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King Crimson
"In the Court of Crimson King"('69)
このアルバムが生まれたのって、時代が持つ磁場みたいなものとメンバーの音楽背景と冒頭のヴォーカル・エフェクトに代表されるような新しい技術等が全てのピースが一つのアルバムへと帰結した結果に思える。69年という時代にあって、未だにその瑞々しさを保つ"I Talk to the Wind"のメロトロンやヴォーカルの質感の温かさ。そんな曲でもMichael Gilesのドラムの妙技が素晴らしくもある。冒頭の"21st Century Schizoid Man"はそのヘヴィーさばかりが取り沙汰されるが、"Mirrors"におけるギターソロにKing Crimson流(もしくはRobert Frippの、と言うべきか?)のブルースロックへの回答のような流れを見る思いがする。伝統音楽のしなやかさと郷愁、ジャズなどに代表される即興性、ロックの持つパワー、と様々な音楽的語彙と手法をたっぷりと吸収し、この1枚に投影したセンスと技術は比類無きものだろう。"I Talk to the Wind"や表題曲がIan McDonaldとPete Sinfield(作詞)による物という事実からも判るように、Ian McDonaldが音楽的なイニシアティブを握っていた事も窺える。Greg Lakeのヴォーカル・プレゼンテーションも素晴らしくPete Sinfieldの詩世界を完璧にまで表現している。どんなに言葉を連ねてみた所で、この名盤の前にはどんな言葉も陳腐に聞こえてしまうのは致し方なし、だろう。
Kestrel ('74) Tom Knowles(lead vo)、後にSpiders from Marsに参加するDave Black(g)、John Cook(key)、元Gin-HouseのDavid Whittaker(ds)、Fenwick Moire(b)からなる。ジャジーな味付けを持つJohn Cookのキーボード・プレイが良い。センスの良いギターを奏でるDave Blackや伸びのある情感豊かな喉を披露するTom Knowlesのヴォーカルなどが特徴だろうか。リズム隊は意外と硬質で時にYes的にも聴こえる。矢張り圧巻は最後の"August Carol"の後半から始まる怒涛のメロトロンの洪水、という事だろうか(メロトロンそのものは随所で使われている)。そして、決して泣きに走らないDave Blackのギターが絡む。これのせいで、このKestrelは思い切りプログレ志向なバンドとなってしまった。あくまでも気持ち良いヴォーカル・ハーモニーなども多用しながらポップ志向を持った、ギター・ロックが基本。そうなると、プログレにしたのは、やっぱりJohn Cookのキーボードだな。キーボードとヴォーカルの絡みが美しい"End of the Affair"のみJohn Cook作で残りは全てDave Black作曲による。昔、テイチクから出ていたよね?裏ジャケがないシリーズじゃなかったかな?
Kiss "Crazy Nights" ('87) Kissといえば、大概メイク時代、となるのだろう。が、しかし、この作品は特別だろう。この作品を引っ提げてKissは実に10年ぶりの3度目の来日公演を行う。Ron Nevison特有の磨かれたプロデュースはKissファンには賛否両論あったかもしれない。が、それよりもキャッチーな楽曲に彩られたKissワールドに、非常に自然に曲のために挿入されたBruce Kulickのギター・ソロが何と言っても秀逸。"No No No"のオープニングもその最たるものかもしれない。そして、Paul Stanleyのヴォーカルは改めて聴くと意外と滑舌が悪く、その分、歌う、というよりは声がメロディー楽器的な役割に主軸を置いてあるようにも聴こえる。歌詞よりもメロディーの重点を置く手法は訴えたい言葉やメッセージよりもサウンドや楽曲そのものに焦点を置いており、現在のあり方とはちょっと違うようにも感じる。確かに今聴けば"Bang Bang You"の歌詞なんて酷いもんだ(「I'm gonna shoot you down with my love gun, baby」)。88年4月の武道館が蘇ってくる。小さな体でパワフルなドラムを叩きつけるEric Carrの雄姿は決して忘れない。そしてEric Carrの歌う"Black Diamond"。

 

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M.E.

 

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