Echolyn

米メジャーに蹂躙されて、解散を余儀なくされて、メンバー散り散りになって活動して、そこでも、我侭なギタリストに翻弄されて、バンドが立ち行かなくなって……。そして、劇的な復活を遂げたペン州出身のバンド。浪花節?

Suffocating the Bloom ('92) Christopher Buzby(key)、Tom Hyatt(b)、Brett Kull(g、vo)、Paul Ramsey(ds)、Raymond Weston(vo)による2nd。ヴォーカルハーモニーを武器に確固たるテクニックに裏打ちされた展開の速さはGentle Giantなどを想起させる。前半には"Reaping the Harvest"や"The Sentimental Cain"と言ったゲスト・プレイヤー(弦や管)を使った次の曲へのイントロとでも呼べる導入部の設けおり、興味深い。Brett Kullのギタープレイは、ジャズ・フュージョンに強い影響を受けているのが、あちこちで聞こえる。後半は"A Suite for the Everyman"と題された11のパートからなる28分にも及ぶ組曲。構成力がしっかりしており、色々な仕掛けを上手い具合に織り込んでおり、一気に聞かせるアレンジが秀逸。個々の技量もさることながら、アレンジ力の強さが魅力。00年に再発される。
As the World ('95) ソニーのサブレーベル550Musicと契約をしたことにより、メジャーディストリビューションを獲得しての3rd。プロデューサーにZiggy Marley等との仕事で知られるGlenn Rosensteinを迎え、チェンバーオーケストラを随所に配したビッグなプロダクションで製作された。オーケストラ・アレンジと指揮にはChristopher Buzbyが当たった。アルバム中間部に"Letters"と呼ばれる組曲を置いた構成となっている。全体的にGentle Giant的なテクニカルなパートとコーラスパートはプログレバンドということで、Yes的と見られるが、その前に60'sによくあったコーラスグループ的な整合感やノスタルジーを感じる。フュージョン的な佇まいの良さもあちこちに感じられる。メジャーと契約した事で、ツアーなどが期待されたが、レーベルサポートは殆どなく、結局バンドは失速してしまった。
When the Sweet Turns Sour ('96) Sonyと契約をしたことで、バンドのバックカタログがSonyの支配下におかれてしまう。更に"As the World"のセールスの不振により、Sonyとの契約は終了。バックカタログはSonyの倉庫の中になってしまい再発に長い年月を要することになってしまう。Sonyとの契約終了はバンド崩壊まで導いてしまった。本作は"As the World"製作時のデモなどを含むコンピレーション。アルバム表題曲は言わずと知れたGenesisの曲。Genesisトリビュートへの参加を打診されたEcholynは"Where the Sour Turns to Sweet"をカバーするも、Sonyに参加を拒否され、このアルバムに収められるまで日の目を見ることが出来なかった。"Another Day"は"Uncle"の元ネタ。1stに収められている"Meaning and the Moment"はアコースティックバージョン。"This Time Alone"は95年11月、Echolynとして最後の録音となったもの(最後の雄叫びはそういう意味)。"A Little Nonsense"と"As the World"はライブ音源。
Cowboy Poems Free ('00) 悪く言えばChris Buzby率いるFinneus Gaugeがぽっしゃった為、実現した再結成Echolyn(待っていた人は多かったけどね)。Ray Westonがベースを兼任し、新たにJordan Perlsonというパーカッショニストを加えた5人編成での再出発となった。 "Poem #1"から"Poem #4"までの1分前後の小曲を散りばめた、ある種コンセプトを持たせたかのような作品。アメリカ産らしい雄大なサウンドを身に着けて帰ってきたのはオープニングを飾る"Texas Dust"の力強さからも判るだろう。キャリア初期から持っているGentle Giantのヴォーカル・パフォーマンスから影響を受けたであろう"Gray Flannel Suits"やネオ・プログレッシブ・ロックのお手本のような構築美を持つ佳曲”High as Pride”などが聴き所だろうか。大らかなアメリカ産的なロックが持つダイナミズムを巧みに活かした作品。"Cowboy"と謳うだけあって、どこか埃くささがあるのも、そんなイメージを増長させる。やっぱり、これはアメリカからしか出てこないであろう作風なんだろうな…。
A Little Nonsense Now and Then ('02) Disc1に91年のデビュー作"echolyn"、Disc2に93年に出されたミニアルバム"...And Every Blossom"と96年に発表された編集盤"When the Sweet Turns Sour"。Disc3に新録"The Edge of Wonder"に始まり"Texas Dust"、"Swingin' the Axe"、"Gray Flannel Suits"のライブ。そして"As the World"、"Suffocating the Bloom"、"Carpe Diem"、"Shades"の00年バージョンの再録という3枚組。初期の作品を持ってない人には重宝出来る作品。1stは時代柄どこかSI Musicあたりの音像を伺わせる。ベースはThomas HyattとJesse Reyesと分け合っている。Gentle Giantやテクニカルなジャズ・フュージョン等からの影響が混在しているのが聴こえる。Disc2の最初の4曲"...And Every Blossom"はオリジナルジャケットを見たことがある人なら想像が付く、優しい子守唄にもなりそうなアコースティック曲集となっている。新録の"The Edge of Wonder"のベースはJesse Reyesが再び担当。残りのライブ曲と再録曲はRay Westonがベースを兼任。更にJordan Perlsonがパーカッションで参加。
Mei ('02) Christopher Buzby(key、vo)、Brett Kull(g、vo)、Paul Ramsey(ds、perc.)、R-F Weston(b、vo)という4人編成に戻り、前作から参加していたJordan Perlson(perc.)はゲスト扱い。その他にフルート、クラリネットという管、ヴァイオリン、チェロという弦にヴィブラ、マリンバ、ティンパニ、タンバリンという打楽器奏者を揃え、オーケストレーションにChristopher Buzbyが当たっている約50分にも及ぶエピックを1枚のディスクに。Echolynらしくオープニングは大仰に攻めず、モノクロなイメージを持つくらいしっとりと聴かせるところから始まる。6分近くから、ハードに盛り上がって行くが、再び、静のパートへと戻っていく。全体的に印象的な主題となるメロディーが浮かんでは消え、浮かんでは消えていく中、楽曲も静から動、動から静へと移り変わる。しかも、派手なソロは一切排除し、楽曲の持つ構築性を第一義に考えたプレイに終始しているのが特徴だろうか。多少、Christopher Buzbyのキーボードソロ等もあるにはあるが、非常に短いもの。勿論、Gentle Giant的なやり取りやサウンドの音色にヒントは隠れてはいる。今作は正にEcholynの音楽性が持つ構築美がアルバム総体を支えた秀逸な作品。歌詞は中にはロード・ムーヴィーっぽいセクションも感じられるが、そこまで写実的でもなく、全体的に内省的な印象を受ける。08年10月現在でもEcholynのオフィシャルサイトからディスコグラフィーを辿ると、"Official Live Bootleg: Jersey Tomato"というライブ盤が丸々ダウンロードが出来る。ここに収められている"Mei"と聴き比べてみるのも良いだろう。
The End is Beautiful ('05) ベースにTom Hyattが戻り、その為Ray Westonはヴォーカルに専念出来る状態になった。今作でもGentle Giantのような緻密な音楽性と大らかなアメリカン・ロックという相反しそうな要素を上手く融合させている。多少埃っぽさを持つハードな"Georgia Pine"で幕を開ける。コーラス部など特徴のある歌詞が印象的。Christopher Buzbyがアレンジを施したホーン・アレンジは特に"Heavy Blue Miles"ではソウル・ミュージックをプレイしている時のFrank Zappaあたりを思い出させる。"Make Me Sway"やタイトル曲はパーソナルな関係における題材を扱っており、非常に痛々しい否定的な歌詞であったりもする。"So Ready"はGentle Giant的なコーラスにStevie Wonderあたりに代表されるR&Bサウンドの融合とでも言えるファンキーなサウンド。全体的に歌メロを中心としたメロディーの質が向上し続けているのに驚く。キャッチーなメロディーの裏に痛みのある歌詞を載せるのが常套手段になりつつあるように聴こえる。ある種、"Cowboy Poems Free"の発展形的な自身のルーツでもあるアメリカン・ロックのイディオムをたっぷりと含んだアルバムと言えるかもしれない。傑作。

 

Solo etc Finneus Gauge

 

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