Squonk Opera

Squonk Opera

米国は、ペン州、ピッツバーグ出身のパフォーミング・ミュージシャン集団。当初はご当地映画からか"Night of the Living Dead"のシアター版をやったり、鉄鋼の街(スティーラーズね)を題材にした("Firedogs")ユーモア溢れるパフォーマンスを行う。オフからオン・ブロードウェイに進出したり(あ、別にno pun intendedで)、お隣韓国でステージを広げたり。その活動は徐々に注目を集めているようで、嬉しいけど、ここでは…?音だけだと、やっぱり物足りないかもしれないので、彼らのホームページで映像も多少は見れるので、触れておくことをお勧めしておく。

Howandever ('94)記念すべきSquonk Operaの1st。中心人部のJackie Dempsey(piano、key)、Steve O'Hearn(wind synth、Celtic Flute、whistle、sax)にBrian Berkheiser(b)、Sean Brennan(contraption kit、rototoms)、Akshay Goel(perc.)、そして伸びやか且つ素晴らしい喉を持つKate Aronson(vo)。この頃からステージは演劇風なところが強かった記憶がある。所謂、コンテンポラリー・ケルトに影響を強く受けた音楽性を持つがそこに「ユーモア」という要素が強烈なファクターとして存在する。グループ名から"Genesis"風を指摘する向きもあるが、それよりは、ケルトを始めとする民族音楽、ジャズ、シアターミュージック等からの影響が強く、そこりオリジナリティ溢れるエネルギーが注がれたような感じ。Kate AronsonのVoも、歌もあるが、ヴォイスパフォーミング系の物や台詞っぽい物も。作曲クレジットは全てバンド名義。全12曲。プロデュースはJackie DempseyとJohn Heaney。女性ヴォーカルファンは必聴盤だと思う。
Ha Ha Tali ('96)VoをJana LoseyにドラムをKevin Kornickiに代えての2nd。また、このアルバムからステージディレクターであるCasi Pacilioがクレジットされ、Squonk Operaのパフォーミング・ミュージシャンという、自分たちだけで演じ、演奏も同時に行う、というスタイルを取り始める。リズム隊を強化したことで、音像が多少ハードに移行するが、ジャンベなどのパーカッションも使用するKevin Kornickiのプレイは緩急がある。Jana Loseyにヴォーカルが替わっても、そのヴォーカルスタイルは前任者から受継いだ感が強い。多少、力強さが増した感じを受けるのは、音楽性のせい?作曲クレジット、プロデュース共にバンド名義になっている。全6曲。
Bigsmorgasbordwunderwerk ('99)このアルバムからSquonk Operaのアルバムは全てパフォーマンスと完全に連動した作品を発表していくことになる。ある意味、ステージのサウンドトラックとも呼べる。このアルバムに収められている曲は全て、同名タイトルのショーでも聞くことが出来る。また、この作品はNYのオフからオン・ブロードウェイへと進出した記念すべき作品でもある。アコースティックでまとめられた楽器群はアイリッシュ等の民族音楽を叩き台にしている楽曲や、クラシックからの強い影響を持っていたり。時に、その「たおやかさ」が、どこか最近のJethro Tull辺りを思い起こさせる音。そういった上品さを持っている。T.Weldon Andersonがダブルベース担当となる。全17曲、52分の作品。プロデュースはJacki Dempsey。後にAngelレコードから曲順などを変えて00年に一般流通盤を出す。
Inferno ('02)タイトル通りダンテの神曲をモチーフにしたパフォーマンス劇の音楽を集めたCD。ヴォーカルに新しくJody Abbottを迎え、Nathan Fayがベースを担当。そして、Squonk Operaのウェブデザイン等を担当しているDavid Wallaceが"Behind Your Skin"でギターを入れている。実は、彼らのサウンドにギターが入るのがこの曲が始めてである。結成時から「Jimi Hendrixがギターを燃やしたのには理由があり、ギターというのはそのまま燃やされたままであるべき」というのが彼らの言い分であったのが、この曲で初めて崩れた。今作でもJackie Dempseyのアコーディオンを中心にSteve O'Hearnの管、そして、特徴的なリズムを叩き出すKevin Kornickiの織成す音が忽然一体となって迫る世界観は今まで通りの完成度の高さ。Joddy Abottの声も非常に良い。
Rodeo Smackdown ('04)ギリシャ神話のミノタウルスにまつわる話をベースに西部劇風に纏め上げた作品。ヴォーカルにドミニカ出身のChristian Acostaを迎え、ベースにはNathan Wilsonが今作から参加。前作同様、"Cowboy Nation"のみバンドのウェブデザイナーでもあるDavid Wallaceがギターで参加。"Shape of Desire"、"Bad Mood"、"Unraveling"、"Cowoby Gone Loco"のみパーカッショニストのKevin Kornickiの作曲。残りは全てJackie Dempseyの手による。歌詞は全てChristina Acosta。それこそ西部劇映画風のサウンドからSteve O'Hearnのフルート等の管から吹き出される音がアイリッシュ風だったり、トラディショナルなジャズ風のサウンドが飛び出したりと、非常に豊かな音楽的なバックグラウンドと語彙に裏づけされた音楽性で楽しませてくれる。勿論、この作品もステージと一体化されたマルチメディアな作品。
You are Here ('06)前作、前々作とアルバム中1曲のみ参加していたDavid Wallace(g)が全面参加。そのため、サウンドスケープの表情が更に豊かになり、ある意味、Squonk Operaのカタログ中、一番プログレっぽい音に近い所に来たアルバムかもしれない。Christian Acostaの声は艶があり、力強い声から静謐なパートまで、非常に安定して聴かせてくれる。Kevin Kornicki(perc.)作曲の"Umbrella Dance"以外は全てJacki Dempsey(p、accordion)の作曲。この作品も「(あなたの街の名前を入れて)The Opera」というショーで聴くことが出来るマルチメディア作品。つまり、東京ならTokyo:the Opera、というタイトルになり、その街に因んだ映像を流しながら、メンバーが演じながら、音楽を演奏する、というスタイル。ここまで来ると、せめてDVDでも良いから、映像を観たい、というのがファンの願いだろう…な。バンドのオフィシャルサイトにて、幾つか映像を見ることが出来るので、その美しさを堪能してみて下さい。
Mayhem and Majesty ('10)DVD"AstroRam"を経て発表された7th。ヴォーカルは"AstroRama"にも参加していたAutumn Ayers(歌詞も彼女が担当)。伸びやかで力強いAutumn Ayersのヴォーカルが非常に心地良い。まるでライブ・レコーディングのようなアンビエンスを感じさせる生々しいサウンドが複雑なタペストリーのように展開される。"Momentum"のスケールの大きいオープニングにドキドキする。Jackie Dempseyが導く静謐さにSteve O'Hearnのフルートが絡み、Kevin Kornickiのプリミティブな鼓動が同居したような音世界に肌理の細かいAutumn Ayersの声が旅先案内人の如くSquonk Operaサウンドの深淵へと誘う。"Ten Digits"のディストーションはSquok Operaの常套手段的なサウンド。Jackie Dempseyのアコーディオン・サウンドにAutumn Ayersの言葉遊び(しりとり?)のようなヴォーカルが乗る。本作は特に"Call and Recall"や"So Long Song"などの静の美しさが更に際立っている。"Open Waves"はその美しい静と動の躍動感をSquonk Opera流に仕上げた曲。"Boom in the Room"はアコースティック・ギターを導入したAutumn Ayersの可愛らしいヴォーカルが乗る珍しい曲。本作もまた傑作。


Top



inserted by FC2 system