Tomas Bodin

An Ordinary Night in My Ordinary Life ('96) Tomas Bodinの全編インストの1st。Hasse Bruniusson(per)、Jaime Salazar(ds)にMichael Stolt(b)が1曲、Roine Stolt(g、b)が2曲、Owe Eriksson(b)が4曲で参加。正に裏The Flower Kings的なアルバムとなった。key奏者のアルバムなので、当然keyが全面に出ているのだが、バンドアンサンブルを重視した作りになっていて、非常に好感が持てる。key奏者のソロにありがちな垂れ流すようなタイプでなく、音作り一つとっても作り込まれた印象が強い。"The Ballerina from Far Beyond"でのRoine Stoltのプレイには彼の出自となるルーツを聞く思いがする。アルバム最後には16分に及ぶ"Samuel - the Knight"、"Adam - the Prophet"、"Miranda - the Queen"からなる"Three Stories"という3編からなる楽曲が収められている。ご家族の名前みたいですね…。Tomas Bodinのキャラクターがよく出た上質なシンフォニックアルバム。Owe ErikssonってSolid BlueのSoren Cederbergと一緒にPandoraをやっていた人かな?
Pinup Guru ('02) The Flower KingsからJonas Reingold(b)、Zoltan Csörsz(ds)が参加したキーボードトリオによる2nd。プログレキーボーダーなら一度はやりたい編成だろう。前作のバンド形態よりも編成からして、更にTomas Bodinの演奏に焦点を当てた意欲作であり、ある意味、非常にストレートに自身の音楽性を反映させた作品と思える。オープニングのチャーチオルガンの荘厳な音から厳粛な雰囲気が漂い、Keith Emersonばりの攻撃性とTomas Bodinらしいメロディーと音が同居する"What's Going On"へ。X-Fileっぽい音が中間部で出てきますよね。レイダウンしたサウンドの"Me & Liz"を挟んで、ラジオジャングルが流れたかと思うと正にタイトル通りヒートアップされたサウンドの"Harlem Heat"が始まる。Tomas Bodinのライナーには私立探偵に捧げるつもりで作り始めたってあるけど?どういう事なんでしょうかね?まぁ、確かに探偵物のドラマのBGMっぽくも聞こえますが。"My Beautiful Neighbour"と"New in the 'Hood"という民族物から、Tomas Bodinの好きなネタ、ヴァンパイア物の"Blood"、ロシアのバレリーナ物(Nievski Prospectエリアに通称Blood Churchと呼ばれる教会があったと思ったけど?)の"The Ballerina is not Getting Closer"。そしてディスカバリーチャンネルに触発されたという"The Last Eagle"からエンディングの"The Final Swig"で締めくくられる構成。Tomas Bodinは音の映像作家と呼べるんじゃないかな?
Sonic Boulevard ('03) Tomas Bodinの3rd。The Flower KingsからはJonas Reingold(b)、Zoltan Csörsz(ds)、Hasse Bruniusson(perc)、Ulf Wallander(sax 8)、Roine Stolt(g 1、8)が参加。更にAnders Jansson(vo)、Jocke JJ Marsh(g H.Frobergの盟友でありSpellboundのg。現在はGlenn Hughesのパートナー)、Jonas Knutsson(sax 10 リーダーアルバムやMats&Morganとの共演等多数有り)、N'Nogo(Lars) Bjurhall(Scat 5)となっている。本来このアルバムは低予算でアンビエント風のアルバムをネットを通して発売する予定だったらしいが、Roine Stoltの助言によりレギュラーリリースに変更。きちんとプロダクションを施してレーベルと話合いの末、発売へと相成った。このアルバムは基本的にインストなのだが、全編を通してスキャットボーカルが入っている。歌詞がない上に曲の雰囲気に合わせて声を被せるのは至難の業だと思えるのだが、Anders Janssonが見事に演じきっている。殆どの曲でギターを弾いているJJ Marshのプレイも注目。"Walkabout"ではTomas BodinのMade in SwedenのGeorg "Jojje" Wadenius風のスキャットギターソロというリクエストにも巧く応えている。"The Horses from Zaad"では再びX-File風のキーボードレイヤーが聞ける。ある意味、このアルバムがあったからこそ人脈的にも次作の充実があったと思う。
I Am ('05) Tomas Bodinソロ作で初の歌詞付きアルバムは、コンセプト作となった。Vo陣には前作から引続き起用されたAnders JanssonにPernilla BodinとHelen Schonning。ギターのJJ MarshにJonas Reingoldも前作から継続して参加。更に今作でMarcus Liliequistがドラマーとして参加(後にRoine Stoltのソロへの参加を経てTFK本体に合流)。大作3曲はそれぞれ"I"、"A"、"M"と題され、一人の人間の成長や内面への旅を描いた作品となった。一人の人間が生まれた直後に日々の支払いに追われる様は、残酷でもありペーソスも感じられるが、それだけリアリティも持つし、何よりもTomas Bodin自身を反映させているところに共感も持てる。一般的にコンセプト作では歌詞と曲とのマッチングが中々折り合いが付いていない作品も多い中、今作では歌詞が曲の中に上手く溶け込み、変に突出した感じがしないこと。それは前作で言葉なきボーカルメロディーを歌いきったAnders Janssonの力量もあるだろう。特に"Jesus Christ Superstar"や"The Wall"からインスパイアされたという本作は70年代的な香りと現代的な音作りというTomas Bodinの得意分野でもある。また、Deep Purple等のハードロック的側面も十分堪能出来る作品となっていて、飽きが来ない作風は流石である。所々"!"と来るメロディーもファンには楽しめるだろう。Tomas Bodinの流麗なプレイ、音作りのセンスが遺憾なく発揮された秀作。
Cinematograaf ('08) ソロ名義としては5枚目にあたる本作。プログレッシブ・ロック界隈のキーボード・プレイヤーがシンセ・センターのアルバムを作るのは常套とされてきたが、Tomas Bodinは5枚目にして、そういった趣向のアルバムを自身のインディー・レーベルを通して出してきた。"An Ocean in Between"(13:50)、"A Spanish Ballerina in Love"(19:32)、"Six Six Six"(18:34)の3曲。クラシカルな旋律を軸にTomas Bodinの受けたであろう影響を素直に表現したもののように聴こえる。ゆったりとした流れの中に、壮大なオーケストレーションが施されていたり、工夫が見られる。2曲目の"A Spanish Ballerina in Love"の中にもホルストの火星っぽい勇壮なセクションが挿入されている。最後の"Six Six Six"はデモ段階で"The Return of Damien"と題されていた。曲名から判るように映画「オーメン」からインスパイアーされたものなのだろう。Tomas Bodinはヴァンパイアー・ネタやXファイルなど、ホラーやミステリー的なものが好きそう。色々な表情を見せるアルバムである。

 

Eggs & Dogs

You Are ('09) Tomas Bodinのソロ作"I Am"の続編である本作はTomas Bodinが新しく組閣したEggs & Dogsのデビューアルバムとなった。Eggs & DogsはThe Flower Kingsのオリジナル・ベーシストでRoine Stoltの弟Michael Stolt(lead vo、b)が参加。Marcus Lilijequist(ds)、Jacke JJ Marsh(g)とお馴染みのメンバーで構成されている。Michael Stoltのブルージーなヴォーカルを中心に置いており、本作がTomas Bodinのソロ作とは明確に違うことを主張している。時にBeatles的メロディーやストリング、Queen的ハーモニーが味付け程度に顔を出す。曲間にラジオ局のSEや小劇を入れたりしてTomas Bodinらしいシアトリカルな作りがなされている。特に"Private Skies"などは顕著であろう。"Food"でのPeter Lindbergのペダル・スティール等も印象的。本作の歌詞は摂食障害を扱った"Poor Lucille"やそのものズバリの"Food"、DVを扱った"Dad is Coming Home"(Jocke JJ Marshのギター・ソロと裏で鳴っているバッキングが良い)、ハリウッドを通して夢への憧憬から没落を描いた"Silicon Bimbo Run"ではThe Flower Kingsの"There is More to This World"の一節が使われている。ある意味、身近な暗部への題材を扱いながら、Tomas Bodinらしい明るいメロディーとのコントラストが非常に「らしい」。ジャケットの版画絵も「違う」という印象を持たせており○。

 

Swedish Family

Vintage Prog - the Best of SF ('04) 70年代スウェーデン国内外で活躍したBo Dean(Hammond organ)率いるSwedish Familyのベスト盤がTomas Bodinの自主レーベルHelicon Houseから発売された。Swedish Familyはライブ盤を含む10枚を残しており、このベストではバランス良く各アルバムからチョイスされている。最後のボーナストラック2曲の内、1曲"Always Grumpy"はオリジナルテープが破壊されており、The Flower Kingsが再演したものが収められている(録音時期は不明)。メンバーはBo Deanの他Veke Berg(b)、Algot Davi(Accordion、flute、vibra)、Redar Gitsdorf(g)、Inge Naning(Rhodes Piano、minimoog)、Britt Marie(perc)、Hadde Wattnat(ds)、Alf Willberg(sax)というラインナップ。"From the Foot"は69年のライブ盤"From Success in Moscow"から、というから驚きだ。この時期既に、鉄のカーテンをくぐったロックバンドがいたとは!また最後に収められている"Brunos Erotica"は"Hungry in Hangary"という79年に発表されたラスト作であるライブ盤。東欧を主体に人気があった事を裏付ける。"The Last Goodbye"は74年に制作されたシングル"Making Kids"のB面曲という激レア曲。アルバムタイトル等から見るとある種の政治的/反体制的なメッセージを含ませていた事もよく判る。但し曲は全てインスト。RIOの走りか???音楽性はトラッド/フォーク(北欧のみならず)やジャズ等の影響もある雑多でサイケ調の曲もある。"The Flu"等は時にKaipaを思わせる部分も。正に"Vintage Prog"の名に相応しい楽曲が並ぶ。このベスト盤の制作にあたり、Swedish Familyの元メンバーは再結成を視野に入れているらしいが、メンバーの健康状態等に問題もある為、中々上手くは行ってはいないらしい???コンセプトはトボケているが、音楽は秀逸なので、The Flower Kingsファンは要チェックかもしれない。アートワークはお馴染みEd Unitsky。


 

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