Fish - Marillion

Marillion

Mick Pointer(ds)が率いていたThe Silmarillion(トールキンの小説から取られた名前)にSteve Rothery(g)が合流した後、Fish(vo)、Pete Trewavas(b)、Mark Kelly(key)が加入。82年にシングル"Market Square Heroes / Grandel"でデビュー。83年にアルバム・デビュー。時にPink Floydが"The Final Cut"、Genesisは"Genesis"、Yesは"90125"と70'sを代表するプログレ・バンドがアルバムを発表。そしてAsiaが"Alpha"を発表。何故かGreg Lakeを連れて来日公演を行う。

Script for a Jester's Tear ('83)後にネオ・プログレッシブ・ロックなるレッテルを貼られMarillionはその代表格と見られる。既にEMIはNew Wave of British Heavy MetalムーヴメントをIron Maidenで牽引させることに成功。キャラクターのあるシアトリカルな演出を持つバンド、という意味では似ている。メディアからはPeter Gabriel時代のシアトリカルなGenesisを彷彿させるとして良くも悪くも注目される。そういった演劇性はスコティッシュ・ヴォーカリストの Fishの性でもあろう。確かにPeter Gabrielを彷彿させるが、Peter Hammillだって聴こえるし、敬愛するAlex Harveyだって聴こえる。そこにFishのパフォーマー、ストーリーテラーとしての資質が窺える。ピアノの美しい旋律から導かれる表題曲などはプログレッシブ・ロック・バンドが持つ構築美には未完成ながらも、バンドが持つムード(風格)は既に一級品。Steve Rotheryの時にやはりSteve Hackettを思わせる繊細さ、Mark Kellyの如何にもな狙い通りの音作りは、それでも当時はバッシングも多かったらしい。いつの時代でもそうだけど、欧米と日本では、その評価に温度差があったようだ。アートワークは後にMarillionだけでなく、プログレッシブ・ロック系アクトを多数手がけることになるMark Wilkinson。ジャケットは97年リマスター盤。1stシングルでありバンドの初期の代表曲"Market Square Hero"の"Battle Priest Version"はオリジナルの歌詞にある"I am your anti-christ"がラジオで放送出来ない為"I am your battle priest"に歌詞を変更したバージョン。アルバムを発表後ツアー中に、最古参のMick Pointerが脱退。
Fugazi ('84)まずは、珍妙な"Fugazi"というタイトルに目が行く。ライナーによると、ヴェトナム戦争の時、米軍兵士の間で使われていたスラングで「Fucked up、got ambushed、zipped in」の略という。このアルバムの製作時、ドラマーのリハーサルをこなしながら、残ったUSツアーを行わないといけなかった。ドラマーにまずAndy Wardを起用し、ツアーに同行させるが、Andy Wardはツアーが得意ではなく、次にJohn Martyrを起用、USツアーへ復帰。但し、音楽的に合わない、という理由で解雇。NYに滞在中にJonathan Moverと知り合い、英国でオーディションしたところ、Jonathan Moverは全ての曲を知り尽くしており、きちんと叩けたので、レコーディングに参加させた(この時に仕上げられた"Punch & Judy"のクレジットはその時のもの)。問題はFishはそれがどうしても我慢が出来ない状況だったらしく、その時のフラストレーションもある程度、歌詞に影響されているようだ。そして、また、FishにはFishなりの人選が頭にあった、という。最後にはFishかJohnathan Moverか、という所まで来たそうだ(勿論残ったのは Fish)。そしてIan Mosleyを迎えて、本作のレコーディング・セッションが本格化した。オープニング・ナンバーの"Assassing"。これも造語だが、最後に何故「g」を入れたのかはFish本人も覚えてないそうだ。冒頭で聴けるアラビック 風のオープニングは"Script for Jester's Tears"ツアー時にPeter Hammillがサポートに付いてくれた時に彼から貰ったイスラム音楽のテープに影響されたそうだ("Incubus"も同様)。またパーカッションのパートから入るのもIan Mosleyへの敬意もあったのかもしれない。Fishの特徴的な韻の踏み方や多彩なヴォーカライゼーションも特筆すべきだろう。チャーチオルガンに導かれるように始まる"She Cameleon"でのMark Kellyの気品あるキーボードプレイは新しいMarillionの一面だろうか。最終的にバンドは最終ミックスを聴くこともなくツアーへと駆り出されてしまい、エンジニアー達の手にこのアルバムは委ねられることになる。確かにバンドにとっては、「悪夢」なアルバムだったのかもしれない。ジャケットは98年に出されたボーナス・ディスク付きリマスター盤。
Misplaced Childhood ('85)LP時代の名残りとなった作品で、A面とB面とでそれぞれが一つに繋がっている。所謂コンセプト・アルバムと呼ばれる造りになっている。一応、Fish本人の私小説的な歌詞で纏められているようだ。ラブ・ソングとしてソロになって以降も好んで歌う"Kayleigh"は全英2位を取ったシングル。組曲"Bitter Suite"では自身をうろつく蜘蛛に喩え、歌うFishに対してSteve Rotheryは中間部でのソロはSteve Hackettのような美しいサウンドを披露する。組曲"Heart of Lothian"はFishと同郷のスコットランド出身の詩人、小説家であったウォルター・スコットの作品「Heart of Midlothian」へのオマージュだろうか。そして、B面に入る"Waterhole"は多分パブやバーのことを指すのだろう。そして、最長の組曲"Blind Curve"でも人間関係などで苦悩する人の姿が描かれている。そして、現在から、過去へと。"Perimeter Walk"でアルバム・タイトルである「misplaced childhood」、子供時代を返せ、と叫ぶ。歌詞そのものにあまり関連性は読み取れないが、Genesisの"Watcher of the Skies"のモチーフになっ たアーサー・C.クラークの作品「幼年期の終わり」と同じタイトルを持つ"Childhood’s End?"は狙ったのだろう。そして、"White Feather"で幕を閉じる構成となっている。音楽性そのものは更にドラマティックさを増し、サウンドそのものは説得力を増している。特にMark Kellyのサウンドは時代の割には、あまり古くさくも聴こえない。これだけの構成を持っていても、逆にFish の演劇性は抑え気味になっているのが興味深い。Marillionが示した一つの到達点がここにある。
Brief Encounter ('86)元々はRushのサポートでUSツアーを回った際に売られたEP。EPには"Kayleigh"のB面に収められた"Lady Nina"と"Lavender"のB面曲の"Freaks"の2曲のスタジオ曲に加え86年1月、Hammersmith Odeonで収録された"Kayleigh"、"Fugazi"、Script for a Jesters Tear"のライブ3曲が加えられたもの。"Lady Nina"はエレクトリック・ドラムの使用に多少の違和感を持つ当時の音楽シーンを偲ばせるナンバー。"Freaks"は後々、Marillionファンを指す言葉となるナンバー。ジャケットは97年に"Real to Reel"がCD化された際に"Brief Encounter"がボーナスディスクとして一緒にパッケージングされたもの。
Clutching at Straws ('87)Fish在籍最後のスタジオ・アルバムにして傑作。それ故にMarillion脱退を決意したのは何とも皮肉にも感じる。今作も曲間を埋めて、継続させたトラックや歌詞の流れから、ロック・バンドのシンガーの悲哀のようなものを表現したストーリーを持つコンセプトらしきものがあるように聴こえる。オープニングの"Hotel Hobbie"のイントロや激しいギター・ソロは特筆もの。そして、続く"Warm Wet Circles"から"That Time of the Night (The Short Straw)"という流れの構築美を持つバンドアンサンブルが非常に素晴らしい。FishのヴォーカルとSteve Rotheryのギターの静をしっかりと刻んだ小曲"Going Under"はCDのみのボーナストラックだった(LPには未収)。ある意味Fishの代表的な言葉選びを持っていると思う"Incommunicado"、そして、アルバムの世界観を表している(ジャケットを含む)"Torch Song"から"Slainte Mhath"の表現力はFishならでは、だろう。売上などでは前作を上回らなかったので、その分陰が薄い感じもするが、今作は間違いなくFish時代を代表する傑作。後のSteve Hogarth時代に繋がる繊細さやMarillion流ロマンティシズムの根幹となるものが今作で形作られた名盤。ジャケットに描かれている人物は手前からLenny Burns、Truman Capote、Dylan Thomas、Robert Burnsらしい(一番手前の裸足の人物がこの盤の主人公Torchなんでしょう)。裏ジャケットは左からJohn Lennon(一番手前で振り返っている人物)、奥でグラスを持つのがJames Deanにキューを持つJack Kerouac。

Marillion(Steve Hogarth Era)はこちら。

Fish

Vigil in a Wilderness of Mirrors ('90)89年には製作が終了したがSteve Hogarth入りMarillionの第1弾アルバム"Season's End"が出来たため、バッティングを避けるためにFishのアルバムは翌年の発売へと持ち越された。それでも先行シングルの"State of Mind"がアルバムに先駆けて3ヶ月も前の89年10月に出された。まず、このアルバムで最も大切なトラックは間違いなく"Big Wedge"だろう。Kick Hornsを迎えソフィスティケートされたソウル・ミュージックよろしくファンキーなスウィングを持つこの曲はMarillionでは決して出来なかっただろう。歌詞も米国式資本主義を徹底的に扱き下ろしたFishらしい作品。他にも冒頭のスコティッシュらしいサウンドの"Vigil"、"The Company"、"View from the Hill"も反物質主義的な題材を扱った歌詞。"The Voyeur (I Like to Watch)"はテレビに(映る物に)支配された人物を歌ったもの。現在はD.V.と言えば日本でも通じるストーリーを持つ"Family Business"と現実的な問題を扱った歌詞が多い。曲は"View from the Hill"でJanick Gers(現Iron Maiden、この曲ではギターも担当している)との共作以外は全てMickey Simmonds(key)との共作曲で占められている。ストーリーテラーFishの面目躍如。
Internal Exile -a Collection of a Boy's Own Stories- ('91)前作からMickey Simmonds(key)、Pete Trewavasと学校が同じだったり、一緒にバンドもしたことがあるというRobin BoultとベテランFrank Usherというツイン・ギター体制を今作で初めて起用。ベースに元PilotのDavid Paton、ドラムにThe Sensational Alex Harvey BandやThe Michael Schenker GroupのTed McKennaが"Tonges"と表題曲"Internal Exile"を担当。その他はEthan Johnsがドラムを担当。オーストラリア出身のシンガー・ソング・ライターMaryen Cairnsがムーディーな"Favourite Stranger"等で共演。また表題曲では同郷のトラッド・グループCapercaillieのメンバーCharlie McKerron(fiddle)、Marc Duff(whistles)、Donald Shaw(box accordion)が参加。冒頭の"Shadowplay"やライブで頻繁に演奏される"Credo"でのツイン・ギターの二人が持つ独特なグルーヴが心地良い。ドラマティックなFishの演劇性を前面に出した"Tongues"のこれでもか、という盛り上げ方は素晴らしい。スコットランド独立を歌った"Internal Exile"から最後にThunderclap Newmanのカヴァー"Something in the Air"の秀逸なカヴァーで締め括っている。このカヴァーの仕方はDavid Bowieのようなモダンなアレンジの仕方に近い感じを受ける。
Songs from the Mirror ('93)ドラムにKevin Wilkinsonを迎え、キーボードにFoster Pattersonを起用。ギター、ベースは前任者のまま。Fishが影響を受けたと思われるカヴァー・アルバム。The Moody Bluesの"Question"(A Question of Balance)、同郷のThe Sensational Alex Harvey Bandの"Boston Tea Party"(SAHB Stories)、エレクトリックに置き換えメリハリを付けたPink Floydの"Fearless"(Meddle)、ホーン系のサウンドを取り入れたKinksの"Apeman"(Lola VS Powerman and the Moneyground Part One)、Argentの"Hold Your Head Up"(All Together Now)、Sandy Dennyの"Solo"(Like an Old Fashioned Waltz)、スティール・ドラムのようなサウンドでトロピカルな雰囲気を持たせ、最後の女性ヴォーカルとの掛け合いも秀逸なGenesisの"I Know what I Like"(Selling England by Pound)、ロックン・ロール・リヴァイヴァルよろしくカントリー風タッチのフィドルも出てくるT-Rexの"Jeepster"(Electric Warrior)、オールディーズなドラマティックさを持ったDavid Bowieの"Five Years"(The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from the Mars)と見事な偏り、というか「らしさ」が出ている。因みに98年のリマスター盤では"Jeepstar"を外し、ボーナストラックに後に"Yin"に収録されるSteve Howe入りの"Time and a Word"(Time and a Word)とThe Whoの"The Seeker"(Meaty Beaty Big and Bouncy)のカヴァーを収録。Fishのセンスの良さが十分に堪能出来るカヴァー曲集。
Suits ('94)野太い"Suits!"と叫ぶコーラスが印象的なオープニングナンバーである"MR 1470"はジャケットにある骸骨の事。ケニアで発見された現存する頭蓋骨で最も古い物(約190万年前)とされており、「Skull 1470」と呼ばれている事から、"we are the sons of 1470"というフレーズが出来た、という。リズミカルな"Emperor's Song"やMark Duffのwhistleやfluteがアイリッシュ風味を醸し出している"Fortunes of War"、力強い"Somebody Special"では最後に出てくるR&B風コーラスが、そのままアーバン・ソウルなムードを纏ったクールなグルーヴが格好良い"No Dummy"へと続く流れは秀逸。"Jumpsuit City"やアルバム最後を飾る"Raw Meat"でも最後にソウルフルなR&B的なヴォーカルのやり取りが聴ける。また"Raw Meat"でのホーン・セクションも「らしい」仕上がり。ヴォーカリストのアルバムらしい全体的にポップでキャッチーなアルバム。ソロ・デビュー時から追いかけて来たR&Bやソウル・ミュージック的な味付けをFish印として、ここに完成させた感がある。Frank UsherとRobin Boultの両ギターは今作でもメロディアスなフレーズをセンス良く決めている。そして、スーツというキーワードを軸にここまで多彩な物語を紡ぐFishのストーリーテーラーとしての資質に敬服するばかり。ラインナップはほぼ前作であるカヴァー・アルバムと同じ。
Yin ('95)95年に出された元MarillionのシンガーFishのベスト盤。"Yang"アルバムと対になって出されたこの"Yin"アルバムは裏ベスト的な役割を持つ。まず、Marillionナンバーの再録"Incommunicado"、"Incubus"の2曲に加え81年当時に書かれたまま未発表になっていた"Institution Waltz"をFrank Usher(g)、Robin Boult(g)、David Paton(b)、Foss Paterson(key)、Dave Stewart(ds)というお馴染みのメンバーで収録。Steve Howe(g Yes)を迎えて"Time & a Word"(Yesのカバー;後に"Songs from the Mirror"のリマスター盤に収録される)と"Songs from the Mirror"にも収録した"Boston Tea Party"はSensational Alex Harvey BandのTed McKenna(ds)、Zal Cleminson(g)、Chris Glenn(b)、Hugh McKenna(key)を迎えて再録。こっちのバージョンの方がラフ&ヘヴィーだったりする。流石、Zal Cleminson。Sandy Denyの"Solo"は"Songs from the Mirror"のヴァージョンと同じもの。こういったトラックからFishの出自を明確に魅せている。そして、自身の2ndアルバム"Internal Exile"から"Just Good Friends"と"Favourite Stranger"でSam Brownが参加した新録バージョン。Sam Brownの美しい声を披露している。前者では、デュエット、後者では、バックヴォーカルで参加。最後に"Suits"から"Raw Meat"が収められているが、この曲はSteve Marriott、Alex Harvey、Phil Lynott、Rory Gallagherへの謝辞がクレジットされている。Fishのパフォーマーとして原点が見える侮れないベスト。
Yang ('95)"Yin"と対を成す表ベスト。"A Gentleman's Excuse Me"と"Fortunes of War"のみがオリジナル。"Internal Exile"は1stソロ・アルバム用に書かれたバージョンでアルバム"Intenal Exile"とは別バージョン。"Big Wedge"と"Lady Let It Lie"はリミックス・バージョン。その他の8曲は全て再録。その内の4曲がMarillionの"Lavender"、"Kayleigh"、"Sugar Mice"と"Punch & Judy"のセルフ・カヴァー。基本的にFrank UsherとRobin Boultという2人のギタリストを擁したことを強調するようなダイナミックなギター・サウンドを前面に出した作風になっている。"Big Wedge"のようなソロで冒険をしたちょっとしたR&B色もホーンは残っているものの、更に薄れ聴き手に受け入れやすいリミックスになっている。殆どの曲が再録ということもあり、通常の他のグループのベストよりもお得感が強い。95年までのFishのキャリアを追うには絶好のアイテムと言える。
Sunsets on Empire ('97)ベストを出したことで、自身のキャリアに一区切りを付けた感のあるFishが次の方向性に向かうのに選んだパートナーがPorcupine Treeで頭角を現し始めたSteven Wilsonというのは非常に興味深い。本作に参加しているのはFoss Patterson(key)、Ewen Vernal(b Capercaillie)、Dave Stuart(ds)、Robin Boult(g)、Frank Usher(g)というお馴染みのメンバー。Steven Wilsonはアレンジ、プロデュース、作曲のみならず、10曲でkeyをはじめループ、ギターなどの演奏でも参加している。特にキーボードやループの使い方にPorcupine Treeとの共通項は多い。本編最後の"Say It with Flowers"ではSteven WilsonのNo-ManでのパートナーTim Bownessの名前もクレジットされている。"Worm in a Bottle"以外の全ての楽曲でSteven Wilsonは何かしら彼らしい独特なサウンドが入っており、そのサウンドとFishのマッチングが非常に良い。冒頭の"The Perception of Johnny Punter"では後半ではこれぞSteven Wilsonというリードギターが出てきたり、表題曲の"Sunsets on Empire"のスライドは完全に狙ったな、と判る叙情的な曲。その他にもコントラヴァーシャルな歌詞を持つ"What Colour is God?"やシングル・カットされた勢いのある"Brother 52"、トライバルなパーカッションが印象的なボーナストラック"Do not Walk Outside This Area"と新しい側面を打ち出した詩人Fishが楽しめる傑作。
Raingods with Zippos ('99)Mickey Simmondsの美しいピアノに導かれて始まる本作の音楽的な軸は間違いなくこのMickey Simmondsが担っている。冒頭の"Tumbledown"や、まるでMickey Simmondsのソロ作のような"Rites of Passage"ではFishの作曲パートナーとなっている。それ以外のキーボードはTony Turrellが担当。前作に引き続きSteve Wilsonが冒頭曲、クレイジーなヴァイオリン・ソロが入るスリリングなThe Sensational Alex Harvey Bandの"Faithhealer"のカヴァー、25分にも及ぶ組曲"Plague of Ghosts"でギターを担当。その他ではBruce Watson(元Big Country)、Robin Boult等が担当。リズム隊にDave Stewart(ds)、Steve Vantsis(b)を迎える。バラード2連発の"Incomplete"、"Tilted Cross"ではそれぞれElisabeth Troy-AntwiとNicola Kingという女性ヴォーカルとのデュエットで雰囲気を出している。Fishの敬愛するAlex Harveyのカヴァーや最後の組曲への取り組みなどよりシアトリカルでストーリーテラーとしてのヴォーカリストという立ち位置を確立した感がある。名盤。
Fellini Days ('01)タイトルにある通り、イタリアの映画監督Federico Felliniの映画がある日常、みたいな趣きを持った作品。フィルムが回るSEが曲間で使わたり、フェリーニの声が挿入されていたり、歌詞の所々に思わせぶりなシーンの描写などがあるように思える。前2作がある種作りこまれた感があったが、本作ではJohn Wesley(g)、John Young(key 元John Wetton Band、Greenslade等)に前作のリズム・セクションであるSteve Vantsis(b)とDave Stewart(ds)にDave Haswell(perc.)というバンド形式。ソングライティングもJohn WesleyとJohn Youngの3人で仕上げており、この3人が本作の中心となっているのが判る。特に全編においてJohn Wesleyのライブ感たっぷりの生のパワーを持ったギター・サウンドが新鮮に響く。John Wesleyのサイケデリックなギターが堪能出来る"So Fellini"やハードな"Long Cold Day"は白眉。"Tiki 4"はどこかMarillion時代を思い出させるナンバー。ローでライブリーなバラード"Obligatory Ballad"は今までFishになかったタイプのバラード。個人的には"Dancing in Fog"の後半で聴けるヴォーカルのバックで鳴るトランペット(サンプル?)のサウンドにやられた。
Field of Crows ('03)ジャケット、そしてタイトルを見ると明らかにゴッホの最後の作品の一つとされている「カラスのいる麦畑」をモチーフにしているのが判る。またクレジットの最後に"La Tristesse Durera"「悲しみはいつまでも続く」というゴッホの言葉が引用されている。そんな本作は"Raingods with Zippos"に参加していBruce Watson(g)が復帰。相方にFrank Usher(g)。ドラムにBruce WatsonのBig Country時代の盟友Mark Brzezickiを迎える。その他にSteve Vantsis(b)とTony Turrell(key)が参加。スコティッシュが多くなったから、というわけではないだろうが、勇壮で力強いサウンドを持った曲が多くなった気がする。"Moving Tragets"、"Zoo Class"、"Old Crow"、"Innocent Party"、"Shot the Craw"、"Scattering Crows"の半数以上の曲でIrvin Duguid(同郷のGunや元GenesisのRay Wilson等とのコラボレーションがある)が作曲にメンバーと共に関わっている。"The Lost Plot"はキーボードのTony Turrellとの共作曲で、流麗なキーボードが聴き所の一つ。アルバム最後に聞こえる銃声は1890年7月27日、Van Goghが自身を撃った音だろうか?
13th Star ('07)Steve Vantsis(b、その他)を10曲中8曲と殆どの曲での共作者に迎えて製作された作品。"Openwater"を共作したFrank Usher(g)、"Miles De Bessos"を共作したFoss Paterson(key)、Dave Haswell(perc.)といったお馴染みのミュージシャンから、元KarnatakaのGavin Griffiths(ds)、Mostly AutumnのChris Johnson(g)が参加している。オープニングの"Circle Line"からDavid Bowieの"Earthling"に似たサウンド、トンガリ具合、雰囲気を感じる。そして"Miles De Besos"、"Zoe 25"、"Arc of the Curve"あたりはウェディングのアナウンスまでしたMostly AutumnのHeather Findlayとの破局を歌ったものであろうムーディーでメローな曲。ヘヴィーな音像に戻る"Manchmal (Sometimes)"と"Openwater"は歌詞的には連作っぽい作り。旅などをモチーフにした詩を大切にした曲が後半占める。"13th Star"のLorna Bannonの女性バック・ヴォーカルが素晴らしい。Fishらしい名盤。



Others

Tony Banks "Soundtracks" ('86)タイトル通り映画「クィックシルバー」(Kevin Bacon主演、自転車乗りのメッセンジャーボーイが主人公)と「夢翔戦艦スターシップ/亜空間脱出」(日本未公開)の音楽からTony Banksが手掛けた楽曲をまとめたもの。Fishは映画「クィックシルバー」から"Short Cut to Somewhere"でヴォーカルと歌詞を担当。Fishは映画に相応しい歌詞を提供し、Tony Banksは"Genesis"から"Invisible Touch"へと移行する頃のサウンドを、そのまま描いており、Genesisファンには興味深いサウンドかもしれない。その他に「夢翔戦艦スターシップ」にJim Diamondが"You Call This Victory"とToyahが"Lion of Symmetry"がヴォーカルと歌詞で参加。それぞれヴォーカリストの特性を良く見抜いたサウンドを提供している。
Ayreon "Into the Electric Castle a Space Opera" ('98)Arjen Anthony Lucassen(g、b、key、vo)が仕掛けるロック・オペラ・シリーズAyreon第3弾。Ed Warby(ds Gorefest)、Robby Valentine(p、synth solos)、Roland Bakker(hammond)、ソロ・プレイヤーにArena等のClive Nolan、Rene Merkelbach、KayakのTon ScherpenzeelにフルートでFocusのThijs van Leerが参加。ヴォーカル陣は最後まで生き残れないHighlander役にFish、コーラスパートで重要な役割を持つIndian役にSharon Den Adel(Within Temptation)、聖杯を探すKnightにDamian Wilson(Threshold)、軍神メロスを呼ぶRomanにEdwin Balogh(元Omega)、神の地に降り立ったと信じるEgyptianにAnneke Van Giersbergen(The Gathering)、Barbarian役に元BodineのJay Van Feggelen、Futureman役に元KayakにEdward Reekers、ナレーションに元KaleidoscopeのPeter Daltrey、ヒッピー役にArjen Anthony Lucassen自身が担当。興味深いのはArjen Anthony Lucassenが台詞となる歌詞をFish、Jay Van Feggelen、Anneke Van Giersbergen、Peter Daltreyにはしっかりと任せている、という部分。それだけ参加者が深くArjen Anthony Lucassenのコンセプトを理解しつつ参加した、ということだろう。その音楽性はArjen Anthony Lucassenらしくサイケデリックな色合いを強く持ったロック・オペラ、といった趣だろうか。冒頭の"Isis and Osiris"などはAyreon版"Battle of Evermore"といった感じで、物語のオープニングに相応しく中盤からのハードな側面はLed Zeppelin的なものを強く意識させる。アコースティックな"Tunnel of Light"や"The Mirror Maze"はBeatles的なサイケデリア(特に後者は"I'm the Walrus"なラインが良い)。"Tower of Hope"はThe Whoの"Baba O'Riley"を思わせるオープニングを持つ。スペースロックらしいギミックをあちこちに配置しながら、Arjen Anthony Lucassenらしいサウンドを作り上げている。本作でAyreonシリーズが一皮も二皮も剥けた印象を受ける。個人的にAreonシリーズの中でも最も好きな作品。ジャケットのイラストも凡庸なCGよりずっと良い。


John Wesley



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