Agents of Mercy





Agents of Mercy

"The Fading Ghosts of Twilight" ('09)Roine Stolt(g、key、b、vo)のソロ・プロジェクトにNad Sylvan(vo Unifaun)がヴォーカルを入れた事から、シンフォニック・ロック・プロジェクトへと昇華した作品。Biggo Zelfries(keys、vln)がThe Flower Kings印の強いキーボード・サウンドと時にハッとさせるヴァイオリンを担当。The Flower KingsからはJonas Reingoldが"Heroes & Beacons"と"Jesus on the Barricades"でベースを担当。特に後者のフレットレスの温かみのある音は特徴的。この曲でのZoltan Csörszのブラシ・ワークも必聴。ドラマーはZoltan Csörszの他The Flower Kingsとはツアーを一緒にしたことのあるPat Mastelotto(King Crimson)とSpock's Beardのツアー・ドラマーJimmy Keeganの3人で4曲ずつ担当している。クセ、というよりはアクの強いPhil Collinsf風のNad Sylvanのヴォーカルもシアトリカルな歌い方の為、初期The Flower Kingsのファンタジックな音楽性を継承する本作では意外と聴き易く合っている。プロダクション面ではしっかりと"The Sum of No Evil"の後継作で、ヴォーカルとバックのバランスが更に絶妙な感じに仕上がっているのも特徴だろう。"Wait for the Sun"の出だしのラップ・スティールが醸し出す良い意味での緩さ、初期The Flower Kingsを思わせる"A Different Sun"のイントロ、飛行機のSEから入る11分にも及ぶ"A Soldier's Tale"のホーン系のシンセの使い方のセンスの良さやBrian Mayバリのギター・オーケストレーションと多様なサウンドに彩られているアルバム。"A Soldier's Tale"は35年前、という出だしや"Yellow Devil"という言葉からヴェトナム戦争を指しているのが判る。"Paradox Hotel"に入っていてもおかしくない曲かもしれない。それに対して"Bomb inside Her Heart"は"Wall Street Voodoo"タイプにふんだんのオーケストレーションを施した感じで、装飾を取り払った状態が見え易い曲。そして、アルバムの最後を飾る"Mercy & Mercury"はProcol Harumタイプのオープニングで荘厳な感じを持つ。本作の特徴はその多様なサウンドだけでなく、その様々なサウンドの持つメロディーの良さ。正にメロディーの宝庫のようなアルバム。
Dramarama ('10)The Flower KingsがそうであったようにAgents of MercyもRoine Stolt(g、vo、 add.key)のソロ・プロジェクトからNad Sylvan(vo、add.key)とのパートナーシップからバンドへと発展した。メンバーはJonas Reingold(b)、Lalle Larsson(p、 organ、synths等)、Walle Wahlgren(ds、perc.)。Roine StoltがNad Sylvanのように歌いたい、というようにNad Sylvanのヴォーカルは声質こそ違えど、歌唱法が意外とRoine Stoltのそれに近い(特に"Peace United"あたりに顕著だろうか)。Genesisバリの寓話性を持たせた(歌詞内にも"Selling by the pound"というパートが出てくる)"The Duke of Sadness"に代表されるようにRoine Stoltらしいドラマティックで分厚いサウンドに覆われた曲が前半に並ぶ。Nad Sylvanがしっとりと歌い上げる"Journey"はRoine Stoltのギターが堪能出来るナンバー。Lalle Larssonのテクニカルなキーボード・ソロも一つの聴かせ所。"Mee Johnnie Walker"と"Cinnamon Tree"はNad Sylvanによる曲。前者はストリング・シンセのサウンドなどが印象的。Nad SylvanとRoine Stoltの共作曲"The Ballad of Mary Chilton"は17世紀アメリカはマサチューセッツに初めて上陸した英国人女性をモチーフにした曲。スティール・ギターのサウンドなど牧歌的なサウンドがフォーク・ロック的な佇まいを持つ。"Roger the Tailor"も同じく共作曲。ファンタジーな歌詞世界とカラフルなサウンドがマッチしている。"Conspiracy"はRoine Stoltの持つ世界観とサウンドがThe Flower Kingsを強く思わせる。Nad Sylvanによる"We have been Freed"は後半のYesを思わせるようなインタープレイが緊張感を与えてくれる。全体的にシンプルな曲も用意されており、スティール・ギターによるマッタリとしたサウンドが新機軸だろうか。
The Black Forest ('11)前作と同じラインナップで制作された3rd。個人的にはAgents of MercyにLalle Larssonのキーボードは合わないんじゃないか、と思っていたのだが、本作"The Black Forest"は、そのタイトルが示す通り、今までのAgents of Mercyの持つファンタジックでカラフルな音楽性からダークでクラシカルな方向性にシフトしたせいで、逆にばっちりとハマるところとなった。本作の軸はやはりエリザベス・バソリーにインスパイアされたという"Citadel"であろう。疾走感のあるRoine StoltのギターとヴォーカルにNad Sylvanのコーラスがシアトリカルに盛り上げていく。真ん中のキーボード・ソロとドラムの掛け合いは初期The Tangentを思わせるのはWalle Wahlgrenのドラムのせいだろう。オープニングの表題曲は、それこそLalle Larssonのソロ作"Seven Deadly Sins"のようなクラシカル風なオープニングから入り、ストーリーテラーNad Sylvanのシアトリカルなヴォーカルが冴える。チャーチオルガン風のキーボード・サウンドの多用も雰囲気を盛り上げる。"Quiet Little Town"と"Freak of Life"はNad Sylvan作。特に後者は移動サーカスの見世物小屋の世界を表したもの。これぞNad Sylvanというヴォーカル・パフォーマンスが聴ける。また"Elegy"のようなバラードもNad Sylvanが歌ってこそ成り立っている曲といえるだろう。最後の"Kingdom of Heaven"は11年1月になくなったRoine Stoltの父に捧げられた美しい曲。"No more fears, No more tears"というフレーズとRoine Stolt渾身のギタープレイが聴ける。全体的なサウンド・コンセプトがあり、それがメンバーの資質とがっちりと噛み合い出来上がった秀作。初期にあったような多彩さは後退したが、このメンバーでしか出ないサウンドを提示した作品として高く評価出来る。




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