The Flower Kings

A Small World of the Flower Kings
The Flower Kings

スウェーデン出身のプログレ・バンド。スウェーデンという土地柄以前の問題として、活動の仕方そのものがスウェーデンのみならず、音楽シーンそのものに及ぼす影響が波のように広がっていく。関連バンドは基本的にバンド・メンバーが関わってきたグループと更に(あまりにも面白いので)その関連バンドのメンバーを中心に構成してみた。

"The Flower Kings"('94)Roine Stolt復活の狼煙を上げたRoine Stolt名義による作品。全てがここから始まった。Hans Fröberg(vo;ex.Spellbound)、Ulf Wallander(sax)、エンジニアを担当したDexter Frank Jr.(key)、Don Azzaro(b、Moog Taurus;Roine Stoltの変名)、Hasse Bruniusson(ds、perc;ex.Samla Mammas Manna)、Jaime Salazar(ds、per;Midnight Sun、Bad Habbits等)の参加を得て作成された。音楽的、思想的、後の全てのコンセプトを司る表題曲に始まり、Roine Stolt流泣きのギター全開のインスト3曲目やECMぽさを仄かに匂わせる(saxのせい?)インスト5曲目と進み、ELPの如く雄壮なイントロに導かれて始まる6曲目から、20分にも及ぶ6つのセクションからなる大曲"Humanizzimo"でアイデンティティを表明する。全てがここから始まった名作である。
"Back in the World of Adventures"('95)The Flower Kings名義の1st。Tomas Bodin(key)、弟のMichael Stolt(b)に加え前作から引続きHasse Bruniusson(perc.)、Jaime Salazar(ds)が参加。Ulf Wallanderは3曲でゲスト参加という形になった。Tomas Bodin加入のお陰で多彩なキーボードサウンドは瑞々しさを持ち、The Flower Kingsの楽曲にカラフルな色を添え、ここにThe Flower Kingsサウンドの骨格が出来上がったと見て良いだろう。最初と最後に13分もの楽曲でアルバムを挟む構成を持つ。冒頭の"Welcome Back to the World of Adventures"というコーラスは正にリスナーだけでなくバンド自身と互いに「お帰り」、「ただいま」と言ってるような感動を覚える。ダンサンブルな"My Cosmic Lover"(キーボードのインドっぽい香りが良いですね)等も含み裾野を広げる事を惜しまない作風が楽しい。
"Retropolis"('96)前作と固定メンバーにHasse Fröbergが2曲で復帰。ライナーにRoine StoltがRetropolisを訪ねた一日の様子が描かれており、The Flower Kings初のトータルコンセプトアルバムと見て良いと思う。全体的にTomas Bodinも馴染んだのか、様々な音色、サウンドを使ってアルバムに華を添えている。オープニングのピンポン玉の跳ねる音に"Rhythm of Life"という声が被さる。30秒程度のオープニングから緊張感溢れる表題曲へと流れる。まるで、Retropolisに足を踏み入れたような錯覚が起こる。お得意のYes風コーラスを持つ"There is More to This World"、1分にも満たない"Romancing the City"を挟んで、Ulf Wallanderのサックスが活躍する"The Melting Pot"(インスト)、The Flower Kingsにしては毛色の変わった歌物"The Silent Sorrow"(古いロックンロールソングみたい)やAdrian Belewばりに吠えるギターが聴ける"The Judas Kiss"。そして、最後の"The Road Back Home"で帰路に就く構成となっている。聴き所満載のアルバムである。
"Stardust We Are"('97)The Flower Kings初の二枚組、トータルランニングタイムは約130分。ハードロック、サイケデリック、ジャズ、フォーク等、音楽語彙を更に推し進めた意欲作。メンバーは今作からHasse Fröbergが正式にメンバーとしてクレジットされており、ゲストにお馴染みUlf Wallander(sax)に元Ensemble Nimbus、Orient SqueezersのHakan Almqkvist(sitar、tabla)が参加。注目すべきは今作からTomas Bodinがソングライターとして楽曲に貢献し、共同プロデュースを行っていることだろう。全20曲中、Tomas Bodin作の楽曲が3曲(内2曲が短い小曲)、Roine Stoltとの供作が2曲ある。Disc1は比較的歌物を中心に添えての構成。冒頭ハードな"In the Eyes of the World"やThe Flower Kingsの叙情性を押出した"Church of Your Heart"等、押さえ所はしっかりと押さえている。また、ドラマティックなインスト大作"Circus Brimstone"でのTomas Bodin、Jaime Salazarのプレイには目を見張るものがある。Disc2ではオープニング"Pipes of Peace"のチャーチオルガンのサウンドやHakan Almqkvistが東洋的なサウンドを提供する"Don of the Universe"、Tomas Bodinのピアノが美しい"If28"でも"Stardust We Are"のフレーズが飛出しDisc2全体が "Stardust We Are"組曲と解釈する事も可能だろう。Pink Floyd風味のかかった叙情的ナンバー"The End of Innocence"、楽しい曲調に反して辛辣な歌詞が覗ける"The Merrygoround"と前半も様々な曲で楽しませてくれる。そして、圧巻は3つのパートからなる25分にも及ぶ"Stardust We Are"。
"Scanning the Greenhouse"('98)The Flower Kings初のベスト盤。各々のアルバムから選曲されているがノはっきり言って、どのアルバムも音楽的情報量が多すぎるので、こういう形でバンドを俯瞰するのは無理があるだろう。入門編としても適切かどうかは?である。作り手側も苦労したことだろう。このベストの目玉は再録バージョン2曲とGenesisのカバー"Cinema Show"が含まれている。Roine Stoltのソロ、"The Flower Kings"より表題曲と"Stardust We Are"のPt.3が選ばれている。"The Flower King"の方はオリジナルよりも若干スローで、Tomas Bodinを加えたバージョン。ピアノの音の運指(所謂手癖ってやつでしょうか)や奇妙な音を入れたりするのは彼独特の音世界であり、正にThe Flower Kingの音に仕上がっている。さて問題は"Stardust We Are Pt.3"である。前作からの再録ではあるが、Pt.3だけをピックアップしただけあって、Pt.1からの流れのような物から解放された感がある。ボーカルをさらに前面に押し出し、シンフォなパートはよりシンフォに、インスト等抑える所は更に抑え、よりメリハリの効いたバージョンに仕上がっている。"Cinema Show"はオマケです。
"Edition Limitee Quebec 1998"('98)カナダのレーベル、Ipso Actoによる限定編集盤(700枚ってありますね)。殆どが未発表曲等のレア音源で構成されている。"Kite"と"Buffalo Man"はコンピのみに収録された事がある曲(前者は"The Alien Killer Orange"後者は"Unprogged"。'96年とあるから、Retropolisセッションからの曲と思われる)、"Piece of Nizzimo"と"Duke of Nuke"は'96年4月5日にウプサラで行われたライブからの音源。"The Flower Kings"はベストに入っていた物と同じ音源。そして、"Garden of Dreams, pt1"と題されたデモ音源と計6曲。Roine Stoltによるフランス語で書かれたライナーが付いているのだが…(判らねーよー)。特に注目すべきはライブ音源だろう。タイトルを見て判るように"Humanizzimo"からのインプロヴィゼーションと別のインプロヴィゼーションの2曲。前者はギターソロから始まり、各自プレイの応酬に入る。Hasse Bruniusson先生張り切るっ(いつもだけど)。"Duke of Nuke"は声(?)のサンプリングを使ったエレクトリカ/アンビエントっぽい作品。そして、"Garden of Dream Pt.1"は、"Garden of Dream"組曲の1-3のプロデュースされる前の音源。
"Flowerpower A Journey into the Hidden Corners of Your Mind"('99)前作同様、同じメンバーで、さらに2枚組150分ものThe Flower Kingsワールドをぶつけてきた。今作では、Jaime Salazar(一瞬にして終わるドラムソロ"IKEA by Night"と"Astral Dog")Hasse Fröberg("Magic Pie")からのインプットもあり、更にバンドとしての成熟度が増したことが窺われる。尚、日本盤にはTomas Bodinによるボーナストラック3曲がDisc1に、1曲Disc2の終わりにそれぞれ収められている。アルバムはメインソングライターであるRoine StoltとTomas Bodinによる入魂の大作、18のセクションから成る1時間近い "Garden of Dreams"組曲で始まる。10の歌物、8つのインストセクションから構成されており、正に万華鏡のように様々な表情を見せてくれる芳醇な大作である。特筆すべきは"Garden of Dreams"と題された組曲の中心となる歌物セクションでのHasse Frobergの歌唱力である。また、Tomas Bodinの分身とでも呼べる"Mr.Hope"シリーズがこの組曲から始まるのも興味深い。更に驚かされるのがDisc2の充実度である。歌物はある意味どの曲もキャッチ_で、純粋にロックソングの枠内で色々な要素を取り入れた佳曲揃いである。"Garden of Dream"組曲がTomas Bodinが重要な鍵を握っているのに対して、Disc2はRoine Stoltの独壇場と言えるだろう。短期間の内に前作を軽々と超えてしまった傑作。
"Space Revolver"('00)ベースがMichael StoltからJonas Reingold(Midnight Sun)にチェンジ。日本盤のみボーナストラック5曲を収録したディスク付き。TransAtlanticを通過した為か、メンバーチェンジの為か、全体的にハードな演奏でまとめられている感じがする。今回は"I am the Sun"をPt.1とPt.2に分けてアルバムの頭と最後に持って来て、その他の曲を挟む形を取っているのが興味深い。"Stupid Girl"の最後のジャムセクションを拡大させたかのようなTomas Bodin作の"Rumble Fish Twist"(Jonas Reingoldのヘビーなベースプレイも聴き物)や、Hasse Froberg作の"You don't Know what You've Got"、そして、珠玉のバラード"A King's Prayer"と名曲揃いの名盤。最後に"I am the Sun Pt.2"から"Pt.1"へと流れて行くと、一つの旅の終演が近付くことを実感する。ボーナスディスクにはJonas Reingold作のベースとピアノ主体の"The Meadow"、"A Good Heart"と呼ばれる曲のデモ、"Dream on Dreamer"の別バージョン(ボーカルがTomas Bodin)、Tomas Bodinのキーボードが豊かで艶のある音色を聴かせる"Venus Flytrap"に最後は"A King's Prayer"のインスト・バージョン"Last Exit"(少しばかりムード音楽っぽいけどねぇ。そこは御愛嬌?)
"The Rainmaker"('01)前回と同じメンバーで制作されているが、既にJaime Salazarの脱退が決まっており、欧州限定盤ボーナスディスクの"Violent Brat"(Tomas Bodin作)に後任のZoltan Csörszのプレイがに収められている。本編の楽曲は全てRoine Stoltによるもの。ボーナスディスクにはTomas Bodin、Jonas Reingoldの曲等が収められている。今作では、ボーカルがぐいぐいと楽曲を引っ張って行く曲が多く用意されており、ボーカルの充実度が非常に高いアルバムに仕上がっている。Hasse FrobergのブルージーなパワーがThe Flower Kingsミュージックを他との差別化に貢献しているのは明白であり、今作ではそれが中心に添えられている。頭から最後のシャウトまでHasse Frobergの為に作られたアルバムのようなものである。もう一つの聴き所は最後の3曲、短いインスト2曲("Blessing of Smile"〜"Red Alert")から続くコーラスの美しい"Serious Dreamers"。インスト部は短いながら、The Flower Kingsの魅力がぎっしりと詰め込まれた秀逸なナンバー。そして、聞き終えた後、アルバム全体のトーンカラーをTomas Bodinのサウンドが決定付けているのに気が付く。The Flower Kingsサウンドの鍵を握る3人の力量が伺える充実作。
"Unfold the Future"('02)再び2枚組で新境地を開いた名盤。今作からドラムがZoltan Csorszにチェンジし、更にPain of SalvationのリーダーであるDaniel Gildenlowが3人目のボーカリストとして参加。その他にも、いつものUlf Wallander以外にもAnders Bergcrantzというトランペッターが参加(自身のソロやその他参加作品多数)。参加者を見ても更に音楽性の拡散を狙ったものが打ち出されているのが窺われる。その為、2枚組というボリュームでも聴き通すのは困難ではない(情報量は凄いですが)。個人的には今作では一つの過去から未来へと繋ぐ連続性みたいな物を感じる事が出来る。前作からの延長線上にあるような大作のオープニングトラック"The Truth will Set You Free"はHasse Froberg大活躍の叙情的なナンバー。The Flower Kings流グルーヴが渦巻くハードロック佳曲の"Monkey Business"。Tomas Bodinのピアノが美しい"Black and White"。片足どころか、どっぷりとジャズフィールドに浸かったインスト"Christianopel"(Csörsz、Reingold、Bodin、Stolt作)、ハードシンフォなイントロに導かれる"Silent Inferno"。Disc2ではDaniel Gildenlowがリードボーカルを取る"Fast Lane"や"Grand Old Wolrd"では聞き慣れたメロディーにトランペットが被さりダブルベースの響きが美しすぎる(The Flower Kings流スタンダード?個人的なハイライトです)。インスト"Soul Vortex"を経てTomas Bodin作の"Rollin' the Dice"では再びDaniel Gildenlowの多彩なボーカルが堪能出来ます。そしてJonas Reingold、Zoltan Csörszがイニシアティブを握った"The Devil's Danceschool"で大フュージョン大会。まさかThe Flower Kingsのアルバムでミュートをかけたトランペットが響き渡るとは!そして、アルバムの最後を飾るのは当然24分もの大作、隅から隅までThe Flower Kingsワールドが繰り広げられる"Devil's Playground"。The Flower Kingsが持つ音楽的語彙を最大限に活かした傑作。
"Adam & Eve"('04)前作と同じメンバーで制作されたアルバム。一応今作からDaniel Gildenlowが正式にThe Flower Kingsのメンバーとして迎い入れられたというニュースがDaniel Gildenlow本人の口から報じられた。今作はシンフォ色を強め、今までのキャリアのエッセンスを随所に塗しているのが感じられる。そして注目すべきは多分歌詞面だろう。今までのThe Flower Kingsにはないタイプの歌詞が導入されているのに驚く(特にタイトルトラック!)。タイトルを見ると聖書に関連するものが多いが、特に聖書を意識したものではなく、Roine Stolt流の隠喩(判りやすいけどね)という事みたいだ。また、ブックレット最後にJoni Michellの"Woodstock"の歌詞があるのに気が付かれた方も多いだろう。今作を作るに当たって、Roine Stoltは彼女の"Travelogue"(オーケストラを使ったセルフカバー集)に強く影響されたと明言していた。毎作必ず入るエピックは今回は冒頭の20分弱の"Love Supreme"(当初、アルバムタイトル候補であったがJohn Coltraneの代名詞のようなこのタイトルは除外された)と"Drivers Seat"。多くの人がThe Flower Kingsに期待する通りの曲であろう。"A Vampire View"や"Adam & Eve"ではDaniel Gildenlowの特性を活かした非常にシアトリカルなボーカルを聞かせる。"Adam & Eve"は当然ジャケットと連動した曲であるのだが、歌詞を注意深く読むとジャケットのエグさが理解出来る。あまりにもストレートに書かれていたので、それも驚きの一端ではあったのだが、つまりはセックスに関する事を歌ったものである。こういった曲はThe Flower Kingsではなかったと思う。そして何事もなかったかのような如く"Starlight Man"で、いつものThe Flower Kingsワールドに戻っていく。そして、リズムセクションが得意なフリーキーなイントロからアコースティックギター一本でブルース調に歌い始め、アウトロでまたフリーキーなセクションへと戻る"Timeline"(Jonas Reingold&Roine Stolt作)かる次の大作"Drivers Seat"へと移る。3人のボーカルを擁し、それぞれがパートを担当し、曲の表情をより豊かにしている。そして、中間部にはお得意のジャムセクションを挿入。ライブが楽しみな曲である。そしてアルバム全体のフィナーレ的な役割を持つ"The Blade of Cain"でアルバムは閉じられる。尚、日本盤には欧州盤"The Rainmaker"に収録されていたボーナスディスクの6曲とThe Flower Kings初来日時に配布されたCDから3曲を入れた2CD仕様となっている。
"Paradox Hotel" ('06)Roine Stoltの"Wall Street Voodoo"やTomas Bodinの"I Am"に参加していたMarcus Liliequist(ds)を迎えて発表された2枚組。全体的にThe Flower Kingsのフォーマットに忠実に、どれもThe Flower Kings印がしっかりと入った安心して聴きやすい作品と、一聴した後の印象が残る。Hasse Froberg作のKing's X風のハードロック"Life will Kill You"等の新機軸も用意されている。さて、この作品からThe Flower Kingsは新しい章を迎えた、と個人的には感じる。それは、"Bavarian Skies"(Tomas Bodin作曲)や"Man of the World"(Jonas Reingold/Tomas Bodin作曲)といった曲の歌詞をRoine Stoltが手掛けている事だ。簡単に言ってしまえば、それだけ「Roine Stoltには」出さなくてはいけないステートメントがあった、という事。今までのThe Flower Kingsの歌詞は善くも悪くもFlower KingというRoine Stoltの言うところの「グッドフォース」「ポジティブフォース」のキャラクターがおり、そのキャラクターが出すステートメントだったからだ。それ故に一歩引いた感のある歌詞であり、そのキャラクターに合わない歌詞は排除されてきた(そのある意味フラストレーションとなってしまった結果がWall Street Voodooという怒れる作品となっている)。冒頭からいきなり"Monster & Men"にある"Seasons of War"で"I'm just a simple man like you"や"Here's a family man, that wanna reach out a hand"というステートメントは等身大のRoine Stoltに他ならない。"But sitting trapped inside this war, in a kingdom of sand"と苦悩を見せる。それでもDisc1の最後には健気に"The world is open. The world is alive"、"The world is grooving to a brand new beat"と人の世の素晴らしさを諦めない姿がある。そして"Minor Giant Steps"という相反する(=Paradox)言葉で再び苦悶を乗り越えようとする人の姿を己と同化し訴えかける。表題曲"Paradox Hotel"で"It's a living hell at Paradox Hotel(=地球)"から、宇宙から見た地球を愛でる"Blue Planet"で"Let's leave it, don't get closer. I fear what we might find. Up from here it looks so peaceful from the innocent blue sky"とまるで、地上では争いが絶えない我々の本性を見透かすようなコメントを宇宙飛行士達は残して去って行く。「それでも、僕たちはここにいる。ここに住んでいるんだ」という現実が突付けられる。去る事も逃げる事も許されない。ならば、どうすれば良い?何をすべきか?それがこの我々と何ら変わらない男「達」、The Flower Kingsのステートメントである。歌詞を書いたのはRoine Stoltかもしれないが、Tomas Bodin、Hasse Froberg、Jonas Reingoldはそのステートメントをシェアーし、自分のものとし、サウンドという感情にのせて表現させたのが、このアルバムの正体だ。だから、Tomas Bodinのキーボードは荘厳さを増し、Hasse Fröbergの叫びは説得力を増し、Jonas Reingoldのボトムはずっと太い。そして、Roine Stoltのギターは苦しみながらも必死に現実と向き合う姿を聴かせてくれる。このステートメントに共感出来ない人は少ないだろう。"Blue Planet"を書かなければいけなかったRoine Stoltを思うと、心臓が鷲掴みにされたような気分になる。これは、ある意味、問題作だ。最後に"The Way the Waters are Moving"は先のスマトラ沖地震の被災者に捧げられている。
"The Road Back Home - a Compilation for the Collector or the Newbie" ('07)大作の影に隠れがちな短めの曲を集めた、という趣旨の2枚組ベスト盤。Disc2に収められている"Little Deceiver"は"Rainmaker"セッションから漏れた曲。困ったことに、このベスト、全曲リミックスで、殆どの曲で何かしらの手が加えられている。また、今まで殆どの曲はThe Flower Kingsのリハーサルルームにある16トラックのアナログマシーンで録音されていたのを、今回のこのベスト盤を制作するにあたり、機材を24ビット・デジタルに一新し、このベスト盤に収められている曲は全て、移されている。長くなりそうなので、詳しくはこちら。
The Sum of No Evil ('07)元々は"Love"というタイトルを考えられていたらしいが、Beatlesのリミックスアルバムに使用されたのを受けて、"Love"を言い換えて"The Sum of No Evil"というタイトルになった、との事。Roine Stoltは"Adam & Eve"辺りから原点回帰を叫び続けてきたが、どういう訳か、それは達成されたとは言いがたいアルバムを発表してきた。「シンフォニックたれ」を合言葉に今回もアルバム製作に臨む。果たして、今作で、The Flower Kingsが持つカタログ中随一のシンフォニックでファンタジックなアルバムに仕上がった。"Stardust We Are"から拡散し続けてきた音楽性を今作ではギュッとシンフォニックロック的なサウンドに纏め上げた。結果、極力、即興性を取り除き、構成がカチっとした曲に仕上げ、ブルージーなソロ等も除いた、所謂「引き算」なアルバムになった。アルバム全編を覆うのはTomas Bodinの時にディズニーを思わせるキーボード類が支配的でシンフォニックなサウンド・タペストリーを構築する軸となっている。今作ではZoltan Csörsz(ds)が戻り、ドラムキットに座っているが、Zoltan Csorsz特有のアクロバティックなドラミングは構成がしっかりしている曲の中ではあまり特性を活かせていない。唯一、Tomas Bodin作のインスト"Flight 999 Brimstone Air"の中間部ではじけた演奏が聴くことが出来る。それでもアルバム中では、十分テクニカルな技を披露している。そして、ヴォーカルは意図的にエフェクトやハーモニー等を多用し、曲の中に織り込むようにシンフォニック・サウンドの一端を担うかのように聴こえる。ヴォーカルをもこのサウンド・タペストリーの中に入れる様は、煌びやかなペルシャ絨毯を見ているかのよう。ボーナスディスクには"The River"(最後に"Love is the Only Answer"の歌詞が戻ってくる様は本編に入れても良かったと思う)、"Turn the Stone"にRoine Stoltのギターの真骨頂が聴ける"Regal Divers"のデモにヴィデオフィルムのファイルが入っている。最後にZoltan Csörszはアルバム製作後、フェスティバルに1本参加したのみ。続く欧州ツアーにはKing CrimsonのドラマーPat Mastelottoが同行することになった。
Banks of Eden ('12)ドラムにドイツ出身のFelix Lehrmannを迎えて発表された5年ぶりの復帰作。最初に印象に残るのは全編を通して兎に角Roine Stoltの多彩なギター・ワーク、ギター・サウンドが堪能出来るギター・アルバムに仕上がっている、という事はとても示唆的である。またRoine StoltとHasse Fröbergのヴォーカルの掛け合いもメロディアスなパートを中心に置いて流石、自身の持ち味をよく分かっている。本作は大作"Numbers"で幕を開ける。オープニングの"You look at the riverbanks, she's looking behind you"というラインはジャケットのイメージと重なる。この大作は最後の"Rising the Imperial"と呼応しておりリプライズ的な曲(もしかしたら、"Rising the Imperial"があって、それをストレッチさせたのが"Numbers"なのかもしれない)で締めくくっているのはアルバム"Space Revolver"の"I am the Sun"を思い起こさせる。特に後者のこれでもか、という情感豊かなRoine Stoltのギターは反則以外の何物でもない。"For the Love of Gold"は共作者Tomas Bodinのキーボード・サウンドはまさにThe Flower Kingsのカラフルな世界観を端的に表す代表的な例だろう。最後の最後に"Numbers"のテーマが出てくるセンスも嫌いじゃない。そして派手なオープニングを持つ"Pandemonium"はアルバム冒頭に使いたいぐらいの勢い。エフェクトをかけたヴォーカルと生のRoine Stoltの掛け合いやギターを前面に押し出したインタープレイが聴ける。特に硬質なJonas Reingoldのベース・サウンドとの掛け合いが白眉。後半の盛り上がりはライブでの演出が楽しみなナンバー。"For Those about to Drown"はBeatlesの"I am the Walrus"あたりを意識したビートリーなナンバー、となっている。Disc 2にはボーナス・トラック4曲と2012年1月にVarispeedスタジオで収録したインタビューが収められている。ボーナス・トラックは冒頭の"Illuminati"はチャーチ・オルガン風のサウンドで始まる荘厳なイメージを持つインスト・ナンバー。"Fireghosts"はどこか大陸的なおおらかさを持つポップなナンバー。更にKarmakanicでポップ・マエストロな才能を開花させたJonas Reingold作の名曲"Going Up"、そしてThe Flower Kings流サイケデリックな味付けを施してある"LoLines"で締めくくらている。復帰作としてThe Flower Kingsの魅力をしっかりと提示した作品。
Desolation Rose ('13)前作より僅か1年4ヶ月後にリリースされた本作はメンバーも前作と同じ。アートワークもSilas Toballを起用。長年探してきたパッケージングにも統一感が出てきた。1年4ヶ月という短いインターバルでリリースされた本作は日本でのライブを含むツアーから(Transatlantic等の他プロジェクトとのスケジュール的なものがあったにしても)、戻ってきてすぐにでもアルバムを作りたい、という強い思いがRoine Stoltにはあったのだろう。いつもなら、デモをある程度仕上げてからスタジオ入りするThe Flower Kingsだが、今回だけは1曲丸々完成した楽曲は一つもなく、曲の断片、イメージ、アイディアだけを持ち込み、メンバーからのインプットを最大限に取り入れた作品となっている。冒頭の"Tower ONE"は緩急をつけた長尺曲。13分もの長さを微塵も感じさせないのはThe Flower Kingsとしては当然。スローでへヴィなパートから徐々にスピードをあげていくのに必ず橋渡し的役割を持つのがJonas Reingoldのベース・サウンドにあるのに気が付く。ライブ映えのする曲。続くへヴィなリフを持つ"Sleeping Bones"はTomas Bodinの雰囲気のあるサウンドスケープとの対比が素晴らしい。ピアノ・サウンドから導かれるタイトル・トラック"Desolation Road"はサビの「In silent graveyards - they look for saviors」というラインに集約される。Jonas Reingoldのベースリフからアイディアが固まった"White Tuxedos"のオープニングの声はリチャード・ニクソン大統領が69年11月3日に行ったスピーチから。そしてスプーキーなエフェクトをかけたRoine Stoltのヴォーカルが乗ってくる。本曲でのギターは殆どがHasse Fröbergが担当(Roine Stoltはエフェクトをあれこれといじって実験していたらしい)。冒頭のアコースティック・ギター、ソロでのワウを効かせたプレイ、バンドが一体となって畳み込むインスト・パートと表情が豊かな"The Ressureccted Judas"(後半のアコースティック・パートに戻る直前に前作から"Rising Imperial"のソロっぽい部分が聞こえるのは気のせいだろうか?)からエンディングに「Silent graveyards - Look for saviors」のリプライズを持つ"Silent Masses"へ。Roine Stoltのソロ作のような品の良いブルージーな作風を持つ"Last Carnivore"へ。出だしの歌詞が"Sleeping Bones"と同じ「we are the 3rd from the sun」で始まる"Blood of Eden"はどこか初期The Flower Kingsを思わせる繊細さ、ナイーヴさを持つ。そして、本編最後の"Silent Graveyards"ではMichael Stolt(元The Flower Kings、Eggs & Dogs等)、Declan Burke(元Frost*、Darwin's Radio)、Nad Sylvan(Agents of Mercy)、Andy Tillison(The Tangent)、Edgel Groves Sr. & Jr.(Neal Morseとの欧州ツアーマネージャーでSun DomingoのEdgel Groves Jr.で、父親の有名プロデューサーでありミュージシャンでもあるEdgel Groves Sr.もその関係でゲスト参加したのだろう)、Daniel Gordon(Sun Domingo)が参加。本編ではJonas Reingoldのアイディアでそれぞれがクロスフェイドするように作られている。ボーナス・ディスクにはロックの定番トレイン物に初挑戦の"Runaway Train"。"Interstellar Visitations"はタイトル通り、David Gilmourを思わせるギターが唸りを上げる。"Lazy Monkey"もBeatlesっぽいヴォーカルをもったリラックスしたタイトル通りの曲。またメロトロンが鳴り響く"Psalm 2013"、"Burning Spears"は本編には残らなかったものの、バンド全体で取り組んだ曲。特に後者の"Burning Spears"というフレーズは"Tower ONE"の1行目から取られていて興味深い。当初、Hasse Fröbergもスタジオでの作業に懐疑的であった、と言い、その印象からかとっ散らかった作品になると危惧したが、どうして、きっちりと流石の構成力を持った作品に仕上がった。Roine Stoltが見込んだポテンシャルは間違いなく、結果、速攻でスタジオに入ってバンドの勢いを削ぐことなく作ったのが功を奏した結果となった。本作は間違いなくバンドのキャリアのハイライトの一つとなるだろう。


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