Theo Travis / Cipher



Theo Travis

Marshall Travis Wood "Bodywork" ('98)Soft Machine等で有名なJohn Marshall(ds)、Gong等での活動歴があるTheo Travis(sax、flute)にMark Wood(g)というトリオによる演奏。作曲、プロデュース共にこのトリオ名義となっている。細かく手数の多いJohn Marshallのドラミング、サウンドスケープを主体に背景を付けていくMark WoodのギターにTheo Travisのブローが被さるというモダンジャズタイプの演奏が聴ける。陰鬱で攻撃的なアルバムだ。制作に2日間だけかけられており、即興的に練り上げられた感がある。全13曲、小1時間のアルバム。
"Heart of the Sun" ('01)北欧ジャズロックの大名盤Miles Daviesの"Aura"(何百回でも言ってやる)の作曲者Palle Mikkelborg(trumpet、flugelhorn)を(8曲中4曲にて)ゲストに迎えたソロ作品。その他にもTheo Travisと付き合いの長いDavid Gordon(p)、Stefan Weeke(b)、Bjorn Lucker(ds)という独リズム隊コンビとAndy Hamill(b ソロを含むセッション多数)とMarc Parnell(ds Jack Parnellの息子)というリズム隊コンビを使い分けているのも特徴だろう。また、GongのDaevid Allen(g)、Mark Wood(g)、Stewart Curtis(クレズマーを中心にプレイするClarinet奏者)が参加。基本路線はストレートなコンテンポラリージャズ。仕掛けも多く、サウンドも引き締まった感じがあるので、味のある作品となっている。因に共同プロデュースにPorcupine TreeのSteve Wilsonの名がクレジットされている。
"Slow Life" ('03)ジャケット・イメージを全く裏切ることのないTheo Travisのアルト・フルートのみで製作されたアルバム。時に尺八のように響くその音はジャケットの写真のように寒空の中の灰色の世界を思わせるが、ECMや北欧のようにキーンとした切り裂くような響きは持っていない。むしろ英国らしい湿り気を感じるのは先入観からだろうか?The Travis System of Ambitronicsというのを使用して、ループを作成。膨らみのある音を背景に据えている。Theo Travisという人柄を知っているせいか、どこかサウンドの一つ一つにその優しさが滲み出ているように感じる。"Love is not Enough"などはそのタイトルが非常に意味深にも思える、まるで禅の世界を音にしたかのような曲。"Mellotromatic"と最後の"Who Stopped You"は10分を超える大作(?)。一つ一つのサウンドに耳を傾けると非常に味わい深い作品、と言える。
Steve Lawson Theo Travis "For the Love of Open Spaces" ('03)数え切れないほどのセッションを重ねてきたSteve LawsonのベースとTheo Travisのアルト・フルート、ソプラノ・サックス、そして両者のループのみで構成された即興音楽。6曲全て、その場での即興で、ファーストテイクを使用している。編集もなされているようだが、切ったり、フェードアウトといった類いのみで、オーヴァーダブやスタジオトリックは一切ナシ、と明記してある。つまり、スタジオ・ライブ。機材もシンセやミディ・トリガーといった類いは一切使用していないとのこと。アルバムはIan Andersonのようなブローから幕を明け、Robert Frippのようなサウンドスケープが優しく音を構築していき、硬質なベースサウンドに心を奪われる。全6曲。約1時間ぐらいの作品。
"Double Talk" ('07)Theo Traivs(sax、flute、clarinet、loop)がMike Outram(el.g)、Pete Whittaker(Hammond organ)、Roy Dodds(ds)と組んだリーダーアルバム。オープニングナンバーの"Ascending"はProcol Harum直系のクラシカルで端正なオルガンサウンドにTheo Travisの管が乗るもの。ギターは英国70's特有のブルージーな泣き。続く16分ある"Oblivionville"はno-man辺りを彷彿させるイントロからTheo Travisの出自をしっかりと打ち出したジャズサイドを品の良いブローで聴かせた後は、これでもか、という程の泣きのギターが被さる。そこからRobert Frippのサウンドスケープ・セクションにTheo Travisのフルートとテナーが乗る。どこかMel Collinsのブローを思い起す。"The Relegation of Pluto"はオルガンを中心に即興の如く応酬が堪能出来るナンバー。この曲の頭はちょっとCrimsonっぽいメロディーをTheo Travisが吹く場面も。"The Endless Search"はRobert FrippのサウンドスケープとTheo Travisのデュオ。後期Jade WarriorやCipherの3rdで聴かせた東洋嗜好が窺える、静謐なナンバー。そして"Pallendream"はMiles Davisの大傑作"Aura"の作曲者として知られるPalle Mikkelborgに捧げられたナンバー。Theo Travis自身も共演経験がある。ここでTheoが吹くWah Wah Saxは正にPelle Mikkelborgのサウンドそのもの。次は初期Pink Floydの名曲"See Emily Play"。サイケデリックなジャズロック。Theo Travisはソプラノでまとめている。端正なサウンドがTheo Travisらしいと言えば、らしい。"And So It Seemed"のオープングサウンドのギターはちょっとJimi Hendrixを思い起させる。そしてTheo Travisのテナーがリードするナンバー。中間のギターソロは聴き物。"Portobello 67"はタイトル通りのちょっとノスタルジックなナンバー。67年、ポートベローではこんな音が出ていたんだろうなぁ、と思わせるナンバー。ビートルなメロディーが心地よい。あちこちにブリティッシュらしさを塗した秀逸な作品。
Travis & Fripp "Thread" ('08)Robert Fripp(g)とTheo Travis(flute、sax)による即興を纏めたもの。Fripp & Enoの世界観にTheo Travisの管が乗っている感じともJade Warrior風の東洋的な世界観にRobert Frippのアンビエンスが敷かれている、という感じにも取れる。即興とはいえ、この組み合わせならではの静を主体とした丁寧な音の紡ぎ合わせが絶妙。優しさの中に儚さにも似た音の連なりを感じる。全9曲、64分もの作品となっている。編集、トリートメント、ミックスにPorcupine TreeのSteven Wilsonの名前もクレジットされている。プロデュースがTheo Travis、というのも少し意外だった。


Cipher

"One who Whispers" ('02)サウンド・デザイナーDave StuartとTheo Travis(flute、sax)のプロジェクトの1st。ゲストにGongのDaevid Allen(g)、Richard Barbieri(key 現Porcupine Tree)が参加。広がりのある静謐で品のあるサウンドスケープに、まるで傷をつけないように、そっと優しくTheo Travisのブローが被さっていく。その音はどこかECM的ではあるが、あそこまで大地を感じさせるものではなく、どこかメカニカルというか人工的な加工によって造り上げられた感のある音だ。共同プロデュースにSteve Wilsonが関わっている。
"No Ordinary Man" ('03)Dave Stuart(fretless bass、loops)とTheo Travis(sax、flute、p、key)によるCipherのダークアンビエントな2nd。プロデュースはバンド自身。前作に引き続きRichard Barbieri(key)が参加。Steve Wilson(g、treatments)もプレイヤーとして参加。Rabbi Gaddy Zerbibが詠唱のようなヴォーカルを提供する"Desert Song"のみTheo Travisによる作曲。他の楽曲は全てDave Stuartとの共作。担当楽器を見ると、どうやら、今作ではTheo Travisがサウンドスケープを作り上げた感がある。そこに情感たっぷりの管が流れ込み、Dave Stuartのフレットレスが寄り添うように震える。そんな風にも聞こえる。
"Elemental Forces" ('06)Theo TravisとDave Sturtによるユニットの3作目。今作ではパーカッションにSteve Hubbackを迎え、全体的によりオーガニックなサウンドになっている。どこまでも澄み切ったような広がりのあるサウンドスケープにTheo Travisの侘び寂びをも感じさせる東洋的なフレーズに影響を受けた管が鳴る。それは"Shiki"と題された曲からも明らかであろう。尺八を思わせる管が鳴ったり、お経を読むときに鳴らす鐘の音のようなパーカッションが出てくる。パーカッション類は全てSteve Hubbackのお手製のものを使用している。作曲はSteve Hubbackを含めた3人による。このアルバムでCipherのサウンドは明らかに有機的になり説得力が増しただろう。静謐さの中に人の温かさを感じさせるアルバムだ。


Soft Machine Legacy

"Steam" ('07)急逝したElton Deanの後任として白羽の矢が立ったTheo Travisが参加した2nd。ある意味、非常に明快でメロディアスなフレーズを心がけているように聴こえる。また作曲面でも大きく関わりタイトル・トラックとも取れる"The Steamer"や"The Last Day"、最後の"Anything to Anywhere"はTheo Travisの手によるもの。その他にも正にアルバムのモチーフとなったであろうサウンドを持つ"The Big Man"(ベタベタなサウンドなだけに判りやすくて良い)の他、"So English"、"Dave Acto"はメンバー全員の共作。更にSoft Machineの"Six"からMike Ratledgeの"Chloe & the Pirates"を再録。この叙情的なナンバーでSoft Machine Legacyのサウンドの行きたい所が判るような気がする。John Etheridge作のBill Frisellにも通じる世界観を持つ"In the Back Room"は少し意外。後にこのメンバーで来日も果たす。


Others

Goldbug "The Seven Dreams" ('10)Burnt FriedmanやJaki Liebzeit等と活動したTim Motzer(g、key、p、laptop)が主催する1kレコーディングスから発表された密度の濃いジャズ・ロック・アルバム。メンバーはBase3等にいたBarry Meehan(b、p、voice)、Adrian Belew Power TrioのEric Slick(ds、perc.、voice)にTheo Travis(sax、flute、ambitronics)という布陣。タイトル通りアルバムは7曲から構成されている。前半はTheo Travisはambitronicsを使ったノイズを即興をベースにしたと思われるテンションの高い楽曲の上に被せた感じの曲が多い。スペーシーとも違う変わった感じのノイズがテンションの高い楽曲を崩す役割をしているように聴こえる。後半サックスやフルートが入ると一気にTheo Travis特有の幽玄さが増す。特に"Elevation"での世界観はTheo Travisならでは。またアルバム最後を飾る"Persistence of a Memory"ではSEの効果もあり、オーガニックな感じがする曲。


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