Santana

Santana
ラテン・ミュージックとロックの融合とは言え、それ以前からポピュラー・ミュージックやジャズとラテン・ミュージックの融合はなされていたことを考えたら、いずれかは出てきたであろうサウンド。ただ、それがDeadやJeffersonを生んだサンフランシスコ第2世代というところが肝だろうか?

Santana ('69)Carlos Santana(g、vo)、Mike Carabello(perc.)、Dave Brown(b)、José Chepito Areas(perc.)、Mike Shrieve(ds)、Gregg Rolie(p、organ、vo)によるデビュー・アルバム。ラテン・パーカッションを大胆に取り入れパカポコ言う中にGreg Rolieのハモンドが咆哮をあげる。絡みつくようなSantanaのソロはブルージーな泣きを基本としながら、トランペットなどの管類のソロのようにジャジーだったりする。1stシングルとなった"Jingo"はナイジェリアのパーカッション奏者Babatunde Olatunjiが59年に発表した曲。2ndシングルとなる"Evil Ways"はClarence (Sonny) Henry(Willie Boboのバンドのギタリスト)作曲で、ジャズ・パーカッション奏者Willie Boboが録音している。特に後者はジャムばかりしていて「曲」にならないのを見兼ねたBill Grahamが「この曲で曲の構成というのを覚えろ」とバンドにカヴァーすることを進言した曲らしい。また、こうしてみても、パーカッションを中心に据えたラテン色を出した楽曲で押し出そうとした意図が読み取れる。スーパー・ヘヴィな"Persuasion"、ジャジーなピアノが光る"Treat"、Creamばりのブルーズ・ロック"You just don't Care"、そしてバンド・サウンドが一丸となって絡みつくような"Soul Sacrifice"は圧巻。04年に出されたLegacy EditionではWoodstockでのライブ7曲などを収めた2枚組仕様もある。
Abraxas ('70)正にタイトル通りのインスト"Singing Winds, Crying Beasts"で幕を開けると、大ヒットとなったFleetwood MacとSantanaのヒーローであるハンガリアン・ギタリストのGabor Szaboのカヴァー"Black Magic Woman / Gypsy Queen"へと続く。更に彼らのルーツであるラテン・ジャズ、マンボを演奏したTito Puenteの"Oye Como Va"と立て続けにSantanaの持つ音楽性の広さが押し寄せてくる。そして、ジャム・バンドらしい多彩な表情を持つ"Incident at Neshabur"、Greg Rolieが書いたスピード感たっぷりな超絶ハードロック佳曲"Mother's Daughter"、ブルージーなCarlos SantanaのギターとGreg Rolieのオルガンが響く"Samba Pa Ti"(Samba for Youという意味で後にJose Felicianoが歌詞を付けてカヴァーしている)。最後はパーカッションが大活躍する"El Nicoya"で締め括られている。98年再発時に70年のThe Royal Albert Hallでのライブから3曲ボーナス・トラックが付けられている。アルバム・タイトルとなった"Abraxas"はHermann Hesse(ヘルマン・ヘッセ)の「Damian(デミアン)」の一節から取られたもの。元々はパピルス古文書やグノーシス主義の文献に出てくる神の名前の一つ。
Santana III ('71)弱冠17歳のNeal Schonが初参加したSatana3枚目のアルバム(同時期にEric ClaptonからDerek and the Dominosへの参加も要請されたらしい)。前2作がある意味、端正な曲を心掛けた印象を持つが、本作ではSantanaが本来持っているジャム・バンド的なジャジーで奔放なプレイで溢れているのが特徴だろうか。オープニングの"Batuka"では既にNeal Schonにリードを任せる所などは非常にSantanaらしい。チャチャチャのリズムが心地良い"No One to Depend On"は中間のインタープレイのセクションとなると一気に様相が豹変する様に驚く。Greg Rolieのハモンドが咆哮をあげる"Toussaint L'Overture"、Tower of Powerのホーンセクションを迎えたソウルフルな"Everybody's Everything"にNeal Schonのワウを効かせたソロが秀逸。サルサ風のピアノで幕を開ける"Guajira"、疾走感が素晴らしい"Jungle Strut"なども用意されている。そして"Para Los Rumberos"はお馴染みTito Puenteのナンバー。06年の2枚組Legacy Editionでは未発表曲3曲に"No One to Depend On"のシングル・ヴァージョンがボーナストラック、2枚目に71年7月4日のFillmore Westでのライブが収められている。爆発ジャケに相応しい素晴らしい作品。
Caravanserai ('72)鈴虫の鳴き声ではじまるオープニングはどこか幻想的でさえある本作は、全体的にジャズ色を強めている。Antonio Carlos Jobimの"Stone Flower"やパーカッション隊のJosé "Chepito" AreasとJames Mingo Lewisが書いた"Future Primitive"のようにラテン色も当然あるのだが、それ以上にMiles DavisやJohn Coltraneといったジャズの巨匠への憧れや敬意を打ち出した作品。本作ではDavid Brown(b)が抜けDouglas Rauch(b)とTom Rutley(acc b)がその穴を埋めている。またMike Carabello(perc.)の代わりにArmando Perazaが加入。冒頭の"Eternal Caravan of Reincarnation"のNeal Schonのジャジーなプレイが彼の早熟な非凡さを表しているよう。そして続く"Waves Within"のSantanaの太いサウンドが肌理細かいパーカッションやDouglas RauchとDouglas Rodriguesのギターと織り成す構成が素晴らしい。"Just in Time to See the Sun"、"All the Love of the Universe"と"Stone Flower"がヴォーカル曲でそれ以外はインスト。特にフラメンコ調から、シティーソウルっぽいヴォーカル・パート、更に後半で激しいインタープレイを聴かせる"All the Love of the Universe"が素晴らしい。インスト曲は、前作のような奔放なジャムっぽさはなくなっている。プロデュースはCarlos SantanaとMichael Shrieve。Santanaの新機軸を聴かせる傑作。
Welcome ('73)前作で一つの頂点を極めたSantanaバンドは更に挑戦的な音楽的な広がりを持たせることになる。一つはJohn McLaughlinとの出会いによって霊的な目覚めによるもの、そして、ジャズをはじめとする新たな音楽的挑戦。オープニングの"Goine Home"はドヴォルザークの「家路」をAlice Coltraneによるアレンジを施したもの。続く"Love Devotion & Surrender"はMahavishnu John McLaughlinとの共作アルバムのタイトルであり導師シュリ・チンモイの教えの中核をなすヴォーカル曲。その他にも"When I Look into Your Eyes"などはLeon Thomas(元Pharoah Sanders)とFlora Purim(Return to Forever等)がヴォーカルを担当。クールなソウル、といったSantanaとしては全く新しいタイプのヴォーカル曲となる。Richard Kermode(key 元Janis Joplin)作曲の"Yours is the Light"はFlora Purimがジャジーなバックに透明感のあるヴォーカルを聴かせる。続くSantanaのソロが素晴らしい。"Light of Life"のオープニングのストリングなどはまるでMarvin Gayeあたりに通じるドラマティックなアレンジが秀逸。Herbie Mannとの共作曲"Mother Africa"はArmando PerazaとJosé "Chepito" Areasのパーカッション隊が活躍。サックス・ソロはJules Broussard。もう一つのハイライトはJohn McLaughlingが参加した11分にも及ぶジャズ・ロック曲"Flame-Sky"。Tom CosterとRichard Kermodeによるスペーシーなサウンドが格好良い。またCarlos SantanaとJohn McLaughlinの織り成すような応酬も聴き物だろう。最後はJohn Coltraneによる"Welcome"で締め括られている。03年再発時に未発表曲"Mantra"を含めて再発。多彩な側面を見せる傑作。
Borboletta ('74)"Caravanserai"を思わせる冒頭のSE"Spring Manifestations"はFlora PurimとAirto Moreiraによるもの。エジプト風なオープニングを持つ"Canto de los Flores"は静謐さを漂わせるナンバー。Michael Carpenterによるエフェクト(echoplex)がフルートのように聴こえる。本曲ではCarlos Santanaはパーカッション担当。Leon Patilloによるヴォーカル・ナンバーは洗練されたシティー・ソウル風。その中で異色なのはやはりTom Costerのムーグが鳴り響く"Mirage"だろうか。本作のベースはDavid BrownとStanley Clarkeとで分け合い、ドラムもMichael ShrieveとNDUGU(Leon Chancler)とで分け合っている。"One with the Sun"はSly & the Family StoneのメンバーだったJerry Martiniによって書かれたナンバー。本作の特徴はヴォーカル・ナンバー以外のインスト6曲では"Here and Now"と"Flor de Canela"を除いてCarlos Santanaはギターをプレイしていない、という事。Santanaというグループのトレードマークが何もギターだけでない、という自信の表れだろうか。Santanaらしい疾走感を持つ"Aspirations"ではTom CosterとCarlos Santanaとの共作にも関わらずリードをJules Broussardのサックスに任せている。
Amigo ('76)前作の作風を更に推進めたような感じ。オープニング・ナンバーはLeon 'Ndugu' Chancler(ds、perc.)とTom Coster(keys)が引っ張るラテン色が強い曲。そこにGreg Walkerのクールなヴォーカルが乗る。特に後半のTom Costerのシンセに肌理の細かいパーカッションが縦横無尽に走る様は圧巻。"Take Me with You"は前半は激しいジャズロック色の強いパートと都会的な洗練されたクールダウンした後半との対比が面白い。"Let Me"、"Tell Me Are You Tired"と最後の"Let It Shine"はGreg Walkerのヴォーカルを生かしたソウルフルなファンク・ナンバー。"Gitano"(ジプシーという意味)はArmando Perazaによるアフロ・キューバンなサルサ・ナンバー。ヴォーカルもArmando Peraza。自然と体が動き出す。そして"Europe (Earth's Cry Heaven's Smile)"はRoy Buchananあたりと通じるブルージーなギター・バラードの傑作。と多彩なナンバーをSantanaという括りで見事に纏め上げたアルバム。
Festival ('77)ヴォーカル・コーラスが気持ち良いオープニング"Carnaval"からSantanaお得意のメロディアスなギターが光る"Let the Children Play"、そしてハードなシンセを自在に操るTom CosterとGaylord Birch(ds、perc.)、Raul Rekow(congas、perc.)によるパーカッション隊の絡みが堪能出来る"Jugando"と続く冒頭3曲から強力な吸引力を持つナンバーがこのアルバムを決定付けているかもしれない。"Give Me Love"はPablo Tellez(b)による洗練されたソウルフルな都会的なナンバー(ベースは書いた本人でなくPaul Jacksonが担当)。Leon Patilloが"Give Me Love"、"The River"、"Try a Little Harder"でリード・ヴォーカルを担当。フラメンコ・ギターが印象的な"Verão Vermelho"はブラジリアン・シンガーElis Reginaのカヴァー。"Let the Music Set You Free"はしなやかなファンク・ナンバー。ピアノから始まる"Revelations"はSantana特有の叙情性豊かなインスト・ナンバー。"Reach Up"は女性コーラスが曲を引っ張るソウル・ナンバー。"The River"は徐々に盛り上げていくロッカバラード。"María Caracóles"はPello El Afrokan作曲のモザンビークと呼ばれるキューバのダンス・ミュージックのカヴァー。
Moonflower ('77)スタジオ曲、ライブ曲が混在した2枚組。Tom Costerのキーボードがサウンドを引っ張るオープニングの"Dawn / Go Within"から幕を開けると77年欧州ツアーからのライブが3曲(前作"Festival"の頭3曲)歓声とともに始まる。そしてスタジオ曲"I'll be Waiting"と"Zulu"が収められている。前者はソウルフルなGreg Walkerのヴォーカルを中心にしたシングルにもなった曲。後者はファンキーな跳ねるリズムにSantanaの心地良いギターが流れるインスト曲。B面に入ると"Bahia"がイントロの役割をし、ライブ3曲"Black Magic Woman / Gypsy Queen"、"Dance Sister Dance"、"Europa"で締め括られる。C面はZombiesのヒット曲"She's not There"のカヴァーから始まる。後半のソロの掛け合いが素晴らしい。そして表題曲"Flor D'Luna (Moonflower)"は叙情的でジャジーなSantanaのプレイがたっぷりと聴ける曲。そして再びライブ"Soul Sacrifice"からGraham Learのドラム・ソロ"Head, Hands & Feet"で終わる。D面はスケールの大きな"El Morocco"、バンドのパワーが集結した感のある"Transcendance"からライブ"Savor"、"Toussaint L'Overture"で終わる。ジャケットは壮大な大自然を撮影することで世界的に有名な白川義員のもの。Santanaの世界観とのマッチングが素晴らしい。
Inner Secrets ('78)ロック・グループはライブ盤を出した後、方向性を変えるとよく言われるが、今作でのSantanaも正に"Moonflower"で一区切りさせ、更に時代に即したラジオ・フレンドリーなポップ・ロックを今作で展開している。Greg Walkerのヴォーカルを中心にGraham Lear(ds)、Armando Pereza(perc.)、Pete Escovedo(perc.)、Raul Rekow(perc.)といったパーカッション隊がラテン・グルーヴをしっかりと打ち出している。オープニングはTrafficの"Dealer"にSantanaらしいギターソロとChris Rhymeのキーボードの掛け合いパート"Spanish Rose"を繋げたもの。この二人が織り成す緊張感が素晴らしい。またプロデューサーにABC-ダンヒル・レーベルを成功に導いたDennis LambertとBrian Potterを迎え、その流れでThe Four Topsの"One Chain (Don't Make No Prison)"やClassics IVの"Stormy"、Buddy Hollyの"Well All Right"のカヴァーも収録している。その一方で"Open Invitation"での迫力のあるギター・ソロや"Life is Lady / Holiday"の特に前半での叙情性のあるメロディアスなギターから後半のスパニッシュ・ギターへと展開する様はギタリストSantanaの真骨頂が垣間見れる。他にDavid Margen(b)、Chris Solberg(g)が参加。
Marathon ('79)プロデューサーにKeith Olsenを起用、ヴォーカルに元Brian Auger Oblivion BandのAlex Ligertwood、キーボードにAlan Pasqua(Tony WilliamsやAllan Holdsworthとの活動があった)という新しい編成でAOR第2弾を作成。Alex Ligertwoodの時にSteve Perryを思わせるノビのある朗々とした歌唱がポップ・ロック調のナンバーに非常によく合っている。特にシングルカットされた"You Know that I Love You"などはJourneyへの意識は多分にあっただろう。また本作ではヴォーカル・ナンバー以外のインスト・ナンバーも用意されており、冒頭の表題曲はアルバムのイントロのような小曲でありながらパーカッションとSantanaのギターが絡む「らしい」作風。"Aqua Marine"は清涼感あるAlan Pasquaのキーボードが引っ張る都会的なナンバー。B面の頭となる"Runnin'"はDave Margenのベースがタイトル通り走り回るイントロ的小曲。
Zebop!('80)前作から引き続きAlex Ligertwood(vo)が参加したAORアルバム第3弾。いきなりエレクトリックに仕上げたCat Stevensの"Changes"で幕を開ける。アコースティックとエレクトリックという違いはあるもののオリジナル・バージョン("Teaser and the Firecat"に収録されている"Changes IV"がそれ)も力強いナンバーなので是非ともチェックしてみることを勧める。ドラマティックなオープニングから力強い男声コーラスがプリミティブな魅力を醸し出すラテン・ナンバー"E Papa Ré"を挟んで、"Searchin'"のイントロ的役割を持つCarlos Santanaのギターの疾走感に身体が自然と反応する"Primera Invasion"(インスト・ナンバー)へと。"Searchin'"、"Over and Over"(Hoo Doo Devil RhythmのRick Meyers作)、"Winning"(Russ Ballard作、Rainbowのあの曲も収められている"Winning"から)とハードロック佳曲が並ぶ。Alan Pasquaの叙情的なキーボード・プレイが光る"Tales of Kilimanjaro"(インスト)からJ.J.Cale作のバラード"The Sensitive Kind"("5"収録)へと。Alexander Olshanetskyのスタンダード・ナンバー"I Love You Much Too Much"ではギタリストCarlos Santanaに求められているものが詰め込まれたギター・インスト・ナンバー。Alex Ligertwoodの力強いヴォーカルが聴けるバラード"Brightest Star"からスパニッシュ・ギターの導入部からラテン・パーカッションを響き渡る"Hannibal"で締めくくられている。その他、本作にはRichard Baker(key)、Graham Lear(ds)、David Margan(b)、Chris Solberg(g)にパーカッション隊Armendo Pereza、Raul Rekow、Orestes Vilatóが参加。カヴァーを多く含むアルバムも楽曲を重要視した上での決断であろう。正しくこの時代に相応しいハードロック版Santanaによる名盤。
Shango ('82)前作を踏襲した作品となっている。何といってもGreg Rollieが"Nueva York"でオルガンで参加、また共作者としてオープニング曲の"The Nile"、"Nueva York"、"Oxun(Oshun)"でクレジットされているのにファンは喜びの声をあげた。"Hold On"はカナダのシンガーソングライターIan Thomasのヒット曲("The Runner"収録)。"Night Hunting Time"はアイルランド出身のPaul Bradyのポップ期への転換期となった曲("Hard Station"収録)。続く"Nowhere to Run"はRuss Ballardの書き下ろした曲で、非常にらしいポップ・ロック作でAlex Ligertwoodの声が堪能出来る。そして"Nueva York"でのGreg Rollieとの掛け合いを楽しむかのようなSantanaのギターが素晴らしい。"Oxun(Oshun)"はSantanaらしい躍動感を持つラテン・ハードの佳曲。"What does It Take(to Win Your Love)"はJunior Walker & the All Starsのヒット曲。"Let Me Inside"はレゲエっぽいリズムを持つ曲。Raul Rekow、Orestes VilatóとArmando Perazaといったパーカッション隊が書いた表題曲は"Jingo"の流れを汲む小曲。David Margen(b)、Richard Baker(key)、Graham Lear(ds)などが参加。
Beyond Appearances ('85)82年Kim Carnesの"Bette Davis Eyes"でグラミーを受賞したVal Garayをプロデューサーに起用。本作ではWeather Reportで活躍したAlphonso Johnson(b)とChester Thompson(ds)というリズム隊、同名のChester ThompsonとDavid Sancious(元Bruce SpringsteenのE-Street Bandなどで活躍)というキーボード・プレイヤーを擁する。ヴォーカルはGreg WalkerとAlex Ligertwoode。全体的に大量のドラム・マシーンとシンセ・サウンドが使用されている。オープニングからハード・ポップ・ロック路線の"Breaking Out"、Gammaなどで活躍したMitchell Froomが書いた"Written in the Sand"へと続く。Carlos Santanaらしいソロが聴ける"Brotherhood"。"I'm the One who Loves You"はCurtis Mayfield & the Impressionsのカヴァー。Alex LigertwoodとGreg WalkerのWヴォーカルの伸びやかさがSteve Perryあたりを思わせる"Spirit"や"Two Points of View"。ハードなSantanaのギターが楽しめる"Touchdown Raiders"はアメリカン・フットボール・チームOakland Raiders讃歌だろう。ヒットこそしなかったものの良くできたポップ・ロック作品。
Freedom ('87)72年に出されたライブ盤で共演したことのあるBuddy Miles(元Band of Gypsyなど)をリードヴォーカルに迎えた作品。冒頭の"Veracruz"はJunior Wellsのハープ、ヴォーカル、そして多分Buddy Guyも参加していると思われる溌剌としたソウルフルなヴォーカル・ナンバー。続く"She can't Let Go"は都会的な洗練された音像のバラード。Earth, Wind & Fireあたりのバラードを思い出してしまった。"Love is You"はしっとりとした味わいを持つインスト・ナンバー。"Songs of Freedom"は本作を代表するナンバーだろう。グルーヴが気持ち良いナンバー。更に本作に大切なナンバーがArmando Perazaによって書かれた"Mandela"は勿論Nelson Mandelaに捧げられたインスト曲(翌88年に生誕70を祝うトリビュート・フェスが行われた)。"Before We Go"は元TrafficのJim Capaldiとの共作。ハモンドの響きがどこかSteve Winwoodを思わせるのは錯覚だろうか?
Spirits Dancing in the Flesh ('90)89年に20周年記念ツアーをした後、Carlos Santana(g)はバンドを再編。Alex Ligertwood(vo、g)、Chester Thompson(key)、Armando Pereza(per.)というお馴染みの面子にJohn Lee Hookerなどと共演したBenny Rietveld(b)とJackson Browneなどと共演したWalfredo Reyes(ds)というリズム隊というバンドを中心にゲストを多数迎えた作品。大仰なシンフォニックな短いオープニングから美しいコーラスを持つ"Let There be Light / Spirits Dancing in the Flesh"からSantanaの真骨頂である「生を祝う」ギターが鳴り響く。"Gypsy Woman"はCartis Mayfieldの曲。そして"It's a Jungle Out There"と"Choose"ではBobby Womackがヴォーカルを取っておりSantana流アーバンR&Bとでも呼べるナンバーに仕上がっている。John Coltrane、自作曲とJimi Hendrixの曲を組合わせた"Peace on Earth / Mother Earth / Third Stone from the Sun"は次作への布石とでも呼べるだろう。更に1stからの"Jin-Go-Lo-Ba"を再録。この2曲はLiving ColourのVernon Reidがプロデュース、ギターで参加。特に後者はパンキッシュな勢いさえ感じさせる。"Full Moon"はPaolo Rustichelli(key、p 73年にCarlo Bordiniと連盟で"Opera Prima"というイタリアン・プログレ作を出している)が書いた曲。"Who's That Lady"はIsley Brothersによる曲。最後の"Gooness and Mercy"はライブ(88年のMontreux Jazz Festivalからの音源でしょうか?)で締め括られている。



Solo etc
Carlos Santana Mahavishnu John McLaughlin "Love Devotion Surrender" ('73)当時SantanaはJohn McLaughlin率いるMahavishnu Orchestraに非常に傾倒しており、そのスピリットも気に入っていたという。そこでJohn McLaughlinの導師シュリ・チンモイを紹介してもらう。本作はそのシュリ・チンモイの教えの中核をなす"Love Devotion Surrender"を柱に、John McLaughlinを通して発見したジャズ、特にJohn Coltraneへのトリビュートとして製作された。オープニングの"A Love Supreme"はパート1の"Acknowledgement"より。お互いがお互いのプレイを昇華させるように織り成す交互に表れては音を紡ぐ様は正にJohn Coltrane的ともいえるだろう。またLarry Youngのオルガンがしっかりと音楽観を作っている。同じくJohn Coltrane作の"Naima"は二人のアコースティック・ギターでしっとりと聴かせる。"Let Us Go into the House of the Lord"はトラッド。Pharaoh Saundersの影響だろうか?本作最後の"Meditation"はJohn McLaughlinによるピアノにCarlos Santanaのアコースティック・ギターで締め括られている。その他に本作ではSantanaからArmando Peraza(congas)、Doug Rauch(b)、Mike Shrieve(ds)、Mahavishnu人脈からBilly Cobham(ds)、Jan Hammer(ds)、Don Alias(ds)が参加している。
Turiya Alice Coltrane Devadip Carlos Santana "Illuminations" ('74)Turiya Alice Coltrane(harp、p、organ)、Devadip Carlos Santana(g)、Tom Coster(ele p、organ)、David Holland(ac. b)、Jack DeJohnette(ds)、Jules Broussard(flute、sax)というメンツにArmando Peraza(conga)、Phil Ford(tabla)が"Angel of Sunlight"に参加。更に総数18名によるストリング・オーケストラが美しい旋律を奏でる秀作。Sri Chinmoyの詠唱(?)からオーケストレーションをバックに叙情的なアンサンブルが繰り広げられる。"Angel of Air"、"Angel of Water"と気、水をモチーフに続いて"Bliss: the Eternal Now"ではオーケストレーションを先導するかのようなTuriya Alice Coltraneのハープが素晴らしい。"Angel of Sunlight"では(太陽)光をモチーフにDevadip Carlos Santanaのソロに絡むようなDavid Hollandのベース、光が拡散するかのような広がりを持つTom CosterとTuriya Alice Coltraneののサウンドが一つの世界観を提示する。後半のJules Broussardのsaxソロも必聴。そして、美しいストリングに導かれて出てくる"Illuminations"は正に桃源郷そのものを音にしたかのようなオープニングが素晴らしい。
Devadip Carlos Santana "Oneness Silver Dreams Golden Reality" ('79)まず冒頭6曲が76年大阪公演からとなっている。まるでプログレッシブロックのような白熱したインスト・ナンバーを収録している。本編は既に引退して教会活動に従事していたR&BのパイオニアSaunders Kingを擁したソウルフル/ピースフルなメッセージ・ソング。そして一転してSantanaのギターが咆哮をあげるインスト・ナンバー"Cry of the Wilderness"、叙情的な"Guru's Song"は師Sri Chinmoyの作曲となっている。"Life is Just a Passing Parade"と"Free as the Morning Sun"ではGreg Walkerがヴォーカルを担当。伸びやかな喉を披露している。特に後者はSantanaらしいラテン・パーカッションが活躍する躍動感溢れる曲。"I am Free (excerpt from the Soul-Bird)"はキーボードをバックにSantanaの奥さんDeborah SantanaがSri Chinmoyの詩を朗読するナンバー。アルバム最後を飾るのはNarada Michael Waldenが作曲した"Song for Devadip"。Narada Michael Walden本人もキーボードで参加。初のソロ名義とあって多くの側面を見せるアルバムだが、どれもSantanaが今まで見せてきた側面であるので、突拍子ないという事は全くない。特に生を謳歌するかのようなSantanaのギターが素晴らしい秀作。
Devadip Carlos Santana "The Swing of Delight" ('80)愛らしいジャケットに惑わされてはいけない、Carlos Santanaのソロ2作目(2枚組)。Miles Davis、Head Huntersで活躍したHerbie Hancock(key)を相方にArmando Peraza(perc.)、Raul Rekow(perc.)、Orestes Vilato(perc.)、Francisco Aguabella(perc.)といったいつものパーカッション奏者にゲストという形で縦横無尽なジャズ・ロックを展開する。特にSri Chinmoy作の冒頭の"Swapan Tari"や"Jharna Kala"の疾走感、躍動感が素晴らしい。前者では特にTony Williamsのドラムが素晴らしい。Wayne Shorterのサックス、Ron Carterのベース、Harvey Masonのドラムを従えた60年の映画「Spartacus」より"Love Theme from Spartacus"ではブルージーでメローなSantana特有の泣きが聴ける曲。"La Llave"はAlex Ligertwoodがヴォーカルを入れた唯一の歌物。ラテン・パーカッション大活躍の躍動感溢れる曲。最後はWayne Shorter作の"Shere Khan, the Tiger"(後にWayne Shorterのソロ・アルバム"Atlantis"で再録される)。アニメ「ジャングル・ブック」に出てきたトラ、シア・カーンを題材にしたものだろう。雄大なスケールを持つ曲。本作はジャズ・ロック・ファン必聴のアルバム。
Carlos Santana "Havana Moon" ('83)導師Sri Chinmoyの元を離れたのでDevadipが名前から外れた最初のソロ作。キーボードにStaxレーベルを支えてきたBooker T.Jonesを迎えている。まずは61年にヒットしたBobby Parkerの"Watch Your Step"から始まる。ヴォーカルはGreg Walker。ホーンはTower of Power。続く"Ligtnin'"ではJimmie Vaughan(Stevie Ray Vaughanの兄でFabulous Thunderbirds在籍)とギターを分け合っている。時代を反映したキャッチーなインスト。そしてBo Diddleyの"Who do You Love"へと。ヴォーカルとハーモニカはFabulous ThunderbirdsのKim Wilson。そして再びKim Wilsonのハーモニカが活躍するインスト"Mudbone"へと。Booker T.JonesとBarry Beckettのツイン・キーボードにJimmie Vaughanとのギターを分け合う本作を象徴するようなナンバーで力強くも繊細なSantanaらしいナンバー。Booker T.Jones作による"One with You"ではBooker T.Jonesがリードヴォーカルを担当。メローなナンバーで後半からギターが盛り上げていく曲。"Ecuador"はOrestes Vilatóのフルートの幽玄な響きと押さえに押さえたパーカッションが絡む小曲。Satanaの"Zebop!"アルバムから名インスト"Tales of Kilimanjaro"が収録され(同じ収録だと思います)、ラテン・パーカッションたっぷりなヴァージョンのChuck Berry作の"Havana Moon"へと。"Daughter of the Night"はThe HolliesにいたMikael Rickforsのカヴァー(1stソロ"Mikael Rickfors"に収録)。アイオワ出身のフォークシンガーGreg Brown作の"They All Went to Mexico"ではWillie Nelsonがリードヴォーカルを担当。最後の"Vereda Tropical"は40年代に活躍したGonzalo Curielによるスタンダード曲で締めくくられている。ヴォーカルはJoe Santana(クレジットはcantadorとなっている)。
Carlos Santana "Blues for Salvador" ('87)NYCにあるスパニッシュ・ハーレムやサンフランシスコのAquatic Park(海岸沿いの公園)をモチーフに作ったとされる曲。スパニッシュ・ハーレムの喧騒を思わせる前半からGreg Walkerのヴォーカルが入ると一気にサンフランシスコの情景が広がる。自身の愛娘Stellaのために書いた"Bella"はWes Montgomery、Otis Rush、Buddy Guy、T Bone Walker、John McLaughlinに対する敬意を表した曲。Santanaらしい泣きのギターが堪能出来るバラード。"'Trane"はtony Williams(ds)が参加した力強いインスト・ロック・チューン。続く"Deeper, Dig Deper"は"Freedom"にも収められていた曲のインスト版。"Mingus"はタイトル通りCharlie Mingusに捧げた曲。インドっぽいイントロから始まる"Now that You Know"は85年米ツアーからの即興曲。徐々に盛り上がる様は正にSantanaの真骨頂だろう。ヴォーカルはAlex Ligertwood。"Hannibal"は"Zebop!"からの曲だがKeith Olsenによる録音/ミックスを担当したバージョンがここでは使われている。最後は表題曲で締めくくられている。当時悲惨な状態だったエル・サルバドルへの想いが伝わる。この"Blues for Salvador"と"Deeper, Dig Deeper"は一発録りのテイク。
Santana Brothers('94)Carlos、Jorge Santana兄弟に甥っ子のCarlos Hernandez(g)の3人を中心にMyron Dove(b)、Chester Thompson(key)、Karl Perazzo(ds)、Walfredo Reyes(ds)、Billy Johnson(ds)と言ったいつもの顔ぶれがサポート。Carlos Santanaの一聴してそれと判るぶっといサウンドはロドリゴのカヴァー"En Aranjez Con Tu Amor"(恋のアランフェス)やVergas Blues Bandの"Blues Latino"などの独特のSantanaリズムにぴったりと来る。3人の中で最も本能に忠実にギターを弾く、ある種、獣的な感性を持っているように聴こえる。Carlos Hernandez主導の"Thoughts"は最もメロディアスな曲。Carlos Santanaがイントロを担当し本編でCarlos Hernandezが弾き捲くる"Brujo"の勢いも素晴らしい。元Maloで活躍したJorge Santanaの楽曲はジャズ・ロック色が強いように感じる。冒頭の"Transmutation / Industrial"ではまるでRobert Fripp並の鋭利なギターを聴かせる。そしてブラジリアン・ギタリストBola Seteのカヴァー"Morning in Marin"の美しさは特筆に価する。最後に本作はCraig Lasher、Sonny Sharrock、Albert Collins、Eric Gale、Joe Passに捧げる、とある。

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