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Queen "News of the World" ('77) ベタベタなのを承知で、これ。Queenというバンドが持つ、猥雑さ、虚構性みたいなものが最初に顕著に出たアルバムだと思うから。チープなイラストのジャケットから中身から。これ以前は、創造性豊かなユニークな側面を持ったロックバンド、だったと思う。何がここから変わったのか。このアルバムの冒頭2曲、"We will Rock You"と"We are the Champions"は現在世界で最も有名なロックチューンと言っても過言ではないと思うんだけど、それよりも最後のキャバレーソングのような"My Melancholy Blues"やソウル/ファンク色が強い"Get Down, Make Love"のようなセックスアピールの強い曲にFreddie Mercuryの孤高の魂を感じてしまう。そして、何と言っても、このアルバムにはQueen随一のパンキッシュなスピード・ソング"Sheer Heart Attack"が入っている!リズムギターとベースはRoger Taylorが担当していた。この頃のQueenは作曲者が曲のイニシアティブを握るのが常で、それもQueenらしさを醸し出していた要因かもしれない。John Deaconらしい"Spread Your Wings"、Brian Mayのオールディーズっぽいロックンロールソング"Sleeping on the Sidewalk"もこのアルバムの性質をよく顕してもいる。Freddie Mercuryは自身をこう呼んだ。"I'm just a musical prostitute"。良くも悪くもそこにQueenの殆どが集約されていた。  
Quiet Riot "Quiet Riot" ('88) これをQuiet Riotのアルバムと呼ぶかどうかは確かに。元々SladeのカヴァーなどでLAメタルの代表格的なサウンドを持つバンドだったので、いくらFrankie Banali(ds)とCarlos Cavazo(g)がいるからとは言え、ヴォーカルが元Rough CuttのPaul Shortinoに迎えたことで思い切りブルージーな路線に切り替えたことに違和感を感じるファンは多少なりともいた。ただ、それをいとも簡単にひっくり返してしまうだけの楽曲の充実度があったのも事実だろう。ベースにSean McNabb(一部Jimmy Johnsonが参加)が加わるというラインナップ。そして見逃してはいけないのはアルバム冒頭"Stay with Me Tonight"のイントロでも聴けるオルガン・サウンド。これは元New England、AlcatrazzのJimmy Waldoによるもの。作曲にも5曲で参加、と重宝されていたのが判る。オープニングのJon Lordバリのオルガン・サウンドに象徴されるように今までのスリージーなグラム系メタル・サウンドとは一線を画するブルージーでオーガニックなメタル作に仕上がっている。確かにこの頃、メタル界隈ではブルーズ(ロック)回帰が叫ばれていた時代であり、そういった時流を敏感に嗅ぎ取った作品とも言えるだろう。Paul Shortinoのヴォーカルも思い切りRobert Plantを意識した感じ。例の「プゥ〜ッシュ、プゥ〜ッシュ、プゥ〜ッシュ」もやっている。当時買ったアナログしか持っていなくて、やっと最近CDで手に入れました。やっぱり、捨曲なしの名盤。因みに疾走感が気持ち良い"King of the Hill"にはTrevor Rabinも作曲でクレジットされている。"Lunar Obsession"は1分強のキーボードをバックにしたギター・ソロをメインにした静かな感じのインスト曲。
Queensrÿche "Operation: Mindcrime" ('88) 当時、未だにアナログLP派も多く残っていた時、本作はそれでもCDで聴かないとこの凄さは伝わらないのではないだろうか?という論調が出るほど、本作のサウンドは当時としては緻密で緊張感の高いものであった。ヘヴィーメタルという分野において元々プログレシッブ・ロック的な手法というのは継承されており、The Whoの"Tommy"に代表されるようなロック・オペラは既に手垢に塗れた手法ではあったが、コンセプト・アルバムとして物語とサウンドがここまで合致出来たのはQueensrÿcheだからこそ為しえた、と言えるだろう。その物語はヘロイン中毒のNikkiがDr.X率いる革命を企む地下組織によって洗脳され、暗殺者として操られる。そこで出会ったシスターMaryと組織を抜けようとするが、という内容。シスターMary役にPamela Mooreを置き、物語をよりダイナミックに表現することに成功している。重厚なリズム隊にChris De GarmoとMichael Wiltonのヘヴィーでメロディアスなギターが随所で要となる。また"Electric Requiem"でのScott Rockenfieldのインプットが後の活動の仕方も示唆していており、非常に興味深い。一寸の隙もないヘヴィー・メタルの名盤。因みに06年に続編である"Operation: Mindcrime II"が作成される。



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M.E.



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