet Bedrar"のライブが入っているが、InsideOut盤に入っているライブ盤のバージョンとは別物のトラックのように聞こえる。Mats Lofgren(vo)がクレジットされていないのもさることながら、ギターフレーズ等所々で違ったものが聞ける。
Solo ('78)Hans Lundinがkeyに専念出来るようにMats Lofgren(元Rio Brazzaville)をリードヴォーカリストに迎える。また、Tomas Eriksson(b)が脱退。Roine Stoltの学校からの友人Mats Lindberg(当時18才)がベースを担当する。Roine Stoltの強い要望で今作で、バンドは初めてメロトロンを導入("Taijgan")。この曲のレコーディングを終わった直後に壊れてしまい、他の曲では使うことが出来なかった、という話もある。まるで、ジャケットの世界観をそのまま音にしたようなオープニングからアルバムは始まり、Brian Mayのような特徴的なギターサウンドが聞ける"Sen Repris"へと。圧巻はやはりロックミュージックの美味しい所取り満載の"Total Forvirring"だろうか?94年のCD化に際して、11曲中どういう訳か6曲のみリミックスが施されライブ3曲(内2曲は後にInsideOut盤のライブ盤にも収録される)をボーナストラックに足して発売される。尚、Roine Stoltはこのアルバムをもってして、Kaipaを脱退、ソロキャリアに進む。バンドは後任にMax Ahmann(元Exit)を据えて"Hander"(80年)、そして"Nattdjustid"(81年)を発表後Kaipaはその幕を閉じた。
Notes from the Past ('02)元々Hans Lundinがソロを製作中にRoine Stoltにギターを依頼、音を重ねた所から、「これ、Kaipaのサウンドだよ」ってことでKaipa名義が復活したらしい。その為、作詩、作曲は全てH.Lundin。特筆すべきは、英語詩に拘ったことだろうか。リズムセクションにThe Flower KingsよりJonas Reingold(b)とMats & MorganよりMorgan Ågren(ds)が選出され、ヴォーカリストにRitualのPatrick Lundströmが参加。ここに新生Kaipaが出来上がった。ダイナミズムに重きを置いて、荘厳な音世界を構築させる様は70年代の頃よりも焦点が定まっており、新世紀シンフォニック・ロックの代名詞的なアルバムを生み出した。タイトルトラックを冒頭と最後に分割させ、トータリティを狙った作りをしている。"In the Space of a Twinkle"にはHans Lundinの娘さんTove Thorn Lundinの朗読が入り、"A Road in My Mind"にはAleenaがゲストヴォーカリストとして参加。"Morganism"ではLennart Lind(trombone)、Lars Lindjo(sax)、Tage Rolander(trumpet)といった管隊が参加。多彩な曲が色々と用意されており、飽きさせないアルバムとなっている。メンバーの力量もそれぞれが安定したものがある為、安心してその音に身を置くことができる。
Keyholder ('03)如何せん、リズム隊がJonas ReingoldとMorgan Ågrenである。複雑になるな、というのが無理な注文って訳で。テクニカル・シンフォとして生まれ変わってからの新生Kaipa、2nd。Aleenaがレギュラーメンバーとしてクレジットされている以外は前作と変わらないラインナップ。オープニングから"madman of this circus"とか"cosmic clown"という言葉が並ぶのを聞いて明らかにRoine Stoltが書いた歌詞なんだな、とすぐに分かってしまう。殆どの楽曲で曲はHans Lundin、歌詞はRoine StoltとHans Lundinという役割分担が明確にされている。プロデュースもこの2人のチームによるもの。前作同様、重厚なシンフォに少し70年代に持っていた叙情性が戻ってきたようにも聞こえる。Aleenaの声は、特に"Across the Big Uncertain"に聞かれるように、時に舌足らずで幼さを出すので好き嫌いが分かれるかもしれない(私はNGです…)。
Mindrevolutions ('05)Algarnas TradgardのメンバーでもあるJan Ternaldの前作から続く連作のようなジャケットを持つ新生Kaipaの3rd。やはり、目玉は25分もの長さを持つ大作の表題曲だろうか。スパニッシュギターなフレーズも入れたりと、色々な表情を見せる佳曲。静の部分に力を注いだ構成は全く飽きさせない。ただ、アルバム全体がそうなのだが、どうやら、ミックスが少し以前よりもオトナシイ感じがする。サウンドの起伏が浅く、ちょっと平坦気味。ある意味、その分、聞き易さもあるかもしれないが…(この辺りは好みでしょうね)。Patrick Lundströmの声も前2作で聞かせたような、丸っきりRitualでもなく、少しシャガレた声を多用し、差別化を図っているようだ。このアルバムをリリースした後、音楽性の相違からRoine StoltはKaipaから離脱を表明。それに対し、Hans Lundinも「当てはある」、と。ファンは黙って見守ることとなった。
Angling Feelings ('07)Roine Stoltの離脱に伴い現在へヴィメタルバンドScar Symmetryで活躍するPer Nilssonが迎えられる。Hans LundinとはHagenのアルバムで共演経験を持つ。また、Frank Zappaのカバーバンドをやっていた事があり、新生Kaipaに迎えられるには十分な資質を持ったギタリストを迎えたことになるだろう。冒頭の表題曲でもある"Angling Feelings"からHans Lundinは総力戦で臨む。Patrik LundströmとAleena Gibsonの両ヴォーカリストの力強いヴォーカルにテクニカルな演奏陣のサウンドは強力。Hans Lundinもこのアルバムの1曲目がどれだけ重要な曲なのか良く理解している、という事だろう。全体的に新生Kaipaになってからのサウンドを踏襲しており、新ギタリストを迎えたからと言って、サウンドにそんなに違和感はないが…プレイスタイルはRoine Stoltのそれとは全く別物で非常にテクニカルなフレーズをこれでもか、と叩き込んでくる様は圧巻。それに引っ張られるように特にMorgan Ågrenのアグレッシブでフリーキーなドラミングが冴え渡る。Aleena Gibsonの舌足らずなヴォーカルも多少は改善され、ヴォーカルに説得力が増して聴こえる。これは新生Kaipaの第2章に相応しいスタートだろう。今作でも5曲でFredrik Lindqvistがリコーダーとウィッスルで参加。
In the Wake of Evolution ('10)21世紀Kaipaの5枚目。前作と同じラインナップで製作されている。Kaipaらしい人懐こい旋律にJonas Reingold(b)とMorgan Ågrenによるテクニカルなリズム隊("Electric Power Water Noes"の掛け合いは一つの聴き所だろう)との融合がここにきてしっかりと結実した印象を受ける。更にAleena GibsonのKaipaでのヴォーカルが非常に成熟してきたので、Patrik Lundströmとのツイン・ヴォーカルに躍動感が増している。Per Nilssonのギターは時に何々風というサウンドも出てくるが、前作より更にKaipaに合ったサウンドを提供している。ほぼ準メンバーと化しているゲストのFredrik Lindqvistが5曲でリコーダーで参加。このサウンドがKaipaのトラディショナルでフォーキーなサウンドに貢献している。特にアコースティック・ギター、Tango SentimientoのElin Rubinsztein(violin)が奏でる"Note from the Past"に収められていた"Folkia's Final Decision"の続編(?)に位置する"Folkia's First Decision"が素晴らしい。また70's Kaipaを思わせるオープニングを持つ"Smoke from a Secret Source"と佳曲が並ぶ。名盤。
Vittjar ('12)ゲスト陣を含めて前作と同じラインナップで制作された6thアルバム。クレジットを見るとスケジュールのせいか各自が自身のスタジオでそれぞれのパートを録音しているが、それでもこれだけの完成度を誇るのはHans Lundin(key)の焦点がしっかりと定まっていたからだろう。初めてスウェーデン語のタイトル"Vittjar"を冠しているのも興味深い。"Vittjar"とはスウェーデン語特有の言い回しで漁師が網を引き上げて、網の中を覗き込んで餌を探す時の事を指すらしい。Hans Lundinはそこから自身の潜在意識を覗き込む、という風に転化させているらしい。そのタイトルを冠したナンバーもスウェーデン語で歌われたナンバー。Elin RubinszteinのヴァイオリンとMorgan Ågrenのドラムがスウェーデン・フォークの世界に引っ張っていく。本作のハイライトは正しく22分にも及ぶ長尺ナンバーの"Our Silent Ballroom Band"であろう。Aleena Gibsonの歌うイントロダクションからPatrick Lundströmが引き継ぎつつ、各自のプレイが一つ一つ融合していく様は圧巻。エンディングのPer Nilssonの伸びやかなギター・ソロで大団円を迎える。"Treasure-House"はレゲエ調のオープニングを持つ曲で、どこか飄々とした感じを受ける。実際Hans LundinはMorgan ÅgrenにStewart Copeland(The Policeのドラマー)みたいに叩いて欲しい、とリクエストを出したらしい。アルバムのオープニングとエンディングを飾る"First Distraction"と"Second Distraction"は同じ主題を持つインスト・ナンバー。本作でもHans Lundin本人がアートワークを手掛けており、タイトルからインスピレーションを受けたのは明白だが、前作との共通点も多いのも興味深い。まさにKaipaが到達した一つの頂点となる作品だろう。


San Michael's

San Michael's ('71)Hasn Lundin(organ、p、g、vo)、Tomas Eriksson(b、flute、vo)、Gunnar Westbergh(ds、perc.、vo)のトリオ編成。全編スウェーデン語の歌詞による。Nane Kvillsäter(ele.g)が"Nacken"、"Tredje Universum"に参加。Thomas "Rulle" Eriksson(flute)が"Brevet till Visby"でゲスト参加している。Hans Lundinのオルガンを中心にポップでアートロック系のサウンドが並ぶ。どちらかというと英国60's的なサウンドという印象を受けるので、71年という発表年を考えると少し古臭い感じを受けるかも。ポップなハーモニーに荘厳なオルガンは時に初期Uriah HeepやProcol Harumのような気品さえ漂わせている。"Tant"のジャジーなグルーヴはR&B的でもある。"Tjolle"は端正なピアノが聴く者を惹きつけるバラード調の美しい曲。"Brevet Till Visby"はゲストのThomas "Rulle" Erikssonのフルートが更に60's的な趣を持たせる。"Tredje Universum"は「第三の宇宙」というタイトルに相応しいスケールの大きいインスト曲。ポップなオルガン・ロックを聴きたい向きには必聴盤だろう。


Hans Lundin

Houses ('89)Hans Lundinの3rdソロ。当然ながら、全体をkeyサウンドで包みこんだインスト主体のアルバム。タイトル通り「家」をモチーフにしたアルバムという事なんでしょう(各曲にも"house"という単語が必ず入る)。"In the Red House"のみJohan Von FeilitzenとHans Lundinがvoを入れている。オープニングトラックの"Hasselbo"等に秀逸なメロディーが乗る曲もあるが時代を意識した曲やサウンドが大半を覆う為、今、聴くとちょっと…厳しい箇所も多い。"Two Girls in a Black House"ではRoine Stoltが客演。こちらもあまり特徴的なプレイとも言えず…。80年代的なプレイを耳にした事はないので、それなりに新鮮ではあるけど…。13分にも及ぶ"House of Pain and Confusion"ではOlof Aslund(sax)がゲスト参加。全11曲、51分程度の作品。マニア向けかな…?



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