Jack Bruce Pt.4

Jack Bruce Part 4

Pt.4です。セッションあれやこれや。


Sessions
Martha Veléz
"Fiends & Angels" ('69)
Jimi Hendrixと共にWoodstockに立ったGerardo Velézの妹。楽曲の殆どがブルース・カヴァーとなっているMike Vernonプロデュースによるデビュー作。よって、Mike Vernon人脈総動員となる。Martha VelézによるとJack Bruceはオープニング・トラックのBobby Powellが歌った"I'm gonna Leave You"とLightning Hopkinsの"Feel So Bad"にEric Clapton(g)とMitch Mitchell(ds)とのトリオで参加。"Feel So Bad"ではハーモニカもJack Bruceによるもの。ベースよりも存在感がある。この曲での最後のEric Claptonによるソロは白眉。その他にもChicken Shackがバックを務めたMemphis Minnieの"In My Girlish Days"やBob Dylanの"It Takes a Lot to Laugh, It Takes a Train to Cry"など聴き 所満載。自作曲もあるが、カヴァー曲の選曲が意外とマニアック。ただ、女性ヴォーカルによる曲が多く選ばれており、その辺りは本人によるものかな?とも思わなくはない。Janis Joplinなどよりも、もっとスコーンと抜けるようなハスキーな喉が特徴。詳細はこちら。
Michael Gibbs ('70)英ジャズ・トロンボーン奏者、作曲家であるMichael Gibbs名義による1stアルバム。ジャズ・オーケストラ作品を基調とした楽曲が並ぶ中、Jack Bruce(b)はChris Spedding(b)、Ray Russell(g)、Ken Wheeler(flug)と共に"Some Echoes, Some Shadows (for John Dankworth)"に参加。前半のジャズ・オーケストラからホンキー・トンク調のピアノを跨いでエレクトリック・ギター、ベースがノイジーに唸り始める。ディストーションのかかったヘヴィなベースが鳴る。クレジットではJack BruceとChris Speddingの両者がベース・プレイヤーとしてクレジットされているが、もしかしたら、エレクトリック・セクション最後のヘヴィなノイズを叩きつけるパートがこの二人の共演パートかもしれない。そしてフリューゲルホーンを使ったセクションへと進む。この曲はMichael Gibbsも参加していたJohn Dankworthへ、というクレジットがある。この時代にしか生まれえなかった曲かもしれない。他にもAlan SkidmoreやJohn Surmanなどが参加。ジャケットは"Tanglewood 63"との2枚組再発盤のジャケット。
Lou Reed
"Berlin" ('73)
元Velvet UndergroundであるLou Reedによる3rdソロ。Bob Ezlinをプロデュースに迎えたベルリンを舞台にしたコンセプト・アルバム。場末のバーかキャバレーのような喧騒の中で静かにAllan Macmillanのピアノが流れる演出で始まる。荘厳なサウンドを持つ"Lady Day"が素晴らしい。"Caroline Says"ではサイケポップの常套手段であるストリングが鳴り響く。"How do You Think It Feels"の管のポップさと鋭いギターとのマッチングも面白い。よくよく聴くとJack Bruceの特徴あるサウンドもよく鳴っている("Lady Day"と"The Kids"以外で参加)。その他にJohn MayallのHeartbreakers等に参加したAynsley Dunbar(ds)、Traffic等のSteve Winwood(organ、harmonium)、Procol HarumのB.J.Wilson(ds "Lady Day"と"The Kids"のみ)、StrawbsのBlue Weaver(p "Men of Good Fortune"のみ)といった英国勢とSteve Hunter(g)、Dick Wagner(g)というAlice Cooper組、Tony Levin(b "The Kids"のみ)、Michael、Randy Brecker兄弟(管)といった米国組の混合チームで製作されている。実は"The Kids"や"The Bed"のようにアコースティック・ギターをしっとりと弾くのがLou Reedの真骨頂なのかもしれない…。
Frank Zappa
"Apostrophe (')" ('74)
Jack Bruceは本作でベースとクレジットされており、Jim Gordon(ds)と一緒に表題曲のジャム・セッションに参加しているとされている。リズム・ギターにTony Duranが参加。この参加は色々と逸話が多いセッションらしく、Jack Bruce本人は、当時Carla Bleyのアルバムに参加しており、チェロを持ってオープニングのサイケっぽい音を入れただけ、といった記述もあるようだ。どう聴いても、このベースは本人っぽいですけどね。方やFrank ZappaもJack BruceはJim Gordonの知り合いだから呼んでみたんだけど、プレイが忙しすぎて何をしたら良いのか判らなかったよ。サウンドの土台となるようなベースラインは弾きたくなかったんだろう。でも、それがジャムってモンさ、みたいな。もしかしたら、Jack Bruceにはあまり合わなかったのか忘れたいセッションなのかもしれません。Jack Bruceが参加していたから、という訳では決してないだろうけど、このアルバムはビルボード・チャートでも10位という好アクションを記録したアルバム。冒頭の"Don't Eat the Yellow Snow"と、相変わらず。冒頭曲はそのまま"Nanook Rubs It"へと流れる。こういう子供っぽいギャグを女性コーラスまで揃えてクールなR&Bに仕上げたり、と。ジャジーなセクションやインタープレイが用意されていたり、基本、音だけでも楽しいアルバム。但し、歌詞に耳を奪われると、笑ってしまうので、あまり電車の中とかでは聴かない方が良い。小難しい事を考えるとこの稀代の天才を見誤りそう。少なくとも私はそう思うことにした。
Les Dudek
"Ghost Town Parade" ('78)
Allman Brother Band("Brothers and Sisters")の参加を経て、The Steve Miller Bandに参加後、ソロに転向(Journeyへの参加も打診されたそう)。本作は3rdアルバムとなる。Jack Bruceは冒頭の"Central Park"でバックヴォーカルで参加。この曲ではCarmine Appice(ds)、Robert Popwell(b)、Mike Finnigan(key)、Max Gronenthal(key)とセッションの達人達が参加。その他にはJim Keltner(ds)、Jeff Porcaro(ds)、Gerald Johnson(b)、Gary Mullaber(ds)等が参加。"Bound to be a Change"と"Friend of Mine"ではJim Kruegerが参加。後にLes DudekはMike FinniganとJim KruegerとDFK Bandを組閣する。Paul Penaの"Gonna Move"のカヴァー以外はLes Dudek作(Max GronenthalやDavid Brownとの共作を含む)。肝心の冒頭曲では、殊更Jack Bruceとクレジットするほど声は聴こえない。但し、Les Dudekのブルージーなギターは秀逸。エッジの効いたダンサンブルな冒頭曲や"Does Anybody Care"はレゲエに影響された曲、ハードなエッジを持った"Friend of Mine"(最後のギターソロが凄い)、ポップで耳当たりの良いオーケストレーションを持つ"Tears Turn into Diamonds"とバラエティーに富んだ作風。
Jon Anderson
"Song of Seven" ('80)
Yesを脱退したばかりのJon Andersonのソロ2作目。作曲、プロデュースもJon Anderson本人。前作"Olias of Sunhillow"がパフォーマンスも全てJon Andersonだったのに対して今作ではゲストを迎えて作品を仕上げている。Jon Andersonはヴォーカル、アコースティック・ギター、ハープ、キーボード、シンセを担当。その他にIan Bairnson(g、b、vo)、Ronnie Leahy(key)、Maurice Pert(perc.)、John Giblin(b)、Johnny Dankworth(sax)等が参加。Jack Bruceはオープニングからそれと判るプレイを"Heart of the Matter"でSimon Phillips(ds)、Clem Clemson(g)、Dick Morrisay(sax)といった馴染みのあるメンバーと参加。全体的にもJon Andersonらしい嫌味のないハッピーなフィーリングに満ち溢れたポジティブな作品。"Everybody Loves You"(元々Yesのデモ作?)や最後の長尺な表題曲はYesらしい雰囲気をも纏った作品。
Cozy Powell
"Tilt" ('81)
81年に発表された2nd。Jack Bruceは冒頭のJan Hammer作による"Cat Moves"でJeff Beck、John Cook(key Slack Alice等)、David Sancious(synth solo)と共に参加。ファンキーなノリを持つ、この頃のJeff BeckらしいプレイにJack Bruceの特徴的なサウンドが邪魔することなく曲に彩りを添える。David Sanciousのソロも破壊的なサウンド。Jan Hammerはもう1曲"Hot Rock"を提供。こちらでもJeff BeckとJohn Cookが参加。モーター・スポーツ・ファンらしいスピーディーな"The Blister"はGary Moore(g)とDon Airey(key、moog bass)のColosseum II組。ギター・クレイジーの異名を持つGary Mooreの面目躍如といったところだろうか。オープニングの台詞(?)は3大レースの一つIndy 500のスタート時のものだろう。その他にもBedlam時代の盟友Frank Aiello(vo)を迎えた"Living a Lie"や、StretchのKirby(g)とElmer Gantry(vo)にChris Glen(b MSG等)を擁した"The Right Side"、"Jekyll & Hyde"、"Sooner or Later"の3曲が用意された。確かに"Sooner or Later"はRainbowの"Since You've been Gone"を意識した曲。
Trevor Rabin
"Wolf" ('81)
南ア出身のマルチ・プレイヤーTrevor Rabin(vo、g、b、key)の3rdソロ。共同プロデューサーにKinksのRay Daviesを起用しているのに驚いた。レーベルからの意向だろうか?1st、2nd共に最小限のゲストに殆ど自分の手でレコーディングを行っていたが、今作ではこれでもか、というほどのゲストを用意する。ベースにJack BruceとMo Fosterとジャズにも強い面々を用意。キーボードに同郷のManfred MannにRabbitt。ドラムにSimon Phillips。アディショナル・ヴォーカルにChris Thompson、Steve Lange、Noel McCallaと非常にヴァラエティ豊かな豪華なゲスト陣。但し、Trevor Rabinのアクの強さか、どこで誰が何をやっているのか特徴さえも掴めない状態。音楽性は所謂ハーモニーを効かせた産業ロック(Styxなハーモニーに近いように思う)にヘヴィー・メタリックなギターをあちこちに散りばめた感じ。80年代のお約束事をしっかりとこれでもかと踏襲した流れと作りにその時代を通過したファンはニヤリとするかもしれない。Trevor Rabinのポップ・センスが十分に発揮された作品。また誰と組もうとTrevor RabinはTrevor Rabinの世界しか作れない、という事を既にこの時点で提示している。故に90125Yesはなるべくしてなった作品でもある、という事だろう。
Jon Anderson
"Animation" ('82)
前作に引き続き参加したJon Andersonの3rdソロ。基本はJon Andersonらしいポップで良くも悪くも大仰なアルバム。Stefano Cerri(b イタリアン・ジャズ・ギタリストのFranco Cerriの息子)、Clem Clempson(g)、Simon Phillips(ds)、David Sancious(key)というバンドが基本にJack Bruce、Dave Lawson、Ronnie Leahy、Blue Weaver、Ian Wallace、John Giblinなどゲストを多数用意してある。管はDick Morriseyがアレンジを手掛け、Henry Lowther、Chris Payne、Tony Stantonが担当。中心となるメンバーを見るとJack Bruce絡みなのが判る。本作では、時代柄、様々なシンセ音が飛び交うのが印象的。ハードなオープニング"Olympia"、Jon Andersonらしい表題曲、レゲエ調の"Surrender"、テクノに影響された"Unlearning(the Dividing Line)"や"Pressure Point"などがある。詳しいクレジットはないが"All in a Matter of Time"の硬質なサウンドとかはらしい感じがする。更に06年の再発時に元々本作のコンセプトとなった11分に及ぶ"The Spell"、シングル"Surrender"のB面となった"Spider"がボーナスに収められている。
Kip Hanrahan
"Days and Nights of Blue Luck Inverted"('96)
まるで映画を見ているような、そんな作品。Duke Ellingtonで有名な"Love is like a Cigarette"で始まる本作は、官能的、という言葉が一番しっくり来る。Jack Bruceのベースラインから発展して出来た"Marriage"なども収録されている。本作では4つのバンドが起用されている。Jack Bruce(ele.b)はAndy Gonzalez(b)、Steve Swallow(ele.b、piano、ele.p)、Manenquito Giovanni Hidalgo(congas)、Milton Cardona(congas)、Ignacio Berroa(trap ds)、Peter Scherer(p、synclavier)、Anton Fier(lyndrum)、Kip Hanrahan(vo、lyndrum、synclavier)というリズムを強調した編成で参加。"Marriage"以外にも恐らく続く"American Clave"(これはKip Hanrahan主催のレーベル名にもなっている)でもプレイしているように聴こえる。
Crazy Chris Kramer & Friends "Vol.1 Guarantee for the Blues" ('01)ドイツ出身のブルーズ・ハープ/ブルーズ・ギター・プレイヤーCrazy Chris Kramerのアルバム。オープニングからWoodie Guthrieの"I ain't Got No Home"から幕を開けるところから、このアルバムの性質が判ろうというもの。Jack Bruceは続く"I Wanna Rock"と"Keep on Rockign the Road"でベースで参加。前者はロカビリー・タイプ、後者はシカゴ・ブルーズ系の曲。その他にもLong John Baldryがヴォーカル/ギターで参加した"Maggie Bell"、"Back Water Blues"やSuperchargeのAlbie Donnelly(sax、vo)がSuperchargeのヒット曲"You Gotta Change Your Ways"をPete York(ds)とColin Hodgkinson(b)と披露していたりする。
Crazy Chris Kramer & Friends "Vol.3 Guarantee for the Blues" ('03)同アルバム第3弾。Jack Bruceは"I was 19 Years Old"でベースで参加。Chris Kramerによるスローなブルーズ・ナンバーなんだけど、お世辞にも肝心のハーモニカやヴォーカルが上手い、という訳ではない。その他にPete York(ds)、Colin Hodgkinson(b)というリズム隊が参加した"Don't Wish I was Dead"やTom Shaka(g、vo)が参加したLightnin' Hopkinsの"Apetite Blues"などがある。その他のカヴァーではJunior Wellsで有名な"Messin' with the Kid"、Luther Allisonの"Life is a Bitch"などのブルーズ・スタンダード、Tom Shakaによる"Bless My Soul"、Frank Diez(70年代Armageddonという独製ハードロックバンドなどで活躍)が参加した自作曲"Train, Sweet Train"、Paul Millns(p、vo)が参加した自作曲"Finally Falls the Rain"が収められている。
Mick Jagger
"The Very Best of Mick Jagger" ('07)
Rolling StonesのヴォーカリストMick Jaggerのソロ・ベスト。Mick Jaggerのソロ作"She's the Boss"('85)、"Primitive Cool"('87)、"Wandering Spirit"('93)、"Goddess in the Doorway('01)の4作のソロ作以外にも映画"Performance"のサントラから"Memo from Turner"、同じく"Alfie"からDave Stewartとデュオ"Old Habits Die Hard"、レゲエ・ミュージシャンのPeter Tosh(元The Wailing Wailers)のアルバムから"(You Got to Walk and) Don't Look Back"、ライブ・エイドで上映されたDavid Bowieとのデュオ"Dancing on the Street"、The Red Devilsとの共演を収めた"Checkin' Up on My Baby"や"Charmed Life"といった未発表曲などが収められている。そしてJack Bruceは73年、John Lennonプロデュースの未発表曲"Too Many Cooks(Spoil the Soup)"に名ギタリストJesse Ed Davis&Danny Kortchmar、Al Kooper(key)バック・ヴォーカルにHarry Nilssonらと一緒に一聴してそれと判るベース・プレイを披露している。本作では特に時系列に曲を並べず乱雑に収めることで、その時代その時代のサウンドが独立して聴けて印象的。古くからのファンは当時を思い出すだろう。本作はMick Jaggerがサウンド・トレンドを常に意識してソロを作り上げてきた証拠を示す絶好のサンプル。全17曲。


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