Gordon Giltrap

Gordon Giltrap

Gordon Giltarp ('68) / Portrait ('69)Transatlanticレーベルから発表されたGordon Giltarpのデビュー・アルバム"Gordon Giltrap"と2nd"Portrait"の2in1 CD。両者ともGordon Giltrapのアコースティック・ギターとヴォーカルのみのフォーク・スタイルが聴けるのが特徴だろう。独学で身に付けたというギターを遺憾なく発揮した作品となっており、1stの方は半数の6曲がインスト・ナンバーで2ndでは5曲インストが収められている。特に2ndに収められている"Lucifer's Cage"ではギターを左右のチャンネルに振り分けたり、"Confusion"の冒頭では異様にテンションをきつくした弦で筝のような音を出したりと、サウンドにちょっとした工夫を凝らしているのも特徴だろうか。朗々と歌うGordon Giltrapのヴォーカルも素晴らしい。フォークというと弾き語り、というのを連想しがちだが、本2作ではギターをダブルで録音していたり、12弦を使用したりと重厚な作品に仕上げている。全24曲(12曲+12曲)Gordon Giltrapによる自作ナンバー。プロデュースはBill Leader。英フォーク必聴盤の1枚ではないだろうか。
A Testament of Time ('71)Accoladeのメンバーとして1枚アルバムを出した後(未聴)に出されたアルバム。本作にはプロデューサーにDeep Purple等で有名なDerek Lawrenceが担当。Accoladeに参加したことにより、バンド・メンバーの一員になる、というアイディアを気に入ったGordon Giltrapはあちこちでオーディションを受けまくったようで、その折にDerek Lawrenceに引き合わされ、本作の制作に入ったよう。オーケストレーションにDel Newmanが起用される(この時、奇しくもCat StevensともDel Newmanは作業していたようだ)。Del Newmanの優美なオーケストレーションがGordon Giltrapのギターと全編に亘って交わり、鮮やかな色彩を加えていく。ジャズ・ベーシストChris Lawrenceも参加。"Catwalk Blues"などでの太いプレイが印象的。ナイーヴでいながら英国的な牧歌的な情景が浮かび上がる作品。"Harlequin"、"Catwalk Blues"、"King Ransom"の3曲がインスト。特にアルバム最後を飾る"King Ransom"の典雅なオーケストレーションとGordon Giltrapのギターは必聴。
Visionary ('76)William Blakeの詩作から着想を得て製作されたオール・インスト・アルバム。セッションで渡り歩いてきたSimon Phillips(ds)、Caravanなどカンタベリー周辺で活動したJohn G Perry(b)、Rod Edwards(key)を軸にR.W. Hudson(trumpet)、Henry Lowther(trumpet)、Chris Mercer(sax)、Jeff Daly(sax)、Chris Payne(trombone)などが参加。アレンジにRod EdwardsとEdwards Hand時代からの相棒Roger Hand(perc.)が担当。ストリングスも参加している。これまでのフォーク路線とは一線を画して、典雅でクラシカルな路線。Gordon Giltrapのアコースティック・ギターを前面に宮廷音楽の如く美しいメロディーをRod Edwardsが織り成す。オープニングの"Awakening"からRod Edwardsのキーボードの音がチェンバロ系で大仰なストリングスが重なる。ゲストに迎えられたホーン・セクションもジャズやファンクへ行かず、ファンファーレのようなクラシカルな佇まいを持つ。"Lucifer's Cage"は2ndに収録されていた曲の再録。ボーナス・トラック3曲の内一つはC. Hubert H. Parry の"Jerusalem"(本編に入っていてもおかしくない当然な選択)と"Visionary (original version)"と題された15分にも及ぶトラックは 各曲のテーマ部からなる曲。
Perilous Journey ('77)中心メンバーは前作と同じ。作風も前作と同様にクラシカルで典雅なサウンドで敷き詰められたインスト・アルバム。前作と比べると僅かばかりリラックスした印象を受けるのは前作での音楽的方向性が受け入れられたからだろうか?トランペットにHenry Lowther、Martin Drover、テナー・サックスにStan Sultzman、バリトン・サックスにJeff Daly、トロンボーンにChris Pyneが参加。ストリングスはPat Halling指揮。またゲストにRoger Ball(alto sax The Average White Band)が"The Deserter"と"Morbio Gorge"、Malcolm Duncan(同じくThe Average White Band)が後者にテナー・サックス・ソロを挿入している。特に前者はRoger Ballらしいサウンドが入ったAOR色が強い作風に仕上がっている。またシングルカットされた"Heartsong"がイギリスでヒット。ライナーにヘルマン・ヘッセの「東方への旅」からの一文「Children live on one side of despair, the awakened on the other side」があるが、本作のモチーフとなっているのだろうか?99年再発盤ではボーナス・トラックに"Heartsong"のオリジナル・レコーディングにThe Wren Orchestraと一緒にやった"Quest"の壮大なバージョン、"Guitar & Piano"と題されたでも音源が聴け、こちらも必聴。
Fear of the Dark ('78)"Visionary"、"Perilous Journey"と本作で3部作と取る向きもあるよう。個人的には前作、前前作と比べ、バンド・サウンドになってきた、というイメージ。それまではGordon Giltrapとバックバンドという音像だったのが、本作ではしっかりと曲の中にバンド・アンサンブルが溶け込んでいる印象。2部からなる"Roots"で幕を開け、"Nightrider"ではRichard Harvey(Gryphon)がリコーダーで参加。アイリッシュっぽい仕上がりになっている。"Weary Eyes"ではShirlie Rodenの歌声が美しく響く。"Melancholy Lullaby"は初期のフォーク時代のサウンドにオーケストレーションを加えたようなサウンド。タイトル曲である"Fear of the Dark"はアコースティック・ギターの導入部からにシンフォニックなサウンドを組み込んだ大仰な作品。本作ではまたGraham Preskettもソロ・ヴァイオリンを提供。最後の"Visitation"もGordon Giltrapお得意の典雅なイメージを喚起させるアコースティック・ギターの音色が素晴らしい。99年再発盤のボーナス・トラックには"Catwalk Blues"のライブ、"Smiler"に"Fear of the Dark"と"Oh Well"のシングルヴァージョンが収められている。
The Peacock Party ('79)Alan Aldridgeのジャケットアートから、74年に出されたウィリアム・ロスコーの詩をベースにした絵本にインスパイアされて製作されたRoger Gloverのソロ作"The Butterfly Ball and the Grasshopper's Feast"の続編となる絵本"The Peacock Party"をベースにしたと見て良いだろう。ストリング・ブラス・アレンジに再びRod Edwards(key)、Roger Hand組を起用。その他にJohn G.Perry(b)とJohn Gustafuson(b 2曲のみ参加)、Darryl Way's Wolfなどで活動したIan Mosley(ds)、Brand Xなどで活躍していたMorris Pert(perc.)、Richard Harvey(recorder、soprano crumhorn)、Soft MachineやThe Albion Bandなどと共演したRic Sanders(violin)、Jan Dukes De GreyにいたEddy Spence(key)、Bimbo Acock(sax、flute、clarinet) らが本作に参加。「くじゃく家の祝宴」というタイトルに相応しい本作のキャラクターである鳥たちを想起させる愛らしいサウンドが聴ける。Gordon Giltrapの多彩なプレイ、アレンジの妙が冴え渡る名作。



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